1月18日付豪州
『スカイニュース豪州』、欧米
『ロイター通信』等は、豪州首相が、駐豪州中国大使による“豪州人潜水負夫へのソナー操作は中国軍艦ではなく日本艦からの可能性”との発言を真っ向から否定したと報じている。
昨年11月14日、長距離フリゲート艦“トゥーンバ(2005年就役)”が日本海航行中、同艦搭乗の豪州人潜水夫が同艦のスクリューに絡まった漁網を取り除く作業をしていた際、同艦に接近してきた中国軍艦からのソナーパルス(水中を伝播する音波を用いて、水中・水底の物体に関する情報を得る装置)による攻撃によって軽傷を負わされた。...
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1月18日付豪州
『スカイニュース豪州』、欧米
『ロイター通信』等は、豪州首相が、駐豪州中国大使による“豪州人潜水負夫へのソナー操作は中国軍艦ではなく日本艦からの可能性”との発言を真っ向から否定したと報じている。
昨年11月14日、長距離フリゲート艦“トゥーンバ(2005年就役)”が日本海航行中、同艦搭乗の豪州人潜水夫が同艦のスクリューに絡まった漁網を取り除く作業をしていた際、同艦に接近してきた中国軍艦からのソナーパルス(水中を伝播する音波を用いて、水中・水底の物体に関する情報を得る装置)による攻撃によって軽傷を負わされた。
その際、豪州のアンソニー・アルバニージー首相(60歳、2022年就任)は、本事件に関し、明確かつ率直に中国側に注意勧告をしたと表明していた。
しかし、駐豪州中国大使の肖謙氏(シャオ・チャン、59歳、2022年就任)は1月16日、同大使館での新年挨拶の席上、“昨年11月の豪州人潜水夫へのソナーパルス操作は中国軍艦が行ったものではない”とした上で、“豪州艦の近くにいた日本艦からの可能性がある”と発言した。
これに対して、同首相は1月18日、“肖大使の発言に振り回されることはない”と毅然とした態度で反論した。
同首相は、“自身が昨年11月に行った、豪州海軍報告に基づく発言(中国軍艦関与)に何ら変わりはない”とした上で、“怪我を負った潜水夫の治療等を経た上で至った医学的評価の結果からも、ソナー攻撃は中国軍艦によって行われたものだとの確信を持っている”と強調している。
一方、駐豪州日本大使館は、肖大使がどのような発言をしたのか承知していないとした上で、“大前提として、日本及び豪州は、インド太平洋地域において志を同じくするパートナー国として、法の支配を明確に遵守し、幅広い分野で安全保障協力を推進してきている”とコメントしている。
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11月20日付米
『CNNニュース』、豪州
『スカイニュース豪州』、
『ABCニュース』等は、豪州首相が、中国軍艦による危険な行為を糾弾したと報じている。
アンソニー・アルバニージー首相(60歳、2022年就任)は11月20日、CNN傘下の『スカイニュース豪州』のインタビューに答えて、日本海に停泊中の豪州軍艦に対して中国軍艦が行った“危険かつプロ意識に欠ける行為”によって、“1人の船員が負傷した”として非難した。
同首相は今月初め、長らくギクシャクしていた中・豪関係修復のため、豪州首脳として7年振りに訪中したばかりであった。
これに先立つ11月18日、リチャード・マールス国防相(56歳、2022年就任)が声明文を発表して、“長距離フリゲート艦「トゥーンバ」(2005年就役)に乗船していた豪州人潜水夫が11月14日、同船のスクリューに絡まった漁網を取り除こうとしていたところ、中国軍艦が危険を伴うソナー(水中を伝播する音波を用いて、水中・水底の物体に関する情報を得る装置)を操作した”とし、“事前に潜水行為を実施していると通知したのにも拘らず、中国艦による無謀な行為で潜水夫のうちの1人が軽傷を負った”と糾弾していた。
同首相は11月16日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席している習近平国家主席(シー・チンピン、70歳、2012年就任)と会談していたが、メディア側質問に対して、同国家主席に本問題について話題にしたかどうかは答えず、ただ、“本件については適切な機会に明確かつ率直に中国側に伝えており、中国側も我々の関心事をよく理解している”と付言するに止めた。
しかしながら、中国外交部(省に相当)の毛寧報道官(マオ・ニン、50歳、2022年就任)は11月20日の定例記者会見で、“中国軍は、常に高度に規律を重んじており、かつ常に国際法と国際慣行に基づいて専門的な活動を行っている”とコメントした。
その上で同報道官は、“政府関係者は中国の玄関口で悪戯に騒ぐのは止めて、中国と協力して中豪関係改善に向けて邁進して欲しい”とけんもほろろに付言している。
この問題について、スタンフォード大学(1891年設立のカリフォルニア州立大学)安全保障問題研究センターのレイ・パウウェル所長は、“中国軍艦の無謀なソナー操作の指示は誰が出したのか不詳だ”としながらも、“もし艦長が指令していたとしたら、豪州海軍の場合に照らし合わせると、同艦長は即座に解任されるか、もしくはもっと悪い懲罰が下されるだろう”とコメントした。
しかし、同所長は同時に、“中国軍においては、一切不問に付されるだろう”とも言及している。
(注1)クワッド会議:日・米・豪・印4ヵ国でつくる連携や協力の枠組み。メンバー国は、民主主義等の価値観を共有していて、それぞれ連携を強めることで、インド太平洋地域で影響力を高める中国の行動を抑えたい狙いを持つ。特に米国は、中国に対抗する上で価値観を共有する同盟国や友好国との連携を重視していて、クワッド会議を首脳レベルに引き上げて、2021年3月にオンライン形式の首脳会議を主催。同年9月には対面での首脳会議を初めて開き、今後は毎年開催することで合意。2022年5月には日本が主催。
(注2)AUKUS:2021年発足の米・豪・英の軍事同盟。米・英国は、豪州による原子力潜水艦の開発および配備を支援し、太平洋地域における西側諸国の軍事プレゼンス(影響力)を強化することを目指す。
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