米国ゼロエミッション車政策の現状(8月7日)
5日、米国・バイデン大統領が2030年に新車販売の半分を「ゼロエミッション車」にするという目標を定めた大統領令に署名した。
この目標には強制力はないが、米国に自動車の市場を持つ日本車産業も当然のことながらこの大統領令に影響を受けることになる。
今回、日本車が得意とするHV(ハイブリッド車:エンジンとモーター組み合わせ、複合動力を有効に活用)が「ゼロエミッション車」から除外されることになった。...
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5日、米国・バイデン大統領が2030年に新車販売の半分を「ゼロエミッション車」にするという目標を定めた大統領令に署名した。
この目標には強制力はないが、米国に自動車の市場を持つ日本車産業も当然のことながらこの大統領令に影響を受けることになる。
今回、日本車が得意とするHV(ハイブリッド車:エンジンとモーター組み合わせ、複合動力を有効に活用)が「ゼロエミッション車」から除外されることになった。日本の自動車メーカーにとって痛手となるが、幸いなことにPHV(プラグインハイブリッド車)はゼロエミッション車として認められた。
PHVはエンジンを併用している点で、HVと違いはないが、家庭の電源から充電できる点が異なる。いわばHVとEV(電気自動車)の中間に位置するのがPHVである。
実はEUや英国ではPHVの販売禁止が打ち出されていて、日本の自動車業界には不穏な空気が流れていた。そんな中、バイデン大統領があたかも日本車に救いの手を差し伸べた格好となっている。トヨタ幹部は「PHVが含まれるなら我々としてもいくらでもやりようがある」と大歓迎している。
バイデン大統領がPHVを「ゼロエミッション車」に入れた背景には、国土が広く長距離移動が多い米国において、走行距離の短いEVだけでは地方からの支持が得られないという現実的な理由があった。
裏を返せば、この問題が解決されれば、すぐにでもPHVは「ゼロエミッション車」から除外される可能性もあるということである。
日本車メーカーはこうしたことも念頭に入れつつ、PHVにもEVにも使用可能な電池の研究開発投資に力を入れ、どんな状況になっても対応できるようにしておく必要があると感じられる。
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気象コントロール技術の脅威(7月31日)
中国が天候をコントロールするための取り組みを大幅に強化している。2020年12月初め、中国政府は「気象制御能力を大幅に強化し、人工降雪・降雨プログラムを大幅に拡大させる」と発表した。
中国だけではない。エチオピアも乾燥地帯での農業開発に気象制御能力の活用を考えている。UAEなども気象の制御に乗り出している。
これまでも中国はロケットを打ち込んでは人工降雨を起こし、干ばつ対策や大規模な国際行事の前には大気浄化まで公然と行ってきた実績がある。...
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中国が天候をコントロールするための取り組みを大幅に強化している。2020年12月初め、中国政府は「気象制御能力を大幅に強化し、人工降雪・降雨プログラムを大幅に拡大させる」と発表した。
中国だけではない。エチオピアも乾燥地帯での農業開発に気象制御能力の活用を考えている。UAEなども気象の制御に乗り出している。
これまでも中国はロケットを打ち込んでは人工降雨を起こし、干ばつ対策や大規模な国際行事の前には大気浄化まで公然と行ってきた実績がある。
今回、中国は2025年までに国土の約半分で気象制御プログラムを実施し、雨や雪のコントロールを目指していくとしている。
懸念されるのは、気象改変による環境への影響が未知数であることである。川の上流で大量の雨が降れば、その水が下流の国々に流れ込むことになり洪水になる可能性もある。
雨の降る場所が変われば、逆に乾燥し、干ばつになるところも出てくる。そうした影響がきちんと検証され、国際ルールが整備されるまでは、こうした研究は行うべきではないのかもしれない。使いようによっては台風や竜巻の進路も変更可能になるため、新たな国際紛争になる恐れもある。
ウイルスなどの細菌兵器と並び、気象兵器は一見武器による攻撃に見えないため、なかなか反論することは難しいに違いない。
実は国連には自然の作用を意図的に操作することは禁じる「環境改変兵器禁止条約」という条約が既に存在し、1978年に発効している。
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アジア・EVシフトに欠かせないもの(7月29日)
EV電気自動車へのシフトが加速する中国では、寿命を迎えたバッテリーをどう扱うかが大きな課題になっている。
5年から10年ほど使われたバッテリーが今、新たなビジネスを生んでいる。中国南部、深センのこの企業は、自動車メーカーからバッテリーを買い取り、リユースする事業を手がけている。
買い取ったバッテリーを分解し、電池の容量などを分析する。
電池として使えない場合は、中の希少金属を取り出すためにリサイクルに回するが、劣化が進んでいないものは、家庭などで使う蓄電池として再生産する。...
