フランスでは6月2日、約3ヵ月続いた都市封鎖措置が解除され、一部条件付きではあるが、カフェ、レストラン、公園、ビーチ等が利用できるようになり、元の生活が戻りつつある。そうした中、新たな問題を抱えてしまったのは、政府要請で急遽布製マスク増産態勢を取った衣料品業界である。1ヵ月ほど前まで、一般市民はもとより医療従事者のマスク不足が深刻化していたのに、現在ではアジア諸国から使い捨てマスクが大量に搬入されてきたことから、同業界が生産した布製マスクが売れなくなり、不良在庫を2千万枚も抱えてしまっている。
6月13日付
『AP通信』:「フランス、ウィルス禍軽減で急遽生産の大量のマスクが不良在庫化」
フランス国民はかつて、新型コロナウィルス(COVID-19)が猛威を振るっていた際、一般市民はもとより医療従事者が毎日必要とした感染予防マスクの供給不足という緊急事態に対応すべく、自社製品の生産を止めて、布製マスク生産に注力した衣料品業界やブランドメーカーを大絶賛していた。
エマニュエル・マクロン大統領も先月初め、“メイドインフランス”の布製マスクをデモンストレーションで着用し、国軍の厳しいテストにも通った感染防止対策に最適のマスク、しかもフランス国旗(赤、白、青)のリボン付き、を誇っていた。...
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6月13日付
『AP通信』:「フランス、ウィルス禍軽減で急遽生産の大量のマスクが不良在庫化」
フランス国民はかつて、新型コロナウィルス(COVID-19)が猛威を振るっていた際、一般市民はもとより医療従事者が毎日必要とした感染予防マスクの供給不足という緊急事態に対応すべく、自社製品の生産を止めて、布製マスク生産に注力した衣料品業界やブランドメーカーを大絶賛していた。
エマニュエル・マクロン大統領も先月初め、“メイドインフランス”の布製マスクをデモンストレーションで着用し、国軍の厳しいテストにも通った感染防止対策に最適のマスク、しかもフランス国旗(赤、白、青)のリボン付き、を誇っていた。
しかし、都市封鎖措置が解除されて、一時の危機的状況を脱した現在、急遽生産された当該布製マスク約2千万枚が売れ残って不良在庫化している。
何故なら、多くの生活用品販売店や消費者が、現在アジア諸国から大量に搬入されている安価な使い捨てマスクの方を選んでいるからである。
パリ南東部でニットウェア製造工場を営むシャンテクレア社のトーマス・デリーズ社長は『AP通信』のインタビューに答えて、政府は輸入制限を施し、かつ、欧州域内諸国と協力して欧州生産品の販売政策を導入すべきだと訴えた。
同社長は、“60万枚の売れ残った布製マスク在庫を抱えてしまって、このままでは経営に大打撃となる”と嘆いている。
また、流行下着製造のル・スリップ・フランス創業者のギュローム・ギボールト氏はフランス国営『ラジオ・フランス・インターナショナル』に対して、“一般市民はマスク需給バランスなど知る由もないので、政府が調整役を担うべき”だとコメントしている。
数百に上る織物・衣料品製造会社が、政府の要請に応えて、自社製品の生産ラインを布製マスク生産に変更しているが、ある会社は、政府経由のパッキング・販売手続きが非常に遅く、市場が必要な時にタイムリィに供給できなかったと嘆いている。
フランス織物産業組合が6月初め、布製マスクの供給過剰リスクにつき初めて警告していた。
しかし、衣料品製造会社等は、生産工程をスイッチひとつで簡単に切り替えられる訳ではない。
従って、これらマスク生産に携わった業界としては、政府側が5月中旬までを目処に、市場や地方自治体、あるいは事業会社が必要とするマスクを十分供給できるよう、緊急措置としてマスク生産要請をしてきた以上、政府が不良在庫の販売や補填等の補償をすべきだと訴えている。
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6月4日は、忌まわしい天安門事件発生から31周年に当たる。過去30年、香港民主化活動家らは、ロウソクに火を灯して同事件での犠牲者を追悼してきた。しかし、香港当局は今回、新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大防止対策を大義名分として、一切の集会を禁止すると発表した。先週、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で香港の治安を強化する「香港国家安全法」が成立したこともあって、香港当局としては、更に強硬に民主化運動徹底取り締まりに当たる意向とみられる。
