ドナルド・トランプ大統領は、先週の中間選挙で、上院は与党・共和党に過半数を維持せしめたものの、下院で野党・民主党に惨敗した。しかし、選挙総括では勝利宣言し、その余勢を駆って訪問先のフランスでも傍若無人振りを発揮している。すなわち、同国に到着早々、ホスト国のエマニュエル・マクロン大統領に対して、欧州防衛戦略で米国を仮想敵とするのはけしからんとツイッターで噛み付いている。
11月9日付米
『CBSニュース』(
『AP通信』配信):「トランプ大統領、フランス到着早々マクロン大統領にツイッターで噛み付き」
ドナルド・トランプ大統領は11月9日、訪問先のパリに到着した途端、ツイッターでエマニュエル・マクロン大統領に噛み付いた。
トランプ大統領は、11月11日に開催される第一次大戦終結100周年記念式典に出席するため訪仏したが、マクロン大統領との会談前日にツイッターで、同大統領の欧州防衛戦略が、中国・ロシアの他、米国をも仮想敵としていて“大変な侮辱”だと非難した。...
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11月9日付米
『CBSニュース』(
『AP通信』配信):「トランプ大統領、フランス到着早々マクロン大統領にツイッターで噛み付き」
ドナルド・トランプ大統領は11月9日、訪問先のパリに到着した途端、ツイッターでエマニュエル・マクロン大統領に噛み付いた。
トランプ大統領は、11月11日に開催される第一次大戦終結100周年記念式典に出席するため訪仏したが、マクロン大統領との会談前日にツイッターで、同大統領の欧州防衛戦略が、中国・ロシアの他、米国をも仮想敵としていて“大変な侮辱”だと非難した。
更にトランプ氏は、米国が大半の補助をしている北大西洋条約機構(NATO)防衛費に関し、フランスは(寝言を言う前に)まず応分の負担金を支払うべきだとも強調した。
トランプ氏は、今年7月にNATO加盟国会議に出席した際、フランスを含めた加盟国の何ヵ国かは、防衛費の応分の負担をしていないと猛抗議していた。
またトランプ氏は当時、ドイツのアンゲラ・メルケル首相に対しても、ドイツは防衛費の応分の負担をしていないばかりか、NATOの仮想敵のロシアから大量の天然ガス等を購入しているともツイッターで非難している。
ジョン・ボルトン大統領補佐官(米国家安全保障問題担当)は11月9日にパリで、米国は欧州の安全保障について憂慮しているとした上で、トランプ大統領は欧州防衛戦略で義務を回避しようとしているのではなく、第一次大戦の反省を糧に、加盟国自身がきちんと対応して欲しいと願っているだけだとコメントした。
トランプ大統領とマクロン大統領との関係は当初かなり緊密で、何度も首脳会談を持ち、更に、トランプ氏が大統領になってから晩餐会に招待したのも唯一マクロン氏のみであった。
しかし、その後、トランプ大統領が、パリ協定(国連気候変動枠組み条約締約国による地球温暖化対策枠組み協定)やイラン核合意(イランの核兵器開発抑止を目指す米英仏独中ロとの合意)からの離脱を決定したことや、米欧貿易不均衡是正のために米国が賦課した関税についてフランスを対象からはずさなかったりしたことから、両首脳間の関係はかなりギクシャクしてきた。
更に、マクロン大統領としては、欧州において、トランプ大統領が推す自国第一主義を踏襲する国が出てきていることを非常に懸念し、先頭に立ってトランプ・スタイルの蔓延に対抗していこうとしている。
11月10日付フランス『RFI(ラジオ・フランス・インターナショナル)ニュース』:「トランプ大統領、フランスが組成を主張する欧州軍を酷評し、また、パリ平和フォーラムに冷酷な態度」
トランプ大統領は、11月9日に大統領専用機エア・フォース・ワンがパリの飛行場に到着した途端、ツイッターでマクロン大統領を攻撃した。
マクロン大統領は11月6日、欧州の安全保障のため、中国やロシアのみならず、米国からの脅威にも備えるため、真の欧州軍を整備する必要があると発言していた。
そこでトランプ大統領は、NATO加盟国の米国に対して“侮辱的”だと非難したもの。
ただ、マクロン大統領は、トランプ大統領が過日、1980年代に欧州において、米国・旧ソ連間でミサイル応酬危機が発生したことを契機に成立した“中距離核戦力全廃条約”からの離脱を表明したことから、トランプ大統領に頼っては欧州の平和は確保できないと考えるようになっている。
一方、11月10日の米仏首脳会談開催前に、強烈な口撃を加えたトランプ大統領は、マクロン大統領が、第一次大戦終結100周年記念式典の目玉として主催するとした“パリ平和フォーラム”を欠席することを決めた。
今回パリの式典に出席するウラジーミル・プーチン大統領も同フォーラムに出席するとしているにも拘らず、トランプ大統領はプーチン大統領との会談も予定することなく、式典終了後にそそくさとパリを離れる意向である。
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