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EV電気自動車へのシフトが加速する中国では、寿命を迎えたバッテリーをどう扱うかが大きな課題になっている。
5年から10年ほど使われたバッテリーが今、新たなビジネスを生んでいる。中国南部、深センのこの企業は、自動車メーカーからバッテリーを買い取り、リユースする事業を手がけている。
買い取ったバッテリーを分解し、電池の容量などを分析する。
電池として使えない場合は、中の希少金属を取り出すためにリサイクルに回するが、劣化が進んでいないものは、家庭などで使う蓄電池として再生産する。
中国では、リユースされるバッテリーが、2030年に、EV740万台分に上るとも試算されている。このため、資源をむだづかいしないことが重要になると見ている。
日本の大手商社も、みずからの環境ビジネスに生かそうと、この中国企業に出資。今年からリユースした蓄電池を日本に輸入して、太陽光発電の施設で活用する実証実験を始めた。
発電量が天候に左右されやすい太陽光発電では、適切に電力を制御するために蓄電池が欠かせない。
会社は、リユースの蓄電池を使ったシステムを海外展開することも視野に入れている。中国を中心に世界で拡大するリユース市場に、独自の技術で参入を目指す日本企業もある。
大手電機メーカーを退職した技術者などで作る大阪市の企業では、すでに中国で実証実験を行い、現地の企業などから一定の評価を得たという。様々な技術開発がどう進んでいくか、今後注目される。
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成長が続く医薬ハイテク企業(7月24日)
次世代世界標準の行方を握っているのはGAFAMやスペースX、テスラだけではない。米国・ファイザーと共に新型コロナウイルスワクチンを開発したドイツのバイオテクノロジー企業・ビオンテック社もそうした有望な企業のひとつである。
ビオンテックによれば、mRNAワクチンを開発するのは想像する以上に難しいという。ある日、突然普通の製薬会社が10億回分を超えるワクチンを作ることにはならないのだという。何年にもわたる経験とデータの蓄積、組織力や技術力や、治験と生産インフラを同時に拡大できる資金力が必要となるからである。...
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次世代世界標準の行方を握っているのはGAFAMやスペースX、テスラだけではない。米国・ファイザーと共に新型コロナウイルスワクチンを開発したドイツのバイオテクノロジー企業・ビオンテック社もそうした有望な企業のひとつである。
ビオンテックによれば、mRNAワクチンを開発するのは想像する以上に難しいという。ある日、突然普通の製薬会社が10億回分を超えるワクチンを作ることにはならないのだという。何年にもわたる経験とデータの蓄積、組織力や技術力や、治験と生産インフラを同時に拡大できる資金力が必要となるからである。
彼らはドイツの会社であるが、自分達をグローバル企業と位置付けており、できるだけ多くの国々に自分達のワクチンを届けたいという使命感を持ってやっているという。
ビオンテックのクリーンで真新しい研究所はロボットが高速で検査を行い、遺伝子解析装置がアルゴリズムを解析するなど、製薬会社というよりむしろハイテク企業といった方が正確である。
もともとはガン研究の会社であったビオンテックはガン治療にもmRNAを応用しようとしているが、mRNAは、破壊的革新技術と目されていて、今後20年の間に医療業界に革命をもたらす可能性がある。今後もビオンテック等医薬ハイテク企業から目を離せない。
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GAFAMを通して見る次の技術革命(7月19日)
次の技術革命の流れはGAFAMを見ていくことによってある程度は透けて見えてくる。
他社と比べ豊富なAIリソースを持っているGoogleは、AIを中心に進化を遂げようとしている。AIに関しては政治的にも提言できるポジションを既に築いており、例えばGoogle元CEO・エリックシュミットは「このままいけばAI分野で中国に追い抜かれる」として、米国政府にAIに関する開発予算や研究機関の増設、AIの軍事活用に至るまでの提言を行っている。...