6月1日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「香港当局、天安門事件追悼集会を全面禁止」
香港警察は6月1日、毎年6月4日に開催されてきた天安門事件追悼集会について、今年は全面禁止とすると発表した。
香港では過去30年、香港市民愛国民主運動支援連合会(注1後記)を中心に、ロウソクに火を灯して静かに同事件犠牲者を追悼する集会が開かれてきていた。
香港政府はこの発表以前に、COVID-19感染拡大防止対策の一環として、大人数での集会を禁止し、その適用を6月4日まで延長すると発表していた。
そこで同連合会は、香港市民に対して、当局の取り締まりに遭わないよう、少人数で集まったり、自宅でロウソクに火を灯したり、あるいは、オンライン上で繋がり、それぞれ同事件の犠牲者を追悼する案を提案している。
同連合会広報担当の蔡燿昌氏(リチャード・ツォイ、52歳、政治家)は『VOA』のインタビューに答えて、当局の禁止条項に触れないよう、各々8人ずつの少人数に分かれて、いつものビクトリアパーク(香港島北東部の公園、1957年落成)でロウソク追悼を行い、またその映像をオンライン配信する意向だと表明した。
同氏は更に、香港における反体制運動を徹底的に取り締まるための「香港国家安全法」が、5月28日に全人代で可決成立していることから、“6月4日に行う同事件追悼集会の開催は今年が最後になる恐れがある”と付言した。
何故なら、同法によって香港に設けられる中国中央政府直轄治安局が、集会やデモ行為の取り締まり、更には言論統制を徹底してくると考えられるからだという。
また、同連合会の李卓人(リー・チューヤン、63歳、政治家・社会活動家)事務局長は、“来年以降の同事件追悼集会は禁止される恐れがある”とした上で、“同集会でアピールしている「一党独裁終焉」というスローガンも、同新法下で国家転覆容疑と見做されるだろう”と懸念を表明した。
アムネスティ・インターナショナル東・東南アジア地域担当のジョシュア・ローゼンツェイグ副局長は、“ロウソクに灯して静かに同事件の犠牲者を追悼することを「違法」とするのは明らかに人権侵害行為”だと強調した。
なお、香港警察は既に、5月31日に予定されていたデモ行為を禁止しているが、民主活動家らは、“COVID-19感染防止を隠れ蓑にして、如何なる集会も禁止し、また言論の自由を奪おうとしている”と非難している。
一方、天安門事件の犠牲者であるが、中国当局は約300人(ほとんどが公安警察官で学生は僅か23人)と発表しているが、当時のアラン・ドナルド英国大使は事件発生翌日の6月5日に本国に送った緊急報告の中で、少なくとも1万人が犠牲になっていると言及している。
6月3日付フランス『ラジオ・フランス・インターナショナル(フランス外務省傘下のラジオ放送局)』:「香港での天安門事件追悼式典取り締まりの不吉な影」
香港警察は、“COVID-19感染拡大防止対策の一環で、ビクトリアパークでの集会を禁止する”と発表した。
6月4日には毎年、31年前に発生した天安門事件の犠牲者を追悼するロウソク集会が開催されてきていたが、初めて中止を余儀なくされることになる。
これまで中国中央政府は、香港での追悼集会を黙認してきた。
しかし、昨年の同集会は、香港当局が制定を意図した「逃亡条例(注2後記)」反対運動が7ヵ月続いた最中であり、特に大多数の参加者を集めていた。
フランス『AFP通信』が集会主催者から得た香港警察の禁止通達文書には、“集会を許可することによって、香港市民の健康と生命を脅かす恐れが生じるため”と記されているという。
香港では先週まで、中国全人代が採択した「香港国家安全法」に反対する集会やデモ行為が頻発していた。
(注1)香港市民愛国民主運動支援連合会:1989年5月設立の、当時中国で発生していた民主化を求める学生運動を支援するために立ち上げられた団体。天安門事件発生後は、中国本土から逃げてきた活動家の支援、中国当局に対する同事件の責任追及に注力する他、毎年6月4日に夜を徹しての追悼集会を主催。
(注2)逃亡条例:正式には2019年逃亡犯条例改正案。容疑者の身柄引き渡し手続きを簡略化し、中国大陸、マカオ、台湾(中華民国)にも刑事事件の容疑者を引き渡しできるようにするという内容。香港の世論は反対寄りであり、2019年6月9日に行われた3度目の反対デモでは、人口の約7分の1にあたる103万人が参加。反対運動に抗しきれず、最終的に当局は9月4日に同条例案撤回を正式決定。
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