1月10日付
『ロイター通信』は、陸上自衛隊傘下のARDB所属女性隊員に密着取材し、万一の武力衝突に備えた訓練につき詳報している。
『ロイター通信』は、昨年11月中旬、沖縄県の与那国島、徳之島周辺海域で行われたARDB部隊を含む様々な訓練に同行取材した。
日本にとって、軍事力を最大化してきている中国と、尖閣諸島を含む東シナ海において対峙する懸念が強まっていることから、自衛隊の総力を挙げての統合訓練が益々必要となっているからである。
その際、訓練に参加した女性隊員3人に密着取材した。
彼女らは、海上自衛隊の輸送船“おおすみ(1998年就役)”に乗船して、離島防衛作戦の一環で上陸訓練等に参加した。
ARDB部隊は総勢2,400名だが、そのうち女性隊員は僅か40名(1.7%)であり、全自衛隊約23万人における割合8.7%に比べても非常に少なく、ARDBが担う作戦自体が非常に過酷であることを示している。
自衛隊における女性隊員数は直近10年で倍増しているが、同盟国の米軍における女性隊員比率の半分程度でしかなく、更に、ARDBに至っては米海兵隊(1775年前身設立、現隊員数約18万人)における女性隊員の僅か1.6%でしかない。
『ロイター通信』が密着取材した、3人の女性隊員に共通していることは、同性が少数、かつ、厳しい訓練が伴うことより、より結束力が強く、また、信頼のおける仲間を見付けようとしているという点である。
ARDB団長の梨木信吾陸将補(50歳、2021~2023年在任)は、昨年11月の無人島で実施されたヘリコプターによる上陸作戦に関し、“女性隊員を安定的に採用・配置していくことは非常に重要である”とコメントしていたが、当該上陸作戦は男性隊員のみで実施されている。
これに関し、衛生兵の丸山ひかり 2等軍曹(38歳)は、“ARDBの任務は体力的、精神的、かつ技術的にも厳しいという評判があり、多くの女性隊員はそれに耐えうるかと懸念している”とコメントした。
輸送船“おおすみ”の甲板上で実施されたフィットネス・トレーニングは、男性隊員のみで行われていたが、丸山2等軍曹と一緒に、2年弱前にADRB配属となったトラック整備士の黒澤瑠奈伍長(20歳)は、艦内の狭いトレーニングジムで訓練に励んでいた。
彼女らの回りでは、男性隊員が重量挙げ等に黙々と取り組んでいた。
なお、防衛省は女性自衛隊員の確保に努めてきているが、直近でセクシャルハラスメント問題が大きく取り上げられており、その努力に水を差す結果となっている。
すなわち、セクシャルハラスメントに遭った海上自衛隊所属の女性水兵が、上官の命令で加害者の男性隊員に無理やり面談させられたり、また、陸上自衛隊で発生したセクシャルハラスメント事件に関わった3人の男性自衛隊員に対して、福島地裁が昨年12月、有罪判決を下しており、木原稔防衛相(54歳、2023年就任)は、公式会見で謝罪を述べる他なかった。
この件に関し、“おおすみ”艦長の中野沢香2等海佐(42歳)は、“全く言葉にできない嘆かわしい事態だ”とした上で、“何がセクシャルハラスメントに相当するのか、徹底的に教育し直す必要がある”と強調した。
更に同艦長は、“自身が入隊する以前の二十数年前に就役した本艦には、女性隊員の乗船が可能な体制(寝室、トイレ等)が取られていなかった”とし、“今は多少なりとも女性隊員の受け入れ態勢が整いつつあるが、より多くの女性隊員に任務が開放されれば、もっと改善されるはずだ”とも述べている。
(注)ARDB:日本版海兵隊と呼ばれ、陸上自衛隊に属し、団本部は長崎県佐世保市相浦駐屯地。任務は、離島作戦・離島防衛・強襲上陸。総勢2,400人が所属。
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<ハイライト>(8月13日午後3時現在の総感染者数順の報告)
●米国:(1)バイデン政権、企業経営者・州政府・大学等のワクチン接種促進運動を評価するも、連邦政府としてワクチン接種者データ不蓄積。
(2)保健当局、特に基礎疾患のある人々への3回目のワクチン接種促進を検討。
(3)感染症専門家、デルタ株ウィルスによって若年層への感染拡大を懸念と警鐘。
●ロシア(露):一日当たりの死者が808人と最多記録更新。
●英国:(1)一日当たりの感染者が3万3,074人と、7月23日以来の最多記録。
(2)直近四半期(4~6月期)の経済成長率が、都市封鎖措置軽減の影響で+4.8%。
●イタリア(伊):80歳以上の高齢者のワクチン接種率(2回)が91%超、70歳以上が86%超、更に、12歳以上の若年層のワクチン接種率(2回)も65%、(1回)が5%と高い成果。
●ドイツ(独):北部の街の看護師が、ワクチンの代わりに生理食塩水を投与していたことが判明し、8,500人以上の住民が改めてワクチン接種の必要性。
●カナダ(加):連邦政府が、海外渡航者のためにワクチン接種証明書を今秋までに発行と発表。
●ナイジェリア(尼日利亜):米国提供の400万回分のワクチンに加えて、アフリカ輸出入銀行(1993年設立)経由で手当ての3千万回分のうちの一部17万7,600回分のワクチン入手。ただ、依然ワクチン接種率は2%以下と僅か。
●オーストラリア(豪):首都キャンベラも、1年1ヵ月振りに新規感染者発生のため、1週間の都市封鎖措置を決定。シドニー、メルボルン含め数都市に続く措置。
<米国>(感染者3,686万8,469人、死者62万9,799人、致死率1.7%)
(1)・バイデン政権が、企業経営者・州政府・大学等のワクチン接種促進運動を評価。
