9月10日、その日は浜離宮恩賜公園にいた。 その公園の入り口は、東京五輪の準備のため至る処大規模な工事現場の中にあった。 築地を通る、例の環状2号線の工事もその一つであるのか、その一帯の現場は全体像が把握できないほどのものであった。 だが、公園への橋を渡ると、その雰囲気はガラッと変わった。 中に入ると、コスモス畑を通り、藤棚を抜け、汐入の池へと向かうと、悠久の屋敷庭園の雰囲気が辺りを包んでいった。 風流な形をした松や石の細工、それに加えて池に架かる木製の橋、そうした日本独特の造作を施した、「これぞ日本庭園」といった趣が漂っていた。 しかも、どこからも、近代的な高層ビルなどが顔を出し、「東京の庭園」の風情を感じさせてくれた。 時折、東京タワーの少し古びた構造物も顔を出し、東京の新旧がそこには揃っていた。 海沿いの憩いの場には、外国人たちが、今の東京の庭園を満喫するように、大きな手を一杯に開いて東京湾を覗いていた。 船着場には、時折遊覧船が接岸し、人々が乗り降りをしていた。