米中間緊張が高まる中、中国側要請(?)で米中外交トップ間ハワイ会談設定【米・フランスメディア】(2020/06/17)
米中両国関係は、今年に入ってからだけでも、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行、香港に関わる新たな反民主化法案、更には米国の人種差別問題再燃等々、お互いが相手を責め、また、マスメディアも対立を煽る論調で報じていることから、一触即発の緊張感が漂っている。そうした中、米国側の責任追及の手を緩ませたいと期待してか、中国側の要請で米中外交担当トップが急遽会談することになった。ただ、会談予定は一日だけで、大きな成果は期待できないものの、ヒートアップした双方の熱冷まし効果はあるかも知れない。
6月15日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「香港及び軍縮問題が米中会談の議題」
中国国営メディアが、米中間の対立を煽る最中、米中の外交担当トップが秘密会談を持つことになった。
6月17日にハワイで開かれることになった両国会談には、マイク・ポンペオ国務長官(56歳)と楊潔篪(ヤン・チエチー、70歳)中央外事活動委員会弁公室主任が出席予定である。
6月22日には、米ロ軍縮会議がウィーン(オーストリア)で開催される予定であることから、米国側は中国にも同会議への参加を促すものとみられる。...
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6月15日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「香港及び軍縮問題が米中会談の議題」
中国国営メディアが、米中間の対立を煽る最中、米中の外交担当トップが秘密会談を持つことになった。
6月17日にハワイで開かれることになった両国会談には、マイク・ポンペオ国務長官(56歳)と楊潔篪(ヤン・チエチー、70歳)中央外事活動委員会弁公室主任が出席予定である。
6月22日には、米ロ軍縮会議がウィーン(オーストリア)で開催される予定であることから、米国側は中国にも同会議への参加を促すものとみられる。
米高官が『VOA』に語ったところによれば、米国は中国が進める香港国家安全法制定を非難する一方、ジョージ・フロイド氏惨死問題より明らかな人種差別を放置しているのはダブルスタンダード(手前味噌の対応)だと中国高官がトランプ政権を激しく非難していることから、米中会談に“乗り気ではなかった”が、中国側からの要請に応えることになったという。
リック・スコット上院議員(フロリダ州選出共和党員)は『VOA』のインタビューに答えて、“中国共産党が、透明性を確保し、米中貿易に関わる第一段階の約束を堅持した上、人権蹂躙・米国知的財産の窃盗・南シナ海での軍事拠点化・香港における民主的権利の剥奪・台湾への脅し等々を止めない限り、米国にとって信頼できるパートナーだとはとても認めようがない”と強調している。
今回の米中会談は、米国が中国による香港の一国二制度を危うくする香港国家安全法制定を思い止まらせようとしている最中に予定されたものだが、大方の見方は、中国が米国の言いなりになることなど考えられないとする。
6月15日にポンペオ国務長官と電話会談した欧州連合(EU)の、ジョセフ・ボレル上級外交・安全保障担当委員(73歳、スペイン人政治家)は、中国にとって一番関心があるのは、香港問題より如何にして疲弊した経済を回復させるかだとした上で、“EUは、法と秩序を最重要とする観点から、米国の主張を支援する”とコメントした。
なお、米中間の外交・安全保障問題協議は、2018年11月9日に開催された米中外交・安全保障対話以来開かれていない。
そこで専門家の何人かは、今回の米中ハワイ会談で両国間の緊張緩和はほとんど望めないとみている。
