先月国民から尊敬されていた前国王の死去で国の団結の柱を失い悲しみ喪に服す様子が伝えられていたタイの王宮当局によると、ワチラロンコン皇太子が11日、滞在先のドイツからタイに帰国し公式行事などに参加する予定だという。政府はこれまで息子である皇太子が来月1日に新国王に即位する方向で準備が進んでいる(正式な即位は国王の火葬後のため1年先)と説明していたが国王死去後も海外へ再渡航し人気が今一つの皇太子に代わり妹のシリントーン王女が即位するのではとの噂もあったが、皇太子の帰国により、その懸念が払しょくされるとみられる。また先月国王の死去により30日間(今月14日まで)喪に服すため自粛された広告費は昨年同月比4.5割減の約140億円となるという。
11月11日付豪
『豪ヤフーニュース』(AFP通信引用)は「タイ皇太子がタイ入り」との見出しで以下の様に報道している。
タイ王宮当局によると 先月の父親であるプミポン国王死去の約2週間後に渡欧していたワチラロンコン皇太子が金曜に帰国した。政府公式行事や大学の卒業式の主賓を務めたり、イスラム教徒が多数派の南部での文化行事に出席する予定だが国王即位の日程は未定だという。ワチラロンコン皇太子は第一位後継者候補であるが、「国民と共に喪に服したい」と、即位延期を申し出て周囲を驚かせた。前国王ほどの人気が得られていないことから皇太子は南ドイツに拠点をもつ。
タイの法律では議会がまず新国王を宣言し、前国王の火葬後任命される。政府は国王後継のスケジュールを発表していないが、いずれは皇太子が国王に即位すると公言し後継を疑問視する声を押さえている。タイでは厳しい王室不敬罪があるため王室やその役割について公けに議論することは出来ない。タイ国内のメディアは15年の禁固刑が科せられる不敬罪に抵触しないよう自主規制している。
30日の喪中は今月14日にあけるが、公務員その他は前国王の火葬まで1年間の喪に服することとなる。
11月14日付インドネシア
『ジャカルタポスト』(ネーション引用)は「タイ国王死去で約1.3億ドルの広告中止に」との見出しで次のように報道している。
先月13日にタイでは国王が死去し、推定46億バーツ(1.29億米ドル)相当の広告宣伝が先月キャンセルされたといい、昨年同月の広告費102億バーツの45%にもあたる。メディア調査大手は先月の広告費が56億バーツだったと報告している。国王死去によりタイ政府は30日間喪に服するためメディア配信各社に宣伝広告の自粛を勧告し、コンサート等のイベントの中止、エンタメ関連番組の自粛放送への配慮を求めていた。広告自粛企業にはコカコーラ、トヨタ、テスコ・ロータス、サムソン(携帯ユニット)、いすゞなどがあった。
メディア代理店協会は今年の広告費は昨年の1割減と予測しているという。テレビの宣伝は昨年比14%減、ラジオは6.5%減、新聞は19%減、雑誌では26%減、 街頭広告(ポスター等)は8%減だった。一方収益増が見込まれるのは、オンライン広告で30%増見込み、交通機関で11.7%増、映画広告は3.2%増とみられる。
11月12日付米
『インターナショナルビジネスタイムズ』は「タイのワチラロンコン皇太子が噂を鎮めるため帰国」との見出しで以下のように報道している。
タイのワチラロンコン皇太子は、国王即位任命まで数週間を残し、拠点のドイツから帰国、プミポ前国王死去後渡独したことで起きた(即位はないのではないかという)あらぬ噂を鎮めた。正式な即位は喪が明ける1年後となるのだが、来月1日の任命が報道されている。プミポン前国王ほどの尊敬を集めずほとんどを海外で過ごすため、妹のシリントーン王女の任命があるのではないかと疑問視されていたが、軍事政府はそのような疑問の声を打消しワチラロンコン皇太子が後継となることをすぐさま宣言していた。
政府はここ数年数百万ドルをかけて皇太子のイメージアップを図っており、「尊敬し皇太子を御守りせよ」と呼びかけている。
閉じる
今年末任期を迎える国連のパン・ギムン(潘基文)事務総長の後任として、前国連難民高等弁務官で元ポルトガル首相のアントニオ・グテレス(1995年~2002年)が理事国での支持率でトップとなり、木曜、193か国加盟の国連総会で第9代の国連事務総長に正式任命されることとなった。これまで安全保障理事会では非公開の投票が繰り返され、同氏は最多の支持を集めていた。安保理は今週東欧諸国や女性を含む10数名の候補者から、常任理事国5か国の拒否権を行使できる方法で投票を行ったところグテレス氏は東欧諸国からの総長選出を推すロシアからも支持を受け、全会一致で選出された。今回、女性総長選出要望へのプレッシャーがある中、より開かれた評決とするため、初めて総会で選挙形式のキャンペーンスタイルがとられた。グテレス氏は2005年から2期10年間国連の難民高等弁務官に就任、世界各地で難民問題に取り組んだ豊富な経験があり難民問題対応が期待されている。中東紛争、ロシアと西欧の緊張が高まる中、国連の難題を引き継ぐこととなり、その手腕が問われることとなるだろう。
10月5日付
『ロイター通信』は「ポルトガルのグテレス氏、次期国連総長へ」との見出しで次のように報道している。
