米中“貿易戦争”のリスク・日本への影響は・・・(3月26日)
先週トランプ大統領が打ち出した強硬な通商政策で貿易戦争の懸念が出てきた。
各国の株価が大きく下げている。
穏健派のティラーソン国務長官、コーン国家経済会議委員長も政権を去った。
米国は中国に鉄鋼、アルミニウム高関税の輸入関税とかけ、知的財産侵害に対する制裁関税も打ち出した。貿易戦争の危険は十分にあり、米中包括経済対話が昨年7月に1回行ったきりでその後、音沙汰がない。
今回除外された国はFTAを米国とやっている国が多く、今後トランプ政権は2か国間の貿易交渉を強めると見られている。
米中貿易戦争(3月24日)
(米国の一方的通商政策で世界同時株安に)
トランプ大統領の打ち出した保護主義的な政策によって23日、日経平均株価は一時1000円以上値を下げ、世界同時株安が進行した。トランプ大統領は会見で「中国との貿易赤字は世界史上最大で制御不能だ」と述べ、中国が知的財産権を侵害しているとの理由で米国通商法301条に基づき、通信機器をはじめ幅広い分野の中国製品に年間最大で6兆3000億円相当の巨額関税を課す制裁措置を決めた。...
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(米国の一方的通商政策で世界同時株安に)
トランプ大統領の打ち出した保護主義的な政策によって23日、日経平均株価は一時1000円以上値を下げ、世界同時株安が進行した。トランプ大統領は会見で「中国との貿易赤字は世界史上最大で制御不能だ」と述べ、中国が知的財産権を侵害しているとの理由で米国通商法301条に基づき、通信機器をはじめ幅広い分野の中国製品に年間最大で6兆3000億円相当の巨額関税を課す制裁措置を決めた。さらに米国通商拡大法232条に基づき、鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ25%、10%の関税を課す輸入制限を発動(適用除外7か国)した。これに中国は猛反発し、米国からの果物や豚肉など129品目3100億円相当の輸入品に追加関税を課すなどとする報復措置を示唆し、米中貿易戦争が口火を切った。ただ中国が1兆1800億ドル(123兆円)の米国債を保有していることは米国にとっては大きく、今このリスクが浮上してきている。
(日本にも攻撃の矛先を向けるトランプ大統領)
中国だけでなくトランプ大統領は鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置においてEU、韓国、メキシコ、カナダを除外する一方で、同盟国である日本に対し、攻撃の矛先を向けてきた。22日の会見では「安倍首相の笑顔の裏にあるのは、長い間米国をうまく利用できていた(これからもそれを続けていきたい)との思いからだろうが、そんな日々はもう終わりになるだろう」と意味深長な発言をし、日本に容赦しない姿勢を示した。23日までに交渉で対象から外されると高を括っていた日本は米国にハシゴをはずされた格好で、森友文書書き換え問題で揺れている政権には追い打ちとなった。
(トランプ大統領の保護主義的政策の狙いは何か?)
トランプ大統領の一連の保護主義的政策の狙いとして、米国の財政赤字が膨らんだ理由は中国がWTO加盟を利用し先進国の技術を盗んだためとの強い思いがあった。もちろん11月の中間選挙に向けた白人労働者層に公約の実現をアピールする狙いもあるだろうし、ロシア疑惑や相次ぐ高官の辞任などで足元が揺らいでいる政権の浮揚を図る狙いもある。一方、アルミ鉄鋼輸入制限から同盟国日本を対象から外さない理由としては、日本に対し、米国にとって有利な二国間交渉・FTAを押し付ける狙いが強くありそうだ。さらには最近距離を縮めている日中間にくさびを打ちこみたい政治的思惑もありそうだ。
(今後の日本のとるべき道)
実質的に米中貿易戦争が勃発していると言っていい状況下で、米軍は南シナ海においてイージス駆逐艦“マスティン”による航行の自由作戦を実施した。これに猛反発した中国は対抗措置として「南シナ海で中国海軍が近く実践的訓練を行う」と発表するなど、経済摩擦が軍事摩擦にもつながりかねない不穏な状況になっている。日本としてはあくまで経済問題と安全保障は切り離して対応することを心掛け、経済交渉では米国が誘導する2国間交渉に巻き込まれないよう注意しつつ、TPPをてこにバランスをとりながら、米国と粘り強い交渉を続け、実害をなるべく減らしていくという方法をとっていくしかないだろう。
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中国に制裁・米国が決定“輸入品に高関税”(3月23日)
米国・トランプ大統領は中国の知的財産の侵害を理由に通商法301条に基づき中国からの輸入品に高い関税を課す制裁措置を発動することを決めた。
かつては日本にも課し、1980年代、貿易摩擦が激化した。
パソコン・テレビなど関税100%に引き上げる措置を発動した。米国の対日貿易赤字は500億ドルを突破し、ジャパンバッシングと言われる日本への厳しい批判も行われた。
日本製の自動車が叩き壊される場面がテレビで伝えられた。...
