アメリカの青少年:メンタルヘルス低下が社会問題に(2022/04/25)
30年前、アメリカの思春期の子どもにとって最も深刻な脅威は、大量飲酒、飲酒運転、10代の妊娠、喫煙であった。しかし現在、精神疾患の割合の高騰が新たな懸念となっている。
米紙
『ニューヨーク・タイムズ』によると、2019年には、青少年の13%がうつ状態を経験したと報告されており、2007年から60%増加している。これを反映するように、不安、気分障害、自傷行為で救急外来に連れて来られる青少年が急増しているという。米疾病対策予防センターは、10歳から24歳では、2000年から2007年にかけて安定していた自殺率が、2018年には60%近くも跳ね上がったと発表した。
10代のメンタルヘルスの低下は、コロナのパンデミックによって強まったものの、それ以前から、人種や民族、都市部と農村部、社会経済的格差にまたがって見られた共通の傾向だという。...
全部読む
米紙
『ニューヨーク・タイムズ』によると、2019年には、青少年の13%がうつ状態を経験したと報告されており、2007年から60%増加している。これを反映するように、不安、気分障害、自傷行為で救急外来に連れて来られる青少年が急増しているという。米疾病対策予防センターは、10歳から24歳では、2000年から2007年にかけて安定していた自殺率が、2018年には60%近くも跳ね上がったと発表した。
10代のメンタルヘルスの低下は、コロナのパンデミックによって強まったものの、それ以前から、人種や民族、都市部と農村部、社会経済的格差にまたがって見られた共通の傾向だという。昨年12月には、米医務総監が珍しく公開の勧告を行い、青少年の間で「壊滅的な」精神衛生上の危機が発生していると警告した。また、多くの病院や医師団体も、精神疾患の増加、専門家や治療の選択肢の不足、こうした傾向に関する研究が進んでいないなどの理由で、子どもたちのメンタルヘルス問題は国家的緊急事態であると声を上げている。
カリフォルニア大学アーバイン校の心理学者キャンディス・オジャーズ氏は、「若者は教育水準が高く、10代での妊娠や薬物使用も少なく、事故や怪我で死亡することも少ない。多くの指標から見て、子供たちは素晴らしい成績を収め、成長している。しかし、不安、うつ、自殺といった非常に懸念すべき傾向が見られる。子ども達にとっては生きるか死ぬかの問題であり、我々はそれを解明する必要がある。」と語っている。
こうした危機は、しばしばソーシャルメディアの台頭に起因するとされているものの、この問題に関する研究はまだ限られている。連邦政府の調査によると、現代の青少年は睡眠及び運動不足の傾向があり、友人と直接会って過ごす時間も昔に比べて減っている。その結果、不安、うつ、強迫行為、自傷行為、さらには自殺などが増えていると推測されている。
米イリノイ州紙『シカゴ・サンタイムズ』によると、処方薬、市販薬、違法薬物を問わず、薬物を摂取して中毒になった6歳から18歳の子どもたちに関する、全米中毒データシステムの過去20年間のデータを分析した結果、2000年から2020年にかけて、特に10代前の子どもたちの間で、自殺につながる薬物摂取が急激に増加したことが判明した。思春期の子どもでは2.4倍、10歳から12歳の子どもでは4.5倍の増加率だった。
専門家たちは、いじめやその他の否定的な行動あるいは投稿が普通に閲覧できてしまうソーシャルメディアの普及を問題視している。一方で、若者は教室や運動場で成功しなければならないという強いプレッシャーにさらされていることも指摘されている。
なお、米テキサス州公共ラジオ局『KUT』によると、米国疾病対策予防センターの思春期・学校保健部門が4月、2021年1月から6月にかけて、全米の公立・私立の高校生7705人を対象に調査したところ、10代のほぼ半数が、調査を受ける前の12カ月の間に、ほとんど毎日、あるいは2週間以上続けて、一貫して悲しい気持ちや絶望的な気持ちになり、これまで行っていた活動をやめてしまったと回答した。この調査を担当したキャスリーン・イーシアー氏は、パンデミックが10代のメンタルヘルスの低下を後押ししたとコメントしている。
一方で、調査によると、学校内で他の人とつながっている、あるいは学校には自分を気にかけてくれる人、自分の幸せに関心を持ってくれる人、自分の成功に興味を持ってくれる人がいると感じている若者は、20年後に精神的な健康状態、薬物使用、暴力の経験、性的な健康面でより良い結果をもたらしていることが判明したという。
閉じる
ウクライナ戦争:深刻な環境破壊(2022/04/22)
ウクライナ戦争は、世界で最も工業化が進んだ、汚染された地域のひとつを舞台に繰り広げられている。ロシア軍の攻撃は、地域の人々が依存しているエコシステムに損害を与え、たとえ戦闘が終わったとしても、その影響は今後何世代にもわたって続く可能性があることが懸念されている。
仏ニュースサイト
『ヴォックスユーロップ』は、ロシアのウクライナ侵攻は、多数の民間人の犠牲者を出し、多くの人々に難民生活を強いていることに加え、ウクライナだけでなく、東ヨーロッパのより広い地域で、環境と公衆衛生に悲惨な結果をもたらすことが懸念されていると伝えている。戦争による環境破壊の影響は、生態系、肥沃な土壌、生活手段の喪失から、汚染や産業破壊まで、大規模かつ長期に渡る影響を及ぼすことが考えられる。...