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次の技術革命の流れはGAFAMを見ていくことによってある程度は透けて見えてくる。
他社と比べ豊富なAIリソースを持っているGoogleは、AIを中心に進化を遂げようとしている。AIに関しては政治的にも提言できるポジションを既に築いており、例えばGoogle元CEO・エリックシュミットは「このままいけばAI分野で中国に追い抜かれる」として、米国政府にAIに関する開発予算や研究機関の増設、AIの軍事活用に至るまでの提言を行っている。
Googleの持ち株会社・アルファベットのスンダーピチャイCEOは、AIを柱としたまとまりのある企業体にGoogleをしていきたいという考えを持っている。例えばAIとディープラーニングを組み合わせた「眺めるだけで検索結果が出てくる」データサービスの展開や、AIをベースとした自律学習ロボットの開発、自動運転、宅配ドローン開発など、AIとコンピュータビジョンを起点として最先端を走る企業を展開しようとしている。
アップルは従来のガジェット路線を踏襲し、iPhoneをスタイリッシュに軽量化し、急速充電時間も圧縮するなど、デザイン性と機能を兼ね備えた方向性を増々強め、暗号通貨などを代替決裁手段として取り込むなどしながら、テクノロジー性を強めていくとみられている。アップルがGAFAMの中で特徴的なのは、テクノロジーの進化の裏で犠牲となりがちなプライバシーを守る姿勢を強く打ち出しているという点である。アップルはそのための4つの柱としてデータ最小化、オンデバイス処理、透明性、セキュリティに力を注いでいる。
フェイスブックも、様々な方向に手を広げている。銀行システムの利用が困難な発展途上国において使用が可能な仮想通貨「ディエム」サービスの立ち上げは話題を呼んだ。会長兼CEOのマークザッカーバーグは「オキュラス」などVRやARの専門会社を買収した。これによって最先端のテクノロジーとコミュニケーションを交差させ新しい価値を生み出していこうとしている。
最新の動きでは、脳の信号を読みとるリストバンドを作る企業を買収して、さらに高度なコミュニケーションを確立させたい考えを表明している。他方でフェイクニュースやディープフェイクなどを野放しにしたために、外国による選挙の介入を招いたなどとして世界でユーザー数が減り始めていることも事実である。ユーザー離れが起きないように、インスタグラムのような強力人気アプリをどんどん買収していきユーザーの囲い込みをしていく必要に迫られている。
地上でやるべきことを全てやってしまったアマゾンドットコムのような企業は例外なく宇宙に目を向けている。アマゾンドットコム創業者・ジェフベゾスはブルーオリジンを立ち上げ宇宙に活路を求めた。面白いのは宇宙に目を向けている企業が棲み分けを行っていることである。ベゾスが特に月に照準を合わせているのに対し、スペースXのイーロンマスクは火星に照準を合わせている。
この他、バージンギャランティックのリチャードブランソンは宇宙観光ビジネスを目指している。ベソスの地球上での評判は、芳しくなく「いずれはロボットに置き換えられる運命の従業員がトイレ休憩にも行けずに頑張っている時にせっせと富をためこんでいる腹立たしいほどの大富豪」などと評されている。そのため幹部に地上を任せて自分は宇宙に専念するのではないかとかの声も聞こえてくる。
GAFAMの中でも、マイクロソフトは社会との関わりを強めることを考えている。サティアナデラCEOは、政府などへの働きかけによって社会的に「テクノロジーへの信頼を得ていくことが重要であるとしており、例えばサイバー攻撃の脅威に立ち向かうため「デジタル版ジュネーブ条約」を提唱している。
AIの倫理、プライバシー、ネットの安全性にもアンテナを張っている。
こうしたマイクロソフトの姿勢の根底には創業者・ビルゲイツの精神が流れている。新型コロナの動きをいち早く予想し、ワクチンの開発やテレワークなどの動きをいち早く準備していたのはビルゲイツであり、マイクロソフトが先見性ある企業であることは確かである。今後、マイクロソフトはAIファーストということで特にスモールAIに力を入れていく方向性を打ち出している。
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