中国;燃料用炭価格高騰及び供給量不足による電力供給不安問題で習国家主席に逆風(2021/02/21)
中国は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題をいち早く収束に向かわせ、既に景気回復途上にあり、昨年半ばのマスク・医療用具品外交に続いて、今年にはワクチン外交で以て国際社会の支持を取り付けようとしている。しかし、国内では目下、習近平国家主席(67歳)に思わぬ逆風が吹きつけている。それは、発電用燃料のみならず各家庭での暖房用に主として使用している燃料用炭が、需給ひっ迫による価格高騰を引き起こしているため、反指導部派や一般市民からの反発・苦情が日に日に増しているからである。
2月19日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「中国国内炭の供給ひっ迫で価格高騰及び停電危機が発生」
厳寒な冬季を迎えている中国では、発電用や暖房用の燃料炭価格が高騰し、一般市民の生活に深刻な打撃を与えている。
12月になって気温が下がっただけでなく、COVID-19感染問題がほぼ収束して経済が動き出したこともあって、中国の発電用燃料の約70%を占める燃料用炭の供給がひっ迫し始めたからである。...
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2月19日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「中国国内炭の供給ひっ迫で価格高騰及び停電危機が発生」
厳寒な冬季を迎えている中国では、発電用や暖房用の燃料炭価格が高騰し、一般市民の生活に深刻な打撃を与えている。
12月になって気温が下がっただけでなく、COVID-19感染問題がほぼ収束して経済が動き出したこともあって、中国の発電用燃料の約70%を占める燃料用炭の供給がひっ迫し始めたからである。
地元メディア報道によれば、富裕層でも暖房用石炭を容易に買えないという。
そして、12月初めから電力使用量の削減や停電の事態が起こり始め、一級都市である北京や上海も光源を失って薄暗くなっている。
また、南東部の湖南省(フーナン)、江西省(チアンシー)等の工業都市を抱える省では、強制的な“省電力措置”が講じられている。
今回の燃料用炭供給不足の背景には、中国政府による国内石炭産業保護のために輸入炭を削減したこと、また、国内炭産業での汚職取り締まり問題が地方自治体内でくすぶっていること等、複数の要因が挙げられる。
エネルギー政策を司る中国国家発展改革委員会(2003年設立)の趙辰昕(チャオ・チェンシン)秘書長が12月に、“電力供給に問題は発生していない”と市民に向けて訴えても、現実的に石炭在庫が払底し、節電や停電等の問題を目の当たりにして、疑念が強まるばかりである。
2019年に中国は、世界の総石炭生産量の半分近くとなる37億4,500万トンを生産していて、そのうち内モンゴル自治区では国内最大となる10億トンを生産した。
しかし、国際エネルギー機関(IEA、1974年設立)の資料によると、中国政府が目標値としている国内炭価格は1トン当たり77~88ドル(約8,100~9,200円)とされているが、『ロイター通信』報道では、COVID-19感染問題が深刻だった4月末~5月初めの価格が72ドル(約7,600円)だったにも拘らず、12月4日時点では99.23ドル(約10,400円)と38%も急上昇しているという。
国営メディアの『新華社通信』は、2ヵ月後の今年2月3日時点の価格が98.52ドル(約10,300円)と若干下がったと報じているが、依然高止まりの状況である。