全部読む
仏ニュースサイト
『ヴォックスユーロップ』は、ロシアのウクライナ侵攻は、多数の民間人の犠牲者を出し、多くの人々に難民生活を強いていることに加え、ウクライナだけでなく、東ヨーロッパのより広い地域で、環境と公衆衛生に悲惨な結果をもたらすことが懸念されていると伝えている。戦争による環境破壊の影響は、生態系、肥沃な土壌、生活手段の喪失から、汚染や産業破壊まで、大規模かつ長期に渡る影響を及ぼすことが考えられる。
すでにドンバス戦争の時から、数多くのウクライナおよび国際的な環境団体が、地域環境と公衆衛生への影響を警告していた。約4500の鉱山、冶金、化学企業があるドンバス地域は以前から汚染されており、「ヨーロッパで最も重大な人為的環境負荷」をもたらしている地域と見なされてきた。
ドンバス戦争が始まって以来、放棄された炭鉱は、同地域に有毒物質、時には放射性物質を流し込んでいる。坑道は互いにつながっているため、1つの坑道から汚染された水が他の坑道へも流出する可能性がある。また、一部の鉱山には、放射性廃棄物が含まれていると見られている。こうした鉱山で洪水が発生した場合、汚染された水が地下水と混ざり合い、飲料水を汚染するのではないかという懸念が持たれている。
オランダの平和団体PAXやイギリスの紛争環境観測所など多くのNGOが、ロシアがウクライナ全土の原子力・水力発電所、燃料パイプラインや貯蔵庫、その他の産業インフラを攻撃していると報告している。こうした攻撃は、深刻な人的被害をもたらすだけでなく、都市環境を破壊し、劇的に汚染するため、この戦争の人的被害を長引かせ、深化させることになる。
現在、ウクライナでは、60億トンを超える有毒廃棄物を保管する465の貯蔵施設が、事故や意図的な火災による被害を受けるリスクにさらされている。多くの貯蔵施設は水域から数メートル離れた場所にあり、町の近くにもある。故障または破壊された場合は、ロシア、モルドバ、ベラルーシも流れるウクライナの主要河川の汚染につながる可能性が懸念される。
米紙『ニューヨーク・タイムズ』は、ウクライナの戦争でロシア軍はすでに国内の自然保護地域の3分の1以上に立ち入り、軍事行動を行い、その生態系は脆弱になっていると伝えている。自然保護地域は、さまざまな希少種や絶滅危惧種さえ含む渡り鳥の生息地となっている。
同紙は、世界で最も重要な生態系に影響を与える「戦争は破壊行為である」と伝えている。1950年から2000年の間に、紛争の80%が生物多様性にとって大切な場所で起こった。ベトナムでは、森林を「間引く」ための枯葉剤の散布が長期的な被害をもたらしている。第一次世界大戦の主要な戦場であったベルギーでは、2011年の調査で土壌から高濃度の鉛と銅が検出されている。
また、戦争は経済的・食料的不安を引き起こし、人々は「生存のために天然資源に依存するようになる」という。モザンビークでは15年間の内戦で、シマウマ、ゾウ、バッファローなど大型草食動物9種の個体数の9割が姿を消した。
稀に人間の争いが自然を保護することもあるという。最も顕著な例は、北朝鮮と韓国の間の軍事境界線である。人間が立ち入ることができないため、希少な動植物の保護区となっている。しかし、このようなプラスの効果は一時的なものであることもある。ニカラグアの大西洋岸では、住民の逃亡により森林が回復したが、帰還後の森林伐採により、それまでの増加分の2倍の森林が破壊された。
専門家たちは、ウクライナでは、紛争終結直後から環境保全策を検討することが急務になると警告している。
閉じる
その他の最新記事