オバマ政権時代に国際交流部門責任者であったブレット・ブルーエン氏は『VOA』のインタビューに答えて、米国が問題視している中国側問題は、COVID-19感染流行に関わる初期対応、米中貿易不均衡、香港反民主化、台湾問題そして南シナ海と多岐にわたるが、“中国が今回の会談で臨むのは、香港の管理強化を見逃すこと、更に言えば、最大の関心事として、COVID-19でこれ以上中国を責めないよう米国側に求めるものとみられる”とコメントした。
更に同氏は、“トランプ大統領の再選が危ういことから、敵に塩を送る意味で、中国側が新たに数十億ドル(数千億円)相当の米産品を買い付ける提案をすることで、ホワイトハウスに対して、中国への責任追及を弱めるよう要望する”とみている。
一方、米空軍元准将のロバート・スポールディング氏は、“中国が最も関心を寄せているのは経済問題”だとし、“中国の金融システムは崩壊寸前で製造業は中国から逃避しつつあるから”だとコメントした。
なお、来週(6月22日)、米ロ国防トップによる軍縮会議がウィーンで開催されるが、マーシャル・ビリングスリー軍備制限特命全権大使は、“中国も参加するよう招いているが、(仮に参加しても)中国が誠実に交渉に臨むかは疑問”だとツイートしている。
トランプ政権はかねてより、米ロ両国の戦略核兵器を半減させることを謳った、2021年2月に失効する新戦略核兵器削減条約(New START、2011年2月締結)の更新を強く表明しているが、同政権としては、これに中国の参加を望んでいる。
同日付フランス『AFP通信』:「両国間緊張の中、米中外交トップが秘密会談」
香港『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙報道によると、関係筋の話として、ポンペオ国務長官と楊潔篪外交担当トップが今週、ハワイで秘密会談を持つことになったという。
米『ポリティコ』政治専門ニュースや『CNN』も報じていて、場所は真珠湾至近のヒッカム空軍基地(ホノルル)だとする。
中国国営『環球時報』報道では、中国外交部(省に相当)の趙立堅(チョウ・リーチャン)報道官は、“事態が判明すれば更に説明する”とした上で、“外交ルートを通じて二国間で協議を継続している”とのみコメントしたという。
トランプ大統領はかねてより、習近平(シー・チンピン)国家主席とは盟友関係にあるとしているものの、政権の公式対応としては、共和党からの突き上げもあり、COVID-19、香港国家安全法、更には南シナ海覇権問題等より、中国を敵視していることから、今回の外交トップ会談で大きな進展が得られるとはみられない。
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香港当局;中国政府の後ろ盾を得て6月4日天安門事件追悼集会を徹底的に排除【米・フランスメディア】(2020/06/04)
6月4日は、忌まわしい天安門事件発生から31周年に当たる。過去30年、香港民主化活動家らは、ロウソクに火を灯して同事件での犠牲者を追悼してきた。しかし、香港当局は今回、新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大防止対策を大義名分として、一切の集会を禁止すると発表した。先週、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で香港の治安を強化する「香港国家安全法」が成立したこともあって、香港当局としては、更に強硬に民主化運動徹底取り締まりに当たる意向とみられる。
6月1日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「香港当局、天安門事件追悼集会を全面禁止」
香港警察は6月1日、毎年6月4日に開催されてきた天安門事件追悼集会について、今年は全面禁止とすると発表した。
香港では過去30年、香港市民愛国民主運動支援連合会(注1後記)を中心に、ロウソクに火を灯して静かに同事件犠牲者を追悼する集会が開かれてきていた。
香港政府はこの発表以前に、COVID-19感染拡大防止対策の一環として、大人数での集会を禁止し、その適用を6月4日まで延長すると発表していた。...