2月12~18日の春節期間や若干暖かくなったことによる石炭需要減から、石炭価格は少々下がるとみられるが、専門家は、春節後の経済活動再開による需要増や在庫量不足に伴い、今後とも石炭価格は上昇していくとみている。
中国は、毎年40億トン程石炭を消費していて、中国税関総署(1949年設立)によれば、2億7千万トン余りを輸入しているが、そのうちオーストラリア炭が7,000~8,000万トンを占めるという。
しかし、中国政府は、オーストラリア政府がCOVID-19発生地問題で中国政府に難癖をつけたこと等を理由として、同国からの石炭輸入を制限し始めていたが、昨年12月14日、ついに輸入禁止とする措置を講じている。
『ウォールストリート・ジャーナル』紙は2月10日、“中国の石炭需要家は、オーストラリアよりも距離が遠い産炭国から高値で輸入せざるを得ず、昨年半ばより84%もコスト高となっている”と報じた。
ただ、台湾のアジア太平洋平和基金の董立文(トン・リーウェン)執行長(CEO)は『VOA』のインタビューに答えて、“オーストラリア炭は中国総輸入量の僅か2%弱であるので、中国の石炭価格上昇に影響を与えるのは限定的であり、むしろ国内の特殊事情が現下の石炭価格上昇をもたらした”と分析している。
同執行長によれば、主要産炭省である山西省(シャンシー)及び内モンゴル自治区の石炭産業に対する汚職取り締まりが深刻な石炭生産問題を引き起こしているという。
例えば、内モンゴル自治区では2020年1月に汚職取り締まりが始まり、当局は2000年まで遡って捜査しているという。
『新華社通信』は、昨年2月までで、地方政府高官及び産炭会社重役ら9人が既に拘束されて取り調べを受けていると報じている。
一方、中国アジア太平洋精鋭交換協会の王智晟(ワン・チーション)秘書長は、今回の電力供給制限問題で、習指導部が地方政府への影響力を失いつつあるのではないかと市民が疑い始めていると分析している。
そして同秘書長は、3月に開催される二つの大きな会議-全国人民代表大会(全人代、1954年設立、立法府に相当)及び中国人民政治協商会議(政協、1949年設立、中国共産党、各団体・各界の代表による全国会議)-において、反指導部派がこれらの問題で習主席の足を引っ張ろうと画策する可能性があるとする。
なお、同秘書長は、“両会議を通じて、習主席降ろしまで話は進まないとは思うが、エネルギーや電力危機がこれから更に深刻化すると、同主席にとっては大きな信用失墜につながる恐れがある”と分析している。
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米国;南シナ海人工島建設に携わった中国企業に続いてカンボジアのリゾート開発に関わった中国企業にも制裁【米・カンボジアメディア】(2020/09/21)
既報どおり、今秋の大統領選再選を目指して、トランプ政権は対中強硬政策を次々に打ち出している。そして今度は、南シナ海の岩礁上に築かれた人工島建設工事に携わった中国企業に続いて、カンボジアのリゾート開発に関わった中国企業に対しても制裁を科すと発表した。
9月19日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「米国、カンボジアのリゾート開発に関わった中国企業に制裁」
米財務省は9月15日、カンボジアのリゾート開発のために、そこに住む村人らを強制的に退去させて38億ドル(約4千億円)の贅沢なカジノ施設を建設したとして、同プロジェクトを推進した中国企業に制裁を科すことを決めた。
中国の天津ユニオン・ディベロップメント・グループ(TUDG、1993年設立の不動産開発会社)が、2018年に自然豊かなコ・コング州(南西端のシャム湾に面した州)に建設したダラ・サコール・シーショア・リゾートで、“信頼筋の情報”によると、国際空港及び港湾を有し、中国軍の寄港が可能とされているという。...
