南北朝鮮の首脳会談をうけて王毅・中国外相が北朝鮮を訪問、5月2日には李容浩外相に、3日には金正恩委員長と各々会ったことが報じられた。南北首脳会談や米朝首脳会談について話し合われたものと思うが、王毅外相と両者との会談で各々「中朝の伝統ある関係」が強調されていた。2017年までの中朝の「冷たい関係」はなかったことのように、中国は北朝鮮への影響力を誇示する形になっている。
金正恩委員長との会見を紹介した「人民日報」の記事では、習近平の肩書を「主席」と「総書記」を使い分けて書かれている。...
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南北朝鮮の首脳会談をうけて王毅・中国外相が北朝鮮を訪問、5月2日には李容浩外相に、3日には金正恩委員長と各々会ったことが報じられた。南北首脳会談や米朝首脳会談について話し合われたものと思うが、王毅外相と両者との会談で各々「中朝の伝統ある関係」が強調されていた。2017年までの中朝の「冷たい関係」はなかったことのように、中国は北朝鮮への影響力を誇示する形になっている。
金正恩委員長との会見を紹介した「人民日報」の記事では、習近平の肩書を「主席」と「総書記」を使い分けて書かれている。党の「総書記」の肩書を使っているということは、中朝関係は「党の関係」も含めて1980年代までの「特別な関係」に戻っていることを示している。また金正恩委員長は習近平主席への挨拶を伝えるとともに「朝鮮半島の非核化実現は朝鮮側の揺るぎない立場だ」「朝鮮側は、朝鮮半島の平和・安定に向けた中国側の積極的な貢献を高く評価する。中国側と戦略的な意思疎通を強化したい」と表明し、中国側の支援を要請している。
一方李容浩外相との会談で、王毅外相は「中国は、朝鮮半島の非核化に関する北朝鮮の尽力を支持し・・・北南双方の関係改善を支持する」としているが、さらに「朝鮮が経済建設に力を注ぐことを支持する」とも述べている。また双方の政治外交部門は協調して、中朝双方の経済貿易協力を進めていこうとも述べている。
南北首脳会談が行われても、また米朝首脳会談が予定されていても、国連の経済制裁は解除されていない。安倍首相は「圧力をかけ続けなければならない」と言っているのだが、中国はすでに経済交流を進展させようとしている。中朝の貿易物資の7割が通過するという遼寧省の丹東では、経済交流の活発化を見込んで、不動産価格があがっているというし、一旦は閉鎖された中国内の北朝鮮レストランも再開されたという。
かつて中国とソ連が対立していた時代、北朝鮮は両国との関係を天秤にかけながら、「小国」北朝鮮が大国である中国やソ連に翻弄されないように、綱渡り的な、しかし巧知にたけた外交を行っていた。かつての知恵を思い出したかのように北朝鮮は現在米国と中国の間を巧みに進んでいるかのようである。もちろん今の中国は北朝鮮の「巧知」を知りながら、東アジアのみならず世界への影響力を示すために逆に利用しているわけである。
(李容浩外相は、中国の表記では「李勇浩」になっているが、日本での一般的な表記によった。)
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米朝首脳会談を前に、米朝の水面下の交渉が時折顔を出して来ている。
米国・トランプ大統領の側近は3日、北朝鮮で拘束されている3人の米国人が近く解放される見通しを明らかにした。
トランプ大統領の側近で大統領の弁護士も務めるジュリアーニ元ニューヨーク市長がFOXテレビのインタビューで明らかにしたもの。
米国・ホワイトハウス・サンダース報道官「3人が解放すれば米朝首脳会談を前に誠意を示すものになる」としたが、その一方で政府当局者でないジュリアーニの発言理由について回答を避ける。...
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米朝首脳会談を前に、米朝の水面下の交渉が時折顔を出して来ている。
米国・トランプ大統領の側近は3日、北朝鮮で拘束されている3人の米国人が近く解放される見通しを明らかにした。
トランプ大統領の側近で大統領の弁護士も務めるジュリアーニ元ニューヨーク市長がFOXテレビのインタビューで明らかにしたもの。
米国・ホワイトハウス・サンダース報道官「3人が解放すれば米朝首脳会談を前に誠意を示すものになる」としたが、その一方で政府当局者でないジュリアーニの発言理由について回答を避ける。
米国政府は去年、北朝鮮で拘束の米国人大学生死亡を受け、北朝鮮を強く非難するとともに残る3人の解放を求めてきた。
トランプ大統領は2日のツイッターに「前の政権は解放できなかったが注目してほしい」と書き込み、3人の解放が実現することに期待を示した。
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南北首脳会談から5日。韓国は北朝鮮向け宣伝放送のスピーカーを取り外し、北朝鮮は韓国との30分の時差を5日から同一時間に戻すとしている。もっともこの時差は2015年8月15日、つまり金正恩時代に始まったものである。何はともあれ、南北朝鮮の融和ムードが続くなかで、王毅・中国外相が訪朝している。
当然ながらこの件に関する両国からの報道はないが、南北首脳会談の結果や米朝会談について話し合われているものと思われる。...
