実写版映画「バービー」は、既報どおり、中国の領土問題主張を容認しているとの非難から、ベトナムでは上映禁止、また、米共和党重鎮も厳しく糾弾している。そうした中、中東のイスラム圏では、イスラム教が禁ずる“同性愛”を推奨していると問題視され、物議を醸している。
8月9日付米
『ニューヨーク・ポスト』紙、
『ザ・ラップ』興行ニュース紙、中東
『アルジャジーラ』TVニュース等は、実写版映画「バービー」が、中東ではイスラム教の教えに反する“同性愛”を後押ししているとして上映禁止等の措置に遭っていると報じた。
実写版映画「バービー」は、7月下旬に世界上映が開始される前から物議を醸していた。
最も強く非難したのはベトナムであり、米共和党重鎮らである。
彼らは、同映画に描写された地図が、中国が南シナ海で一方的に領有権を主張している“九段線”を模しているとして、前者は上映を禁止し、後者は中国プロパガンダを支持するものだと非難した。
ところが、上映開始以来、米国を含めた多くの国々では多くの鑑賞者を引き付けていて、総額10億ドル(約1,440億円)と他の映画を引き離して1位の興行成績を上げている。
そうした中、今度はイスラム圏の中東で同映画の上映につき、非難の声が上がっている。
まずクウェートでは、“国民の倫理観と社会的伝統”を守るためとして上映禁止されることになった。
ラフィ・アル=スバイエ映画検閲委員会委員長は8月9日、地元メディア『KUNA(クウェートニュース通信)』のインタビューに答えて、“同映画が我が国で受け入れられない行動を容認し、かつ、社会的価値を歪める恐れがある”として非難している。
またレバノンでは、モハンマド・モルタダ文化相が同日、“同映画は同性愛及び性転換を後押しし、かつ、信仰や道徳に相反しているので、家族という重要な価値を棄損するものだ”と糾弾するコメントを発表した。
同相のコメントを受けて、バッサム・マウラウィ内務相は即日、上映許可の是非を判断するため同国検閲委員会に同映画の検証を行うよう指示している。
一方、同映画の主演で製作総指揮も司った豪州人女優のマーゴット・ロビー氏(33歳)は、“この映画は誰でも歓迎するバービーランドを描いたもの”だとし、“主演のバービーも助演のケンも、決して同性愛者を表現するものではない”と反論している。
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7月20日付
『ニュース・アメリカ』(南米及びカリブ海地域関連ニュース)は、中国EVメーカーが挙ってブラジルに大規模投資を決定したと報じている。
世界最大のEVメーカーである中国BYD Auto(比亜迪汽車、2003年設立、本社広東省深セン)は今年7月初め、ブラジル北東部バイーア州に一大自動車製造工場を建設すると発表した。
同社世界市場担当のステラ・リー副社長が式典で表明したもので、州都サルバドル近郊に30億レアル(6億ドル、約840億円)を投じて、EV・ハイブリッド車、EVトラック・バスを生産する工場を建設し、新たに5千人余りの雇用を創出するとしている。...
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7月20日付
『ニュース・アメリカ』(南米及びカリブ海地域関連ニュース)は、中国EVメーカーが挙ってブラジルに大規模投資を決定したと報じている。
世界最大のEVメーカーである中国BYD Auto(比亜迪汽車、2003年設立、本社広東省深セン)は今年7月初め、ブラジル北東部バイーア州に一大自動車製造工場を建設すると発表した。
同社世界市場担当のステラ・リー副社長が式典で表明したもので、州都サルバドル近郊に30億レアル(6億ドル、約840億円)を投じて、EV・ハイブリッド車、EVトラック・バスを生産する工場を建設し、新たに5千人余りの雇用を創出するとしている。
かかる決定に至る背景に、今年4月に訪中したルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(77歳、2023年1月就任)の政治折衝の成果が挙げられる。
すなわち、嫌中政策を取っていたジャイール・ボルソナーロ前大統領(68歳、2019~2023年在任)から政権を奪取した同大統領が、親中政策を打ち出し、訪中に当たっては習近平国家主席(シー・チンピン、70歳、2012年就任)と直接会談した上で、両国経済連携強化策に合意していたからである。
ただ、上記の動き以前にも、Great Wall Motors(GWM、長城汽車、1976年設立の中国最大の自動車メーカー)が昨年、19億レアル(3億8千万ドル、約530億円)を投じて南部サン・パウロ州にEV・ハイブリッド車の生産工場を建設するとの計画を発表していた。
ブラジルは低・中所得者層が大半を占める国で、全世帯における自動車所有率は50%以下であることから、EVメーカーにとって投資リスクの高い市場である。
しかし、BYDは米フォード(1903年設立)が撤退した工場跡地を、またGWMは独メルセデス・ベンツ(1926年設立)撤退跡地を有効利用するため初期費用が大きく抑えられることと、EVメーカー含めて世界展開を図る中国企業に共産党政府から多額の補助金が出ることから、彼らとしても長期戦略に打って出られるとみられる。
「21世紀のブラジル・中国関係」著者の政治科学者モーリシオ・サントロ氏は『アルジャジーラ』(1996年設立のカタール衛星TV局)のインタビューに答えて、“ブラジルは、欧州・米国・カナダなどと違って中国と緊張関係になっていない”とした上で、“(欧米から排除されようとしている)中国通信機器大手ファーウェイ(1987年設立)がブラジル国内で何ら制限なく事業展開していることが良い例だ”とコメントしている。
更に同氏は、“BYD等は他中国企業と同様、ブラジルを足掛かりにして、アルゼンチンやチリ等の南米市場に大きく展開していく意向である”と分析している。
また、ブラジル・中国ビジネス協会(2004年設立)のトゥリオ・カリエロ理事も『アルジャジーラ』の取材に対して、“中国による対南米総投資額の半分近くがブラジルに集中していることから、EVメーカー等も進出しやすい環境となっている”とした上で、“低・中所得層のブラジルが、今後大きく経済成長していくに連れて、自動車需要が高まっていく”とコメントしている。
一方、ブラジル当局からも中国EVメーカーの投資誘致のため、例えばBYDは2032年まで付加価値税の95%税額控除が認められ、また、EV購入者に30万レアル(6万2,300ドル、約870万円)の自動車取得税免税、更には至近のアラトゥ港の利用権が認められることになっている。
その上、ニューヨーク大学上海校(2012年設立)金融・経済学専門のロドリゴ・ジーダン教授によると、“西側諸国の米テスラ(2003年設立)のような自動車メーカーは高級EVを主力にしているため、ブラジル市場には向かないが、中国のEVメーカーは安値攻勢が可能なので、同市場で歓迎されるはずだ”という。
すなわち、ブラジルでは、およそ90%が、平均月収3,500レアル(728ドル、約10万2千円)以下の収入しか得ていない。
そこで、BYDのリー副社長も、ブラジル市場に主力投入するのは同社最安値のEV“シーガル”を考えているとしている。
同EVは、5万5千レアル(1万1,450ドル、約160万円)で売り出されることになるという。
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