北朝鮮、米国に共同声明の履行促す(6月5日)
~忍耐には限りがある~
間もなく、史上初めて行われた米朝首脳会談から1周年を迎えるが、4日の朝鮮中央通信は、北朝鮮の外務省報道官が「朝鮮はシンガポールでの朝米共同声明を履行し、双方の利益にあう建設的な解決策を探しているのに、米国は承認と義務の履行を回避し、朝鮮を敵視する政策と朝鮮が先に非核化すべきという主張を繰り返している。米国の態度がこのようであるならば、歴史的な共同声明が空手形になってしまうのは避けられない」と述べたことを報じた。...
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~忍耐には限りがある~
間もなく、史上初めて行われた米朝首脳会談から1周年を迎えるが、4日の朝鮮中央通信は、北朝鮮の外務省報道官が「朝鮮はシンガポールでの朝米共同声明を履行し、双方の利益にあう建設的な解決策を探しているのに、米国は承認と義務の履行を回避し、朝鮮を敵視する政策と朝鮮が先に非核化すべきという主張を繰り返している。米国の態度がこのようであるならば、歴史的な共同声明が空手形になってしまうのは避けられない」と述べたことを報じた。
さらに報道官は、米国は過去1年間の己の立場を顧みて、正しい戦略的な選択を行い、立場をかえて、朝鮮の要求に対して回答を行わなければ「我々の忍耐にも限度がある」と述べている。
「限度」については、今年4月の最高人民会議の施政演説で金正恩委員長は、「今年末までは忍耐心をもって米国の勇断を待つ」と述べており、待てるのは年末までと期限を切っていたが、今回再び限度があることを強調したことになる。北朝鮮はすでに非核化の努力もした、米兵の遺骨も返還した、だから今度は米国が行動する番であるというわけである。なぜ米国は北朝鮮の非核化の努力を認めないのか、ということにもなる。
これまで米国との交渉の窓口となっていたものの、処分が伝えられていた金英哲労働党副委員長の健在ぶりを示したのも、朝米会談を続行したいという北朝鮮の意思を示したものとも感じられる。米国がイラン問題や米中貿易戦争に手をとられているなか、北朝鮮としては期限を切ることによって、米国をなんとしても朝米首脳会談の場に出させたい、と考えているようである。
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金英哲と金与正、姿現す(6月4日)
金正恩委員長と李雪主夫人は2日、軍人家族の芸術コンクール入賞者の公演を鑑賞したが、そのニュースを伝える朝鮮中央通信の写真には、失脚したのではないかとの観測が流れていた金英哲労働党副委員長も写っていた。
金英哲氏、2月末に行われた朝米首脳会談が決裂したことで強制労役に服役させられているのではないかといわれていたもの。また4月に開催された労働党第7次中央委員会第4次全体会議で、同氏がつとめていた朝鮮統一戦線部部長の地位が張金鉄氏に変わったことや、これまで重要な外交の場で活躍していた同氏が、4月の朝露の首脳会談などに姿を見せなかったことも同氏の失脚説の根拠となっていた。...
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金正恩委員長と李雪主夫人は2日、軍人家族の芸術コンクール入賞者の公演を鑑賞したが、そのニュースを伝える朝鮮中央通信の写真には、失脚したのではないかとの観測が流れていた金英哲労働党副委員長も写っていた。
金英哲氏、2月末に行われた朝米首脳会談が決裂したことで強制労役に服役させられているのではないかといわれていたもの。また4月に開催された労働党第7次中央委員会第4次全体会議で、同氏がつとめていた朝鮮統一戦線部部長の地位が張金鉄氏に変わったことや、これまで重要な外交の場で活躍していた同氏が、4月の朝露の首脳会談などに姿を見せなかったことも同氏の失脚説の根拠となっていた。
写真では、同氏は金正恩委員長の左側の5番目の席に座っている。ただし随行者としての紹介の順番からすれば、なんらかの降格処分を受けた可能性もある。
また3日に金正恩委員長はマスゲームを観覧したが、その様子を伝える朝鮮中央通信の写真には、同じく朝米首脳会談の失敗によって謹慎中だと伝えられていた、金正恩委員長の妹の金与正労働党第一副部長の姿も写っていた。金正恩委員長の右横で、李雪主夫人の次の席を占めおり、党内の序列があがった可能性もある。
5月31日に韓国紙「朝鮮日報」が朝米首脳会談の失敗をうけて関係者が処分されたのではないかとの記事がでた直後に、金英哲・金与正氏の健在ぶりを見せつけたことになる。ただし処刑されたと伝えられている金赫哲米国担当特別代表の姿は依然として確認されていない。
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米国:北朝鮮との交渉の継続を強調(6月2日)
5月31日~6月2日までシンガポールで日米韓によるアジア安全保障会議(シャングリラ会合)が開催されているが、1日には韓国の李度勲外交部朝鮮半島平和交渉本部長と米国のビーガン北朝鮮担当特別代表が会談を行った。そのなかでビーガン代表は北朝鮮との交渉の継続を強調した。
米韓双方は、米朝の交渉の回復を図っており、時期が鍵となるだろうということで一致した。
2月の米朝会談の決裂以降、北朝鮮との非核化交渉は膠着状態に陥っていたが、とくに5月に入ってからは北朝鮮が相次いでミサイルを発射したことや、米国が北朝鮮の船舶を差し押さえしたことによって、米朝関係はさらに悪化した。...