・理事国15か国の代表、ロシアのヴィタリー・チュルキン国連大使が、全会一致でグテレス氏を推薦するとした。2期務めた韓国の潘基文(パン・ギムン)現事務総長が今年末退職するのに代わり就任、来年1月から任期5年の予定。
・安保理は今年7月より非公開の投票を行っており、各理事国には「賛成、拒否、意見する権利」がある。
・同氏は今週水曜の投票において13か国の賛成及び2か国の「異議なし」の票を得てトップに選ばれた。「異議なし」票を投じたのは常任理事国(ロシア、中国、米国、フランス、英国)の一つだという。安保理は慣習に従いこの密室での決議を採用する意向。
・サマンサ・パワー米国大使は、「最後には経験、ビジョン、地域に精通した能力のある候補が残った。国際的危機の中、国連の団結を促すかじ取りを務め、適切な対策を取れる人。」と述べている。
・今年4月グテレス氏が総会で演説した際には、2時間の集会で英語、フランス語、スペイン語を駆使し、自分は総長に相応しく「人類の苦難への最良の対策は国連組織にある」と述べている。敬虔なカトリック教徒で、国連難民高等弁務官を10数年勤めたのは「大変な名誉だが、人類の苦境は全く解決していない事に大変フラストレーションを感じる」とし、解決策は常に政治にあるとしている。国連総長は、「傲慢ならず慈悲深く、講釈を足れない、世話人、仲介者、善良な調停者、平和の使者」である議長と表現している。
・これまで13名が総長候補に挙がっていた。水曜の投票前に3名が辞退。候補のうち7人は、女性総長を推す市民団体もあった。今回の男性での決定に、女性候補は真剣に考慮されていない証拠だとして、男女平等推進派は最悪の結果としている。
・「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の、ルイシャルボノー国連監督は、新総長が指名の期待に応えられるかは、シリア、イエメン、南スーダン、難民問題、気候変動等の難問への対処が試金石となる、と述べている。
10月6日付
『ヤフーニューズ』は以下のように報道している。
・次期国連総長に推されたグテレス氏は、前投票で、15ヶ国の理事国中13票を獲得。 常任理事国5か国のうち拒否権行使はなかった。理事国代表のロシア大使は同氏が全会一致で決まったとした。理事会は木曜に同氏を公式投票で選出する意向。グテレス氏は改革と平和と人権促進を誓った。
・拒否権をもつ常任理事国は、色のついた投票紙を使用、はじめて常任5か国が候補阻止をしたかを明確化できるようにした。過去5回の非公式投票でトップ、これほど早く満場一致がえられるとは大使らは予測していなかった。
・国の元トップが国連総長になるのは初めて。これまでは大臣職まで。多くは理事国の非公式投票で決まっていた。今回の選出は、総会以前に公聴会を開きよりオープンな選出方法が新たに採用された。
・フランスのフランソワドラットル大使は、4か国語を操るグテレス氏選出は「国連にとり良い兆し」とし、英国のマシュー・ライクロフト大使は同氏は「力強く有能な総長」と述べた。
・ポルトガルのマルセロ・レベロ・デ・ソウザ大統領は、同氏を、「秀逸で、世界と国連、そしてポルトガルにとり大変望ましい事。」と述べている。
・ヒューマンライトウォッチの国連監督は、同氏は「大きな試練の今、人権に対し抜本的な新しい風を吹かせることができる」とする一方、拒否権を回避できるかにより試されるだろうとした。
・ブルガリアのイリナ・ボコヴァ大使を含め、10名の候補が挙がっていた。元世界銀行副総裁と世界文化遺産(UNESCO)代表ともに、ロシアなど2国の常任理事国の支持が得られず敗退。
・アルゼンチンの外相も注目を浴びた候補だったが、1票の拒否権で敗退、スロバキア外相も2票の拒否。ニュージーランドの元首相は3票の拒否、セルビア元外相、マケドニア元外相は3票の拒否。スロベニア外相は4票の拒否で敗退。
同日付仏
『フランス24』(AP通信引用)は以下のように報道している。
・伝統的に、国連総長はアジア、アフリカ、ラテンアメリカ、ヨーロッパと地域ごとで輪番制であった。ロシアを含む東欧諸国は総長を輩出していないと主張し、次こそはと言っていた。また女性総長も過去例がなく、加盟各国や他の団体からは女性総長選出を希望する声があった。
・今回ポルトガルのグテレス氏は西欧諸国からの選出であるにもかかわらず、6つの調査投票で一位を獲得。
10月5日付英国
『インターナショナルビジネスタイムズ』は「元国連連難民高等弁務官アントニオ・グテレスが新国連総長」との見出しで以下のように報道している。
・元ポルトガル首相が全会一致で国連総長に選出された。10数年間、国連連難民高等弁務官を務めた同氏は10年総長を務めた現職、潘基文(パン・ギムン)氏に代わる。正式拒否権行使は翌日となるが、水曜ニューヨークでの予備投票で決定。
・難民問題やシリア、イエメン、リビア紛争、ロシアと西欧の緊張が高まる中、国連の難題を引き継ぐ。
・同氏の難民問題での経験が理事会での決定を左右したとされる。東欧代表を推すと見られたロシアによる同氏承認に皆が驚かされた。一方で、米国、英国は女性候補を推していた。
閉じる