欧米で深刻化している新型コロナウィルス(COVID-19)世界流行は、人口過多である一方、医療体制が脆弱なアフリカ大陸にも徐々に広がりつつある。そこで、アフリカ内で新興国代表である南アフリカが、国内総生産(GDP)の10%相当の大規模緊急経済支援を行うと発表した。
4月21日付米
『AP通信』:「南アフリカ、260億ドルの緊急経済支援実施を表明」
南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領(67歳、2018年2月就任の第12代)は4月21日、COVID-19流行で苦難に喘ぐ国民を救済するためとして、“破格”の5千億ランド(260億ドル、約2兆8,080億円)の緊急経済支援を実施すると表明した。
同大統領は声明で、同国GDP(編注;国際通貨基金(IMF)の2019年データで3,713億ドル)の10%にも相当する“史上最大”の支援策だとした上で、COVID-19感染防止策及び数百万人に及ぶ“生活困窮者”向けに優先的に充てると強調した。...
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4月21日付米
『AP通信』:「南アフリカ、260億ドルの緊急経済支援実施を表明」
南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領(67歳、2018年2月就任の第12代)は4月21日、COVID-19流行で苦難に喘ぐ国民を救済するためとして、“破格”の5千億ランド(260億ドル、約2兆8,080億円)の緊急経済支援を実施すると表明した。
同大統領は声明で、同国GDP(編注;国際通貨基金(IMF)の2019年データで3,713億ドル)の10%にも相当する“史上最大”の支援策だとした上で、COVID-19感染防止策及び数百万人に及ぶ“生活困窮者”向けに優先的に充てると強調した。
更に同大統領は、3月27日から実行している都市封鎖の影響で食糧不足に陥っていることから、今後2週間で25万個の食糧品梱包物資を届けるとした。
その上で同大統領は、一部の高官によって食糧品支援物資が横流しされているという報告がある点につき、厳しく断罪すると言及した。
南アフリカの都市封鎖措置は5月1日までとされているが、同大統領は、痛みを伴う同施策は国民の命を守るために“絶対必要”とした上で、“解除を安易に早めると、制御不能な感染拡大という取り返しのつかない事態を招きかねない”と警鐘を鳴らした。
なお、同国のCOVID-19感染者は3,465人とアフリカで最多となっており、死者は58人である
また、南アフリカ中央銀行は、ウィルス禍のために同国の今年のGDPは、当初見込みより最大6.1%下落すると予想している。
一方、アフリカのその他の国の対応策は以下のように公表されている。
●ナイジェリア(感染者982人、死者25人、GDP 3,982億ドル)
・今後2週間で、生活保護支給世帯を現行の260万から360万世帯に拡大。
・更に、食糧配布、現金給付、ローン返済猶予等も実施。
●エジプト(感染者3,490人、死者264人、GDP 2,496億ドル)
・法人税減税、及び農地への課税措置延期。
●ガーナ(感染者1,042人、死者9人、GDP 655億ドル)
・今後3ヵ月間、“最貧層”世帯の電気代を全額、またその他世帯の場合は50%を政府が肩代わり。
なお、IMFは今月、アフリカ大陸の貧困国19ヵ国に対して、合計5億ドル(約540億円)の債務免除を決定している。
また、アフリカ連合(AU、注後記)は、国際社会に対して、ウィルス禍対策のためにアフリカに少なくとも1千億ドル(約10兆8千億円)の支援金拠出を求めたいと表明している。
4月22日付ケニア『デイリィ・モニター』紙(『AFP通信』配信):「南アフリカ大統領、ウィルス禍対応のための260億ドル支援策発表」
ラマポーザ大統領は、南アフリカのCOVID-19感染は第二段階に突入しているとして、感染拡大に伴い国民が遭遇している被害を救済するため、これまでにない大規模の支援が必要だと判断したと強調した。
南アフリカでは、ウィルス禍発生以前から、全国の失業率が30%近くに上っており、COVID-19に伴う都市封鎖措置等で、生活困窮は更に悪化している。
南アフリカ労働組合連合は、大統領の政策を歓迎するとしながらも、“国民の困窮を救済するためには、少なくとも1兆ランド(520億ドル、約5兆6,160億円)が必要”だとしている。
何故なら、直近の世論調査の結果、産業界のほぼ3分の2が、今回のウィルス禍による被害損失は、2008~2009年の世界金融危機より“遥かに悪い影響”をもたらすと懸念しているからである。
(注)AU:アフリカの国家統合体。1963年設立のアフリカ統一機構から、2002年に発展改組されて発足。アフリカ大陸の全独立国家55ヵ国が加盟。2020年度の同連合議長は、南アフリカのラマポーザ大統領。本部はアジスアベバ(エチオピア首都)。
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