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5月31日~6月2日までシンガポールで日米韓によるアジア安全保障会議(シャングリラ会合)が開催されているが、1日には韓国の李度勲外交部朝鮮半島平和交渉本部長と米国のビーガン北朝鮮担当特別代表が会談を行った。そのなかでビーガン代表は北朝鮮との交渉の継続を強調した。
米韓双方は、米朝の交渉の回復を図っており、時期が鍵となるだろうということで一致した。
2月の米朝会談の決裂以降、北朝鮮との非核化交渉は膠着状態に陥っていたが、とくに5月に入ってからは北朝鮮が相次いでミサイルを発射したことや、米国が北朝鮮の船舶を差し押さえしたことによって、米朝関係はさらに悪化した。米国側はそれにも関わらず米朝の交渉の継続を模索していることになる。
一方5月31日に韓国の「朝鮮日報」は、北朝鮮では2月の米朝首脳会談の決裂の責任をめぐって、金赫哲米国担当特別代表が3月に処刑されたのを初め、金英哲労働党副委員長らをはじめとして関係者が処分されたと伝えた。
米朝首脳会談の関係者が処分された件について、北朝鮮は明示してはいないが、5月30日の「労働新聞」で、「反革命・反党」「冷厳な審判」など粛清を暗示する言葉が使われていることから、「朝鮮日報」では、粛清があったと判断したという。あえてこの時期に北朝鮮が粛清を仄めかしているのは、北朝鮮は当分米朝交渉を行うつもりはないというサインであるとも考えられる。
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金正恩、江界道の機械工場を視察(6月1日)
6月1日の朝鮮中央通信は、金正恩委員長が江界道の総合機械工場やトラクター工場、精密機械工場、工作機械工場、少年宮などを視察したと報じた。視察したのがいつかは報じられていない。
総合トラクター工場では、金正恩委員長は、機械製造という面で重要な役割を果たしており、経営管理の面でもリーダー的役割を果たしていると称賛した。一方精密機械工場では設備の改造によって、先端科学技術を整備した現代的な工場となり、世界の先進的な水準にまで達している、と評価した。...
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6月1日の朝鮮中央通信は、金正恩委員長が江界道の総合機械工場やトラクター工場、精密機械工場、工作機械工場、少年宮などを視察したと報じた。視察したのがいつかは報じられていない。
総合トラクター工場では、金正恩委員長は、機械製造という面で重要な役割を果たしており、経営管理の面でもリーダー的役割を果たしていると称賛した。一方精密機械工場では設備の改造によって、先端科学技術を整備した現代的な工場となり、世界の先進的な水準にまで達している、と評価した。
経済制裁下の北朝鮮では自力更生の重要性が繰り返し唱えられているが、工作機械を製造する工場や、農業に欠かせないトラクター工場を視察し、生産を奨励することによって、自力更生を強化しようとしたものと思われる。
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米朝首脳会談担当責任者を粛清の可能性(6月1日)
(北朝鮮・米朝首脳会談担当責任者を粛清の可能性)
朝鮮日報等韓国系有力紙は、決裂した米朝首脳会談の責任を問われ、会談を仕切っていた金革哲特別代表が銃殺されたと伝えた。金特別代表は米国に抱き込まれ、誤った情勢判断を行なったとされている。また、金正恩委員長の側近で対米交渉を統括してきた金英哲前統一戦線部長も強制労働に従事させられており、金委員長の妹である金与正は謹慎中だと同紙は報じている。韓国統一省の報道官は「こうした事実は確認できていない」としているが、北朝鮮情勢に詳しい脱北者は「米朝会談の決裂後、北朝鮮国内はかなり殺伐とした空気に包まれている」と指摘している。...
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(北朝鮮・米朝首脳会談担当責任者を粛清の可能性)
朝鮮日報等韓国系有力紙は、決裂した米朝首脳会談の責任を問われ、会談を仕切っていた金革哲特別代表が銃殺されたと伝えた。金特別代表は米国に抱き込まれ、誤った情勢判断を行なったとされている。また、金正恩委員長の側近で対米交渉を統括してきた金英哲前統一戦線部長も強制労働に従事させられており、金委員長の妹である金与正は謹慎中だと同紙は報じている。韓国統一省の報道官は「こうした事実は確認できていない」としているが、北朝鮮情勢に詳しい脱北者は「米朝会談の決裂後、北朝鮮国内はかなり殺伐とした空気に包まれている」と指摘している。米朝首脳会談の失敗によって高まっている国内の不満と動揺を鎮め、内部の引き締めを行った可能性がある。さらに対外的には「膠着状態で動かないことに苛立っている」というメッセージを、米国に送っているとみることもできる。粛清といえば、金正恩委員長の叔父に当たる張成沢が処刑されたことは記憶に新しいが、今回の報道は相変わらず北朝鮮が恐怖政治を軸にして動いている専制国家であることを改めて示すことにもなった。以上確定情報ではないが、日本としてもこうしたことを行う可能性のある国のトップと無条件で会うことの意味をよほど慎重にとらえて会談に臨む必要がある。
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