・しかし、ホワイトハウスCOVID-19対策チームトップのジェフ・ザイエンツ氏(54歳)は8月12日、ワクチン接種の具体的取組は州政府レベルで実施されているため、連邦政府として“ワクチン接種者データを持ち合わせず”と表明。よって、“企業経営者の協力で感染症収束できるよう期待”と付言。
(2)・米疾病予防管理センター(CDC、1946年設立)のロッチェル・ワレンスキー長官(52歳)は8月12日、米食品医薬品局(FDA、1906年設立)の結論を待って、がん患者、臓器移植患者等、特に基礎疾患のある人々への3回目のワクチン接種促進を検討すると表明。8月13日に、CDC専門家会議を開催予定と付言。
・米ファイザー製やモデルナ製ワクチンを2回接種した人たちが3回目のワクチン接種によって、更に免疫性向上している臨床結果が得られていることから、FDAが目下、これら2社のワクチンを基礎疾患のある人々に3回目の投与することにつき認可する方向で検討中。
(3)・米国立アレルギー・感染症研究所(1955年設立)のアンソニー・ファウチ所長(80歳)は、今後全米で、従来より感染力が倍加しているデルタ株ウィルスの感染で、若年層の患者が増加する懸念があると警鐘。少なくとも117ヵ国でかかる事態が発生していると付言。
・ワレンスキーCDC長官は、まだワクチン接種対象となっていない若年層の感染を防ぐため、まずその親たちのワクチン接種促進が必須と強調。
<ロシア>(感染者653万4,791人、死者16万8,049人、致死率2.6%)
・デルタ株の蔓延によって、一日当たりの感染者が6月初めの9千人から7月半ばには2万5千人と急増。これに伴い、一日当たりの死者が、過去4週間で799人を4度も記録。そしてついに8月12日、808人の最多記録を更新。
・西側諸国に比べて、ワクチン接種率が低調なことが背景にあり、当局発表では、8月6日現在、ワクチン接種者(2回)は依然3千万人と全人口の20%、(1回)は3,900万人と26.7%。
<英国>(感染者617万9,506人、死者13万701人、致死率2.1%)
(1)一日当たりの感染者が3万3,074人と、7月23日以来の最多記録。
(2)・統計局発表によると、直近四半期(4~6月期)の経済成長率が、都市封鎖措置軽減の影響で年率換算+4.8%。6月だけで+1%と5ヵ月連続のプラス成長。
・ソーシャルディスタンシング確保や集会人数制限等が7月に撤廃されたことから、専門家は、第三四半期(7~9月期)は更に成長が加速されると期待されるとするも、一方で、デルタ株ウィルス蔓延による経済への悪影響は不確定材料。
・なお、英国は都市封鎖措置実施期間中、就労できない1,100万人余りの人たちに月収の80%を補償してきたが、同制度適用は9月末が期限。
<イタリア>(感染者442万429人、死者12万8,334人、致死率2.9%)
・政府が8月12日に公表したデータによると、80歳以上の高齢者のワクチン接種率(2回)が91%超、70歳以上が86%超、更に、12歳以上の若年層のワクチン接種率(2回)も65%、(1回)が5%と高い成果。
・政府ワクチン対策チームトップのフランセスコ・パオロ・フィグリュオロ陸軍大将(60歳)は、夏季休暇期間終了までに、大学生含めて若年層へのワクチン接種を促進すべく取組中と表明。
<ドイツ>(感染者382万9,437人、死者9万2,348人、致死率2.4%)
・ドイツ公共放送局(ARD、1950年開局)は8月12日、ドイツ北部のフリースランドの看護師が今年4月、ワクチンの代わりに生理食塩水を投与していたことが判明したと報道。
・同報道によると、誤ってワクチン入りカプセルを壊してしまったため、馘首されるのを恐れて生理食塩水で代替したものと。
・この結果、同市の8,500人以上の住民が、改めてワクチン接種の必要性があると判明。
<カナダ>(感染者144万7,439人、死者2万6,692人、致死率1.8%)
・連邦政府の移民・難民・市民権省のマルコ・メンディチーノ大臣(48歳)が、海外渡航者のためにワクチン接種証明書を今秋までに発行すると発表。同証明書には、接種したワクチンの種類、接種の場所及び日付を記載。
・これに対して連邦・州政府間連携省のドミニク・ルブラン大臣(53歳)は、国民のワクチン接種情報は各州政府が保有しているため、相互協力が必要と付言。
・なお、ケベック州では、公共イベント・ジム・レストラン等利用者のために、州発行ワクチンパスポートを来月手配と発表。
<ナイジェリア>(感染者18万661人、死者2,200人、致死率1.2%)
・アフリカ連合(AU、2001年設立)の下で、アフリカ輸出入銀行経由で手当てした3千万回分のうちの一部17万7,600回分の米ジョンソン&ジョンソン製ワクチンを入手。
・米政府から提供された400万回分のワクチンを受領済みであるが、依然ワクチン接種率は全人口2億人の僅か2%以下と依然低調。
<オーストラリア>(感染者3万7,754人、死者947人、致死率2.5%)
・首都キャンベラで、1年1ヵ月振りに新規感染者(20代の男性)が発生したため、8月12日から1週間の都市封鎖を実施。午後5時以降の不要不急の外出禁止、レストラン等はテイクアウトのみ許可。なお、自宅待機が不可能な学生のみ登校を認容。
・シドニー、メルボルン含め数都市は、既に複数回目の都市封鎖措置を実施中。
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