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9月19日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「米国、カンボジアのリゾート開発に関わった中国企業に制裁」
米財務省は9月15日、カンボジアのリゾート開発のために、そこに住む村人らを強制的に退去させて38億ドル(約4千億円)の贅沢なカジノ施設を建設したとして、同プロジェクトを推進した中国企業に制裁を科すことを決めた。
中国の天津ユニオン・ディベロップメント・グループ(TUDG、1993年設立の不動産開発会社)が、2018年に自然豊かなコ・コング州(南西端のシャム湾に面した州)に建設したダラ・サコール・シーショア・リゾートで、“信頼筋の情報”によると、国際空港及び港湾を有し、中国軍の寄港が可能とされているという。
TUDGは同リゾート開発を、中国政府が主導している一帯一路経済圏構想の一環で建設されたものと発表していて、今回の米国措置に対して9月17日、カンボジア国営の『フレッシュ・ニュース』のインタビューに答えて、米財務省は“事実を無視”した上に勝手な話をでっち上げている、と非難した。
同社は、中国軍が同社施設を使用することなどあり得ないとし、カンボジアの高官がリリースしたいくつもの声明どおり、同国憲法によって他国軍隊への施設供与などは禁止されていると強調した。
しかし、マイク・ポンペオ国務長官は、ダラ・サコールは“中国軍の使用に供される”との確かな“信頼情報”があると表明している。
米財務省の制裁発表と同日の9月15日に同長官が発表した声明文で、“この事態はカンボジアの憲法を蔑ろにしているばかりか、カンボジアの主権並びに米同盟国の安全保障をも脅かすものだ”と言及している。
米政府はかねてより、同リゾートが中国海軍の使用に供される疑いがあると懸念を表明してきたが、カンボジア当局は何度もこれを否定している。
しかし、米財務省はTUDG制裁決定を発表した際、“同社の関係子会社がカンボジア住民から土地を収奪し、環境を破壊して住民らの生活を脅かしている”とした上で、“かかる開発は、カンボジアを中国軍の海外拠点及び中国人観光客の旅行先に仕立て上げる意図に他ならない”と断罪した。
米政府の糾弾によると、TUDGカンボジア子会社はフン・セン首相に近いクン・キム将軍の支援を得て事業を展開しており、同将軍が軍の権力を使って、同社がリゾート開発用の候補地を住民から収奪したという。
そこで米政府は2019年12月9日、同将軍及びその家族(妻と2人の子供)に制裁を科すことを決めている。
そして今回のTUDGへの制裁発表に当たって、スティーブン・ミニューシン財務相は9月15日、“TUDGは、ダラ・サコール・リゾート開発用の土地を獲得するためにカンボジア法人と偽って登録した後、同開発プロジェクト完工後にTUDG名義に戻し、現在も違法に事業を継続している”と非難した。
これに対して、在プノンペン中国大使館は9月16日、“米国の制裁決定は事実を無視した不当な措置である”とした上で、“カンボジアに進出している中国企業による合法的な投資に対する米国の一方的な措置は、同国市民の権利や利益を損なうばかりか、同国主権をも脅かすものだ”との反論声明を発表している。
一方、カンボジア人権擁護団体コ・コング州代表のホア・イン氏は『VOA』のインタビューに答えて、“同リゾート開発地の元の住民は皆漁師だが、TUDGが当初約束したのと異なり、シャム湾沿岸から遥か離れた土地に追いやられたため、漁業が継続できず非常に不満に思っている”とコメントした。
また、野党のカンボジア救国党のムー・ソチュア副代表は、米国の制裁決定を歓迎し、“カンボジア国内ではまだ一部としか言えないが、正しい司法判断が下された”と表明している。
同日付カンボジア『カンボジア・デイリィ』紙:「カンボジア国防相、米国によるカンボジア在中国企業への制裁は“不公平”と糾弾」
カンボジアのティア・バン国防相は9月18日、米政府が中国企業TUDGに対して、土地の収奪、人権侵害及び汚職を理由として制裁を科したのは不公平な措置だとした上で、同社の行為はカンボジア国内法に則って行われていると表明した。
米財務省は9月15日、国際人権擁護の責任に関わるマグニツキ-法(GMHRAA、注後記)に基づき、カンボジアのリゾート開発に関わったTUDGを人権侵害及び汚職行為を理由に制裁を科すことを決定している。
更に米政府は、同リゾート地の空港・港湾設備が、南シナ海領有権問題で中国と対峙している関係国への睨みを利かせるために、中国軍の使用に供される恐れがあるとの懸念を表明している。
(注)GMHRAA:2012年のオバマ政権下で制定された、人権蹂躙を犯した国、政府高官らに制裁を加えるための法律。元々は、2009年にロシア刑務所で非業の最期を遂げたロシア人弁護士セルゲイ・マグニツキ-の人権を蹂躙したロシア高官に制裁を加えるために立法化。その後、新疆ウィグル自治区での中国高官によるウィグル族人権侵害等にも適用されている。
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