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6月1日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「香港当局、天安門事件追悼集会を全面禁止」
香港警察は6月1日、毎年6月4日に開催されてきた天安門事件追悼集会について、今年は全面禁止とすると発表した。
香港では過去30年、香港市民愛国民主運動支援連合会(注1後記)を中心に、ロウソクに火を灯して静かに同事件犠牲者を追悼する集会が開かれてきていた。
香港政府はこの発表以前に、COVID-19感染拡大防止対策の一環として、大人数での集会を禁止し、その適用を6月4日まで延長すると発表していた。
そこで同連合会は、香港市民に対して、当局の取り締まりに遭わないよう、少人数で集まったり、自宅でロウソクに火を灯したり、あるいは、オンライン上で繋がり、それぞれ同事件の犠牲者を追悼する案を提案している。
同連合会広報担当の蔡燿昌氏(リチャード・ツォイ、52歳、政治家)は『VOA』のインタビューに答えて、当局の禁止条項に触れないよう、各々8人ずつの少人数に分かれて、いつものビクトリアパーク(香港島北東部の公園、1957年落成)でロウソク追悼を行い、またその映像をオンライン配信する意向だと表明した。
同氏は更に、香港における反体制運動を徹底的に取り締まるための「香港国家安全法」が、5月28日に全人代で可決成立していることから、“6月4日に行う同事件追悼集会の開催は今年が最後になる恐れがある”と付言した。
何故なら、同法によって香港に設けられる中国中央政府直轄治安局が、集会やデモ行為の取り締まり、更には言論統制を徹底してくると考えられるからだという。
また、同連合会の李卓人(リー・チューヤン、63歳、政治家・社会活動家)事務局長は、“来年以降の同事件追悼集会は禁止される恐れがある”とした上で、“同集会でアピールしている「一党独裁終焉」というスローガンも、同新法下で国家転覆容疑と見做されるだろう”と懸念を表明した。
アムネスティ・インターナショナル東・東南アジア地域担当のジョシュア・ローゼンツェイグ副局長は、“ロウソクに灯して静かに同事件の犠牲者を追悼することを「違法」とするのは明らかに人権侵害行為”だと強調した。
なお、香港警察は既に、5月31日に予定されていたデモ行為を禁止しているが、民主活動家らは、“COVID-19感染防止を隠れ蓑にして、如何なる集会も禁止し、また言論の自由を奪おうとしている”と非難している。
一方、天安門事件の犠牲者であるが、中国当局は約300人(ほとんどが公安警察官で学生は僅か23人)と発表しているが、当時のアラン・ドナルド英国大使は事件発生翌日の6月5日に本国に送った緊急報告の中で、少なくとも1万人が犠牲になっていると言及している。
6月3日付フランス『ラジオ・フランス・インターナショナル(フランス外務省傘下のラジオ放送局)』:「香港での天安門事件追悼式典取り締まりの不吉な影」
香港警察は、“COVID-19感染拡大防止対策の一環で、ビクトリアパークでの集会を禁止する”と発表した。
6月4日には毎年、31年前に発生した天安門事件の犠牲者を追悼するロウソク集会が開催されてきていたが、初めて中止を余儀なくされることになる。
これまで中国中央政府は、香港での追悼集会を黙認してきた。
しかし、昨年の同集会は、香港当局が制定を意図した「逃亡条例(注2後記)」反対運動が7ヵ月続いた最中であり、特に大多数の参加者を集めていた。
フランス『AFP通信』が集会主催者から得た香港警察の禁止通達文書には、“集会を許可することによって、香港市民の健康と生命を脅かす恐れが生じるため”と記されているという。
香港では先週まで、中国全人代が採択した「香港国家安全法」に反対する集会やデモ行為が頻発していた。
(注1)香港市民愛国民主運動支援連合会:1989年5月設立の、当時中国で発生していた民主化を求める学生運動を支援するために立ち上げられた団体。天安門事件発生後は、中国本土から逃げてきた活動家の支援、中国当局に対する同事件の責任追及に注力する他、毎年6月4日に夜を徹しての追悼集会を主催。
(注2)逃亡条例:正式には2019年逃亡犯条例改正案。容疑者の身柄引き渡し手続きを簡略化し、中国大陸、マカオ、台湾(中華民国)にも刑事事件の容疑者を引き渡しできるようにするという内容。香港の世論は反対寄りであり、2019年6月9日に行われた3度目の反対デモでは、人口の約7分の1にあたる103万人が参加。反対運動に抗しきれず、最終的に当局は9月4日に同条例案撤回を正式決定。
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