12月7日付仏
『フランス24』(AFP通信):「英、米、要人へのロシアのサイバー攻撃活動を批判」
英国政府と米国は7日、政治幹部、ジャーナリスト、非政府組織(NGO)等への度重なるサイバー攻撃を行っていたとしてロシアのセキュリティ機関を批判した。
2016年のEU離脱投票を含み、英国の政治に介入したことが疑われている。保守派は調査の失敗を批判。外務相は、ロシアのロシア連邦安全保障局(FSB)が背後にあると指摘し、大使を呼び出したとしている。
米国では、英米およびNATO諸国へのコンピューターハッキング容疑で、ロシアの個人2名(Ruslan Aleksandrovich Peretyatkoと Andrei Stanislavovich Korinets)が起訴された。うち1人はFSBの職員だったとされる。5年から最長20年の刑となる。2016年から2022年まで国防総省、国務省、エネルギー施設省、情報機関の現職、元高官を標的とした疑いがもたれている。
英国政府はFSBが2015年から2023年までの文書漏洩に関与しており、米の貿易分書もハッキングし2019年の総選挙前に漏洩していたとする。
1月、英国のサイバーセキュリティ長官は、ロシアとイランが政府高官やジャーナリスト、NGOを標的としたフィッシング攻撃を活発化していると警告。英国の政府通信本部(GCHQ)の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)は、ロシアの集団「SEABORGIUM」やイランの「TA453」が様々な団体や個人を英国内外で2022年まで標的としていたとした。
昨年、英国の新聞は、ロシアのトラス元首相が外相だったとき、ロシアの工作員が携帯電話をハッキングした疑いを報じていた。ウクライナ戦争に関する「非常に重要な議題」を含むメッセージも含まれていたとされる。
同日付米『CNBC』:「ロシアが民主主義を蝕み政治家を標的としたサイバー攻撃」:
英国は7日、英国の民主主義を蝕み、長年政治家や民間人、ジャーナリストへの悪意あるサイバー攻撃に従事していたとして、ロシアを批判した。
英国の諜報機関である政府通信本部(GCHQ)の国家サイバーセキュリティセンターは報告書で、英国の著名な個人や団体に対し、少なくとも2015年から今年にかけて、ロシアが英国の中心的政治イベントを標的としてサイバー活動を行っていたとした。
ハッカー集団は、「Star Blizzard」とされ、ロシアのロシア連邦安全保障局(FSB) の一部だとほぼ確信しているとしている。
悪意ある攻撃対象には、英国の民主主義の中心を担う大学、ジャーナリスト、公的機関、非政府組織に加え、英国の政治家へのフィッシングメールも含まれる。
スパイ集団は、英米の貿易文書もリーク、2019年の英国総選挙を前に、誤情報を監視する英国のシンクタンクから文書をハッキングしたという。
デイビッド・キャメロン英国外務相は政治への介入を「全く受け入れられない」とし、この発見で「世界におけるロシアの情報機関のサイバー攻撃の広範な活動パターンが明らかとなった」とする。
これを受け、米国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどの同盟国は、ハッカー攻撃の実態と対処法について詳細情報を共有するサイバーセキュリティ勧告を発行している。また、サイバー攻撃のリスクの高い個人へのガイダンスを更新している。
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中国が、一帯一路経済圏構想(BRI)の下でインフラ建設等にかかる巨大融資を実行することで被仕向け国を“債務の罠” (注後記)に嵌めているという批判が絶えない。そしてこの程、ラオスがスリランカ・ザンビアに続いて債務の罠に嵌ってしまう恐れがあると経済専門家が警告している。
11月8日付
『CNBCニュース』は、ラオスが中国からの巨大債務に押されて債務超過に陥る恐れがあると報じている。
ラオスはこれまで、中国のBRI構想の下、中国から数十億ドル(数千億円)の融資を受けて鉄道・高速道路・水力発電所等のインフラ建設プロジェクトを進めてきたことから、国際通貨基金(IMF、1945年設立)の推定では、中国に対する債務総額が同国の今年の国内総生産(GDP)の122%にも達してしまっているという。
中国は、ラオスにとって2013年以来最大の債権国となっているが、それが更に膨大になっていることを表している。
ラオスは、世界的な食品・燃料価格暴騰に加えて、同国通貨キップの対米ドル最安値更新に遭っており、このままでは債務不履行に陥る可能性がある。
これに対して中国は、2020~2022年に掛けて債務返済繰り延べに応じているが、世界銀行(1946年設立)は“一時的救済”であって、同国の2022年GDPの僅か8%程度にしか及ばないとコメントしている。
更に、全対外債務の37%を負っているラオス国営電力(EDL、2010年設立)が2021年、中国南方電網(CSPG、2002年設立の送電会社)と25ヵ年利権協定を締結し、CSPGにEDL発電の電力の海外輸出権を与えてしまっている。
かかる背景より、多くの経済専門家が、今度はラオスが債務の罠に嵌ってしまう恐れがあると警告している。
● 東京大学公共政策大学院の西澤利郎教授(64歳、2013年就任)
・ラオスは、債務不履行に陥らないためには、債務弁済繰り延べ・金利率削減等、中国と根本的な債務返済交渉が必須。
・例えば、中国の気候変動対策に関わる債務スワップ(発生温室効果ガス等の環境対策上の権利譲渡)等も検討対象。
・中国としても、ラオスが債務不履行状態に陥ることを望んでいないと推測。
● ローウィー研究所(2003年設立の豪州シンクタンク)インド太平洋開発センターのマリーザ・クーレイ上級エコノミスト
・中国がこれまで対ラオスで取ってきた一時的救済策を考えると、今後も余り期待できない。
・スリランカやザンビアに対する中国の債務再編成交渉を見る限り、ラオスに対しても消極的と見ざるを得ない。
・米国がインド太平洋地域での関与度が高まる中、これに対抗する中国にとって、東南アジアにおける中国の立ち位置を好転させるためにラオスとの関係強化は願ってもないことから、ラオスの債務減額等で救いの手を差し伸べることは中国にとっても最善策のはず。
● 世界銀行ラオス事務所のペドロ・マーティンズ上級エコノミスト
・中国のみならず、他の債権国・銀行団等も債務再編交渉をうまくまとめることが肝要。
・支出効率の改善、金融セクターの強化、輸出を促進しながらビジネス環境を活性化することも解決策。
● S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス(財務データ分析等を行う米金融サービス)の田口晴美首席エコノミスト
・ラオスとしては、過度な免税措置の縮小・徴税システムの改善等税制改革に取り組んで歳入改善の必要がある。
・歳出面では、多額の債務を負っている中国国営企業に対する返済・保証条件等の厳格管理も必要。
(注)債務の罠:借金漬け外交とも呼ばれる、国際援助などの債務により債務国、国際機関の政策や外交等が債権国側から有形無形の拘束を受ける状態のこと。友好国間で見られ、債務の代償として合法的に重要な権利を取得する。インドの地政学者ブラーマ・チェラニーによって、中国のBRI構想と関連づけて用いられたのが最初。債務国側では放漫な財政運営や政策投資などのモラル・ハザードが、債権国側では過剰な債務を通じて債務国を実質的な支配下に置くといった問題が惹起されうる。
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