気象コントロール技術の最前線では(10月16日)
横浜国立大学先端科学高等研究院に日本初の台風専門研究機関となる「台風科学技術研究センター」が新設され、台風を制御し、エネルギーを有効活用する「タイフーンショット計画」を立ち上げた。
こうした気象制御プロジェクトは古くは1961年から1983年にかけて米国で行われた「ストームファリープロジェクト」がよく知られている。上空からヨウ化銀をまいてハリケーンのエネルギーを弱めるという実験であったが、「制御の予測不可能性」が問題視されて、中止となった。...
全部読む
横浜国立大学先端科学高等研究院に日本初の台風専門研究機関となる「台風科学技術研究センター」が新設され、台風を制御し、エネルギーを有効活用する「タイフーンショット計画」を立ち上げた。
こうした気象制御プロジェクトは古くは1961年から1983年にかけて米国で行われた「ストームファリープロジェクト」がよく知られている。上空からヨウ化銀をまいてハリケーンのエネルギーを弱めるという実験であったが、「制御の予測不可能性」が問題視されて、中止となった。
「台風科学技術研究センター」の「タイフーンショット計画」ではセンター長の筆保弘徳教授よれば、台風の目の中心に氷などをまき、暖かい空気を冷やすことで気圧の低下をわずかに抑え、台風の構造を変え、勢力を落とすことができることがわかった。
台風を氷で制御した場合にどのくらい勢力が落ちるか、進路がどう変わるかなどについて、氷の量や位置などの条件を入力し、2年前に千葉県鋸南町を襲った台風15号のデータを使い、シミュレーションを行った結果、台風の風速が2~3m落ちることが判明した。2~3mと聞くと、効果はわずかしかないようにも見えるが、実際には建物の被害を約30%抑え込むことができる。金額に換算すれば1800億円にも及ぶ。つまり被害を大幅に減らせるということがはっきりと科学的にも証明された。
「台風科学技術研究センター」には台風を制御するだけでなく電力に変換することも視界に入れた研究を行なっている。「台風発電開発ラボ」がこしたテーマを一括して担当している。勢力の強い台風ともなると日本で消費されるエネルギーの約8年分に相当するというが、このラボではこうした膨大なエネルギーを発電につなげようと考えている。
例えば、風力発電機が搭載された無人船(台風発電船)を台風の進路に沿わせて移動させ、発電させていくという研究である。この絶対に壊れない頑丈な台風発電船にはいくつもの風力発電プロペラがついており、一斉に発電を行うことができる。これを使うことによって台風によって停電した地域に台風で作った電気を供給するという夢のようなことも将来的には可能になるかも知れない。
台風も含めた災害対策のノウハウをパッケージで他国に提供することにつなげることができれば、災害列島という負のイメージを日本の成長戦略につなげられるかもしれない。
閉じる
自国の宇宙ステーションと・中国宇宙船ドッキング成功(10月16日)
中国の有人宇宙船「神舟13号」は今日未明に打ち上げられた。
女性1人を含む3人の宇宙飛行士が搭乗していて、日本時間の午前8時前に中国が独自に建設を進めている宇宙ステーションとのドッキングに成功した。
3人は、中国としてはこれまでで最長となる6カ月間宇宙ステーションに滞在し様々な実験を行う予定である。
熊本にTSMC工場誘致(10月9日)
TSMCとソニーグループが熊本に総額8000億円規模の半導体新工場(ロジック半導体)を共同で建設する計画の大枠を固めた。
ソニーグループも少額を出資するが、驚くのは日本政府が最大で4000億円を補助するとしている点である。これだけの補助金を外国企業に拠出することは異例のことである。
経済安全保障の観点から先端半導体を生産する国内拠点が日本には欠かせないと判断したという。
これだけの額を政府が援助するのだから、世界最先端の技術を持つTSMCの工場が来るのかと期待してしまうが、日本に来る工場は実は最先端の工場ではない。...
全部読む
TSMCとソニーグループが熊本に総額8000億円規模の半導体新工場(ロジック半導体)を共同で建設する計画の大枠を固めた。
ソニーグループも少額を出資するが、驚くのは日本政府が最大で4000億円を補助するとしている点である。これだけの補助金を外国企業に拠出することは異例のことである。
経済安全保障の観点から先端半導体を生産する国内拠点が日本には欠かせないと判断したという。
これだけの額を政府が援助するのだから、世界最先端の技術を持つTSMCの工場が来るのかと期待してしまうが、日本に来る工場は実は最先端の工場ではない。
TSMCの最先端工場が行くのは米国・アリゾナであり、熊本の新工場のメインとなるのは高感度センサーや高処理能力を持つマイコンなどに使われる20ナノ台の微細加工技術であって、残念ながらスマホなどに使われる世界最先端の5ナノではない。
今、産業のコメと呼ばれる半導体工場誘致には世界が関心を持っているが、日本も半導体生産拠点を国家事業として取り組んでいく方針である。
米国の日本を見る目は冷ややかであり、米国半導体工業会は日本については土地代が高く、半導体工場を10年間、運営していく費用は中国に比べ3割、韓国に比べても2割高いと指摘している。
危惧すれば、日本にある半導体製造能力も将来的には米国に吸い取られていく可能性もゼロとは言えない。最先端の技術が絡むと、そうしたリスクも生じてくることになる。
閉じる
社会の変化と今後のエネルギー構想(10月2日)
脱炭素の流れが加速し、デジタル庁が発足し、テレワークが仕事や教育に定着し、電子決済が増え、その上EVに乗る人が増えていく中で、電力の使用量も増加して行く傾向にある。
日本は東日本大震災・福島第一原発事故以来、エネルギー政策を大転換し大幅に火力発電を増やし、大幅に原子力発電を減らすという大転換を成し遂げた。今度は異常気象、巨大台風、干ばつ、巨大竜巻など地球温暖化危機が目の前に迫ってきており、再びエネルギー政策の大転換を迫られている。...