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南北首脳会談から5日。韓国は北朝鮮向け宣伝放送のスピーカーを取り外し、北朝鮮は韓国との30分の時差を5日から同一時間に戻すとしている。もっともこの時差は2015年8月15日、つまり金正恩時代に始まったものである。何はともあれ、南北朝鮮の融和ムードが続くなかで、王毅・中国外相が訪朝している。
当然ながらこの件に関する両国からの報道はないが、南北首脳会談の結果や米朝会談について話し合われているものと思われる。朝鮮戦争の休戦協定を平和協定にするのならば、中国も当事者であるので、中国の関与が必要である。「取引」上手なのはトランプ大統領かもしれないが、中国にとっても北朝鮮あるいは朝鮮半島は米国に対する「取引」の材料になる。
中国は社会主義国との関係を「党と党が特殊な関係」であると定義しており、北朝鮮との関係も当然その一つだった。しかし中国と韓国が国交を樹立(1992年)して以降、中国と北朝鮮の関係は、他の国交を樹立している国との関係と同様であると定義している。つまり「普通の関係」になっていた。
それでも胡錦涛時代は北朝鮮との関係を「先経貿」と称し、北朝鮮の鉱物資源の開発輸入を行い、また折から中国の人件費が上昇していることもあって、繊維製品を北朝鮮の工場で縫製するという委託加工貿易を行ったことから、貿易額は増加していった。ところが中国で習近平政権が、北朝鮮で金正恩政権が誕生すると二国間関係は大きく変わった。習近平が「先非核」を唱え、北朝鮮に非核化を強く促すようになったからである。2013年2月に北朝鮮は3度目の核実験を行ったが、核実験の兆候が見え始めたときに、人民日報系の「環球時報」では「もし朝鮮が3度目の核実験をしたならば、朝鮮は代償を払わなければならない」とさえ書いていた。習近平主席の訪朝はまだ実現していないが、韓国はすでに訪問している。
核実験、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対し、2017年後半に中国は国際社会と軌を一にして一段と厳格に北朝鮮に対し経済制裁を行うようになった。そのようななか2018年3月13日の「環球時報」で突然「中国と北朝鮮の間には核問題を除いて問題はない」とする奇妙な文章が掲載され、3月25日には金正恩委員長は訪中したのであった。トランプ大統領が米朝首脳会談を行うことを応諾するという「想定外」の事態が起こり、北朝鮮は中国の後ろ盾を求め、中国は米国に対する対抗措置として、北朝鮮のメンターであることを誇示しなくてはならなかったのであろう。中国はそれが習近平の心からの願いではなかったとしても外交戦術の妙手を打ったことになる。
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先週の4月27日に朝鮮半島で行われた「南北首脳会談」の衝撃がまだ消えていない。
悪辣非道の独裁者と思われていた北朝鮮の「金正恩」朝鮮労働党委員長だが、予想に反して、人並みの笑顔とウイットがある冗談を交え、南北融和の救世主のような立ち居振る舞いから、世界からの高い評価が一気に上がり、米国トランプ大統領のお眼鏡にもかない、米朝首脳会談が開催される動きが活発になっている。
世界の目というものは、それほどまでに寛容なのかと、不思議な感覚に陥った。...
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先週の4月27日に朝鮮半島で行われた「南北首脳会談」の衝撃がまだ消えていない。
悪辣非道の独裁者と思われていた北朝鮮の「金正恩」朝鮮労働党委員長だが、予想に反して、人並みの笑顔とウイットがある冗談を交え、南北融和の救世主のような立ち居振る舞いから、世界からの高い評価が一気に上がり、米国トランプ大統領のお眼鏡にもかない、米朝首脳会談が開催される動きが活発になっている。
世界の目というものは、それほどまでに寛容なのかと、不思議な感覚に陥った。
トランプ米大統領の言説をみても、中国の評価からも、おだて気味であるが、交渉相手に足る人物との評価を下しているようである。
多くの人々が、違和感を感じる「外交的判断」である。
半年前まで、核戦争の危機にあった状況が、一遍にデタントへ向かう「効果」は確かに現実的に生じたと言えるかもしれない。
そして私たちは、人類が今、勝ち得ている「一見平和」という状況をもう一度正面から考えてみる必要があるようだ。
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南北首脳会談を受け、韓国と北朝鮮の融和ムードが高まっている。次の焦点は米朝首脳会談になる。
トランプ大統領はその開催地について南北首脳会談が行われたパンムンジョムやシンガポールが候補地だと明らかにした。
北朝鮮の朝鮮中央テレビ、南北会談をまとめた約40分の記録映画を公表した。
南北首脳会談が開催された会場には平壌とソウルで30分の時差があるため、2つの時計があった。
北朝鮮はソウルより30分遅い「ピョンヤン時間」を2015年に導入。...
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南北首脳会談を受け、韓国と北朝鮮の融和ムードが高まっている。次の焦点は米朝首脳会談になる。
トランプ大統領はその開催地について南北首脳会談が行われたパンムンジョムやシンガポールが候補地だと明らかにした。
北朝鮮の朝鮮中央テレビ、南北会談をまとめた約40分の記録映画を公表した。
南北首脳会談が開催された会場には平壌とソウルで30分の時差があるため、2つの時計があった。
北朝鮮はソウルより30分遅い「ピョンヤン時間」を2015年に導入。きのう朝鮮中央テレビは、金正恩委員長の指示でピョンヤン時間が5日から韓国と同じになると伝えた。
韓国大統領府によると、金正恩委員長は「北と南は同じ土地で、わずか数メートル歩いてきただけなのになぜ時間が違うのだろうか」と述べたという。
一方、韓国・国防省の報道官は「軍事境界線で宣伝放送用の大音量スピーカーの撤去を始める」と宣言した。
世界の核軍縮について話し合うNPTの準備会合の場でも今回の会談を評価する声が相次いでいる。
ただ日本や英国などは北朝鮮が具体的な行動をとらない限り、制裁と圧力を維持すべきだと改めて慎重な姿勢を示した。
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