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米国・トランプ大統領は中国の知的財産の侵害を理由に通商法301条に基づき中国からの輸入品に高い関税を課す制裁措置を発動することを決めた。
かつては日本にも課し、1980年代、貿易摩擦が激化した。
パソコン・テレビなど関税100%に引き上げる措置を発動した。米国の対日貿易赤字は500億ドルを突破し、ジャパンバッシングと言われる日本への厳しい批判も行われた。
日本製の自動車が叩き壊される場面がテレビで伝えられた。
そして今回、米国は最大の貿易赤字を抱える中国に狙いを定めた。高い関税を課す対象は6兆円超との見通しを示し対象品目のリストの作成を通商代表部に指示する文書に署名した。
発動はリスト作成後の見通し。またトランプ政権は知的財産の侵害に関連し、中国をWTO世界貿易機関に提訴する方針で中国から米国への投資規制も検討するとしている。
議会中間選挙を控え通商問題で強硬姿勢を鮮明にする米国・トランプ大統領、最大の貿易赤字を抱える中国に対し、貿易不均衡の是正へ向け厳しい姿勢で臨むことになり、中国を狙い撃ちにいた新たな制裁措置により米中の貿易摩擦は更に激しくなりそう。
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G20・保護主義を防ぐ(3月22日)
G20・主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議が閉幕した。
米国が今月23日に鉄鋼などに高い関税を課す、異例の輸入制限措置を発動することを踏まえ、自由貿易を巡る議論が焦点になっていた。
声明では「保護主義と闘う」ことなどを盛り込んだ去年7月のG20サミットでの合意を再確認し、保護主義の広がりを防ぐため、今後「さらなる対話と行動が必要だ」とした。
米国輸入制限(3月10日)
(米通商拡大法232条・23日に発動)
トランプ大統領は米通商拡大法232条に基づき鉄鋼などに高い関税を課す輸入制限を23日に発動することを正式に発表した。鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税が課される。NAFTA北米自由貿易協定の再交渉を行っているカナダとメキシコは除外された。現時点で日本は外されていないが、友好国とは安全保障の観点から話し合いに応じ、柔軟に対応するとしている。英国は関税の対象になるかまだわかっていないが、中国やEU加盟国が大きな打撃を受ける可能性がある。...
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(米通商拡大法232条・23日に発動)
トランプ大統領は米通商拡大法232条に基づき鉄鋼などに高い関税を課す輸入制限を23日に発動することを正式に発表した。鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税が課される。NAFTA北米自由貿易協定の再交渉を行っているカナダとメキシコは除外された。現時点で日本は外されていないが、友好国とは安全保障の観点から話し合いに応じ、柔軟に対応するとしている。英国は関税の対象になるかまだわかっていないが、中国やEU加盟国が大きな打撃を受ける可能性がある。トランプ政権がこの制度で狙いを定めている中国は「多国間貿易を破壊するもので断固反対する」と強く反発し、中国に与える損失を算出して有効な措置を取って正当な権益を守るとし、報復措置をとる構えを見せ、貿易戦争に発展する恐れがある。
(日本・対象からはずすよう米国に働きかける)
世耕経済産業相は米国通商代表部のライトハザー代表と会談し日本を輸入制限の対象からはずすよう働きかけを行っている。制限が発動される23日までに日米間の交渉がまとまれば、関税がかかることを避けられるが、トランプ大統領は輸入制限の例外を認める条件として、貿易や軍事で譲歩を迫る構えをみせている。
(TPP11・新協定で署名)
こうした中、チリでTPP11の署名式が行われた。今年中に発効する可能性もある。日本政府はTPP11で各国の国内手続きの進捗状況などを取りまとめる事務局機能を担うことになる。茂木TPP担当大臣は「日本が率先して動くことで早期発効への機運を高めたい」と述べた。参加11か国のGDP・国内総生産の合計は世界全体の約13%で、発効後はコロンビアやタイなど希望する国を積極的に取り込み、拡大する方針。
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