全部読む
脱炭素の流れが加速し、デジタル庁が発足し、テレワークが仕事や教育に定着し、電子決済が増え、その上EVに乗る人が増えていく中で、電力の使用量も増加して行く傾向にある。
日本は東日本大震災・福島第一原発事故以来、エネルギー政策を大転換し大幅に火力発電を増やし、大幅に原子力発電を減らすという大転換を成し遂げた。今度は異常気象、巨大台風、干ばつ、巨大竜巻など地球温暖化危機が目の前に迫ってきており、再びエネルギー政策の大転換を迫られている。
こうした流れの中で、今から約1年前の10月、菅総理は国会での所信表明演説の中で、「2050年までにカーボニュートラルにする」と脱炭素宣言を行った。この発言によって脱炭素化の世界の動きにかろうじて日本が追いついたと言われている。2050年と言うとまだ先の話ようにも思えるが、僅か29年しか時間が残されていないという言い方もできる。
日本の現在の電源構成割合を見てみると火力がおよそ74%、原子力が4%、再エネが9%、水力が8%(2020年環境エネルギー研究所調べ)である。東日本大震災直後は91%だったことを考えると火力はかなり減ってきてはいる。
2050年にカーボンニュートラルを達成するためには、今から4年後の2025年までに火力発電は少なくとも現在の占有率の半分以下、つまり37%よりは少なくなっていなくてはならない計算になる。
CO2を出さない火力発電であるアンモニア火力発電や地熱発電を使うという手もあるが、こうした発電方法はベースロード電源とはなりえない。37%分を補うためには4年以内にベースロード電源としての原子力と再エネを組み合わせて30%まで持っていく必要がある。
こうしてみると、これからも現在では不可能と思われる新たな技術構想が不可欠と思われ、できるだけ緻密に具体的に詰めて議論していくという姿勢が求められている。
閉じる
EV化めぐる自動車メーカーの動き(10月2日)
今、「CASE」という新たな産業の革命に向けて世界中が一斉に走り出している。
自動車のEV化もこの大きな流れの中の一環であり、内燃機関がガソリン駆動エンジンから電気仕掛けのモーターに変わろうという大きな動きの中で、IT大手のアップルや精密工業の鴻海など異業種の参入も相次いでいる。
先月16日、EUは2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する方針を打ち出したが、こうしたEUの動きをEVへの全面移行が早まる兆候と捉える専門家もいる。...
全部読む
今、「CASE」という新たな産業の革命に向けて世界中が一斉に走り出している。
自動車のEV化もこの大きな流れの中の一環であり、内燃機関がガソリン駆動エンジンから電気仕掛けのモーターに変わろうという大きな動きの中で、IT大手のアップルや精密工業の鴻海など異業種の参入も相次いでいる。
先月16日、EUは2035年にガソリン車の販売を事実上禁止する方針を打ち出したが、こうしたEUの動きをEVへの全面移行が早まる兆候と捉える専門家もいる。
ホンダの三部社長はEUの方針を受け、「ルールが変わるなら対応していくしかない」と2040年にホンダが設定したガソリン車全廃計画を前倒しにし、EV化に対応していく姿勢を見せた。
ホンダはこれまでも、厳しい状況を乗り越えてきた。1978年、米国市場においてガソリン乗用車から排出される窒素酸化物の排出量を90%以上削減しなくてはならないという厳しい環境規制「マスキー法」を課せられたが、低公害のCVCCエンジンを自力で開発し、苦境から見事に脱出してみせた。
EVという枠の中にあっても十分にやっていけるだけの技術力・開発力がホンダにはある。
一方、トヨタも動きを見せている。トヨタはEVへの全面移行にはすぐにはならないと踏んでおり、FCV(水素自動車)への強いこだわりを見せている。
トヨタのシナリオはHV→FCV→EVである。FCVであればEVのように部品点数が極端に少なくならないので、製造技術が劇変するという事態も避けられる。
FCVは長距離走行が可能であるという点でEVよりも優れており、長距離走行ができないEVの弱点をトヨタとしては突いていきたいと考えている。視界の先にあるのは長距離走行を必要とするトラックやバスである。
さらにその先をトヨタは見据えており、地球上でもっとも豊富にある元素である水素を使ったFCVシステムをパッケージとして鉄道や船舶などにも売り込んでいきたいと考えているようにも見える。
閉じる
「世界の新技術」内の検索