【あの一言】
欧米利下げ決定・世界経済は大丈夫か
解説委員・櫻井玲子 米国、ヨーロッパの中央銀行が緩和を進めれば円高が進み日本企業の業績の悪化も心配される。しかしマイナス金利政策を取る日銀には残された選択肢が極めて少ない。こうした中、日銀は金融政策を据え置くことを決めた。黒田総裁は会見で「前回7月の会合のときよりは緩和に前向き」「日銀には緩和の余地は十分にある」と述べ、必要ならば、追加の緩和策に踏み切る構えを強調している。
2019/09/20 NHK総合[時論公論]
解説委員・櫻井玲子 FRBにもヨーロッパ中央銀行にも残されたカードは少ない。米国の政策金利は今回の利下げで1.75%から2%の範囲となった。ヨーロッパ中央銀行はすでにマイナス金利。金利の引き下げ余地は少なく、病状が重くなってから治療するとなると効果のある薬が足りなくなる可能性がある。そこで今回の利下げは早めに手を打って重病になるのを事前に防ごうという狙いがあった。しかし、症状の悪化を食い止められない。あるいは、別の要因で重病にかかった場合打つ手がなくなるかもしれない。米国でもヨーロッパでも中央銀行の内部で利下げを進めることへの慎重論は根強く、このまま緩和一本調子で続けられるかの保証はない。
2019/09/20 NHK総合[時論公論]
解説委員・櫻井玲子 大きな危機を未然に防ごうとする金融緩和の動きが、新たなリスクを招く危険性がある。これまで続けてきた金融緩和の影響で世界の債務残高はすでに、10年前のリーマンショック前の1.5倍にまで膨らんでいる。特に米国では今、信用力の低い企業への貸し付けが日本円にして100兆円を超えている。FRBが、さらに金融緩和を進め、金余りの状態が加速すれば新たなバブルを招く可能性がある。注意すべきはこれが米国だけでなくほかの国にも影響を与える可能性があること。2008年のリーマンショックのときは、リスクの高いローンを組み込んだ金融商品の多くをヨーロッパの金融機関が買っていて巨額の損失をこうむった。今は、似たような金融商品の多くを日本を含むアジアの機関投資家が買っていると指摘されている。バブルがはじければアジアを巻き込む形で金融危機が起きる可能性もある。それだけに各国の中央銀行は難しいかじ取りが求められている。
2019/09/20 NHK総合[時論公論]
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