米国、中国の南太平洋地域での影響力拡大阻止のため、まずパプアニューギニアと防衛協力協定締結【欧米メディア】(2023/05/23)
5月11日付GLOBALi「
バイデン大統領、中国の南太平洋地域での影響力拡大阻止のため同地域島嶼国との首脳会議主催」で報じたとおり、同大統領主導で同地域島嶼国首脳との国際会議を開催し、同地域で影響力拡大を目論む中国を厳しく牽制する意向である。同大統領は、米議会との債務上限問題に関わる交渉のため、主要7ヵ国首脳会議(G-7サミット)のみの出席に止め、南太平洋歴訪は断念したが、国務長官が名代として派遣され、パプアニューギニア(PNG、1975年豪州より独立)との防衛協力協定(注1後記)締結に始まり、島嶼国首脳らとの国際会議を予定どおり主催している。
5月22日付米
『CNNニュース』、欧米
『ロイター通信』は、米国がPNGと新たに「防衛協力協定」を締結し、中国による南太平洋地域での影響力拡大を阻もうとしていると報じている。
米国とPNGは5月22日、経済・安全保障分野での協力を強化すべく、新たに「防衛協力協定」を締結した。
ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)の名代として派遣されたアントニー・ブリンケン国務長官(59歳、2021年就任)と、PNGのジェームズ・マラペ首相(52歳、2019年就任)が署名したもので、米国としては、南太平洋地域で影響力を拡大しようとしている中国を牽制するために、太平洋諸国フォーラム(PIF、注2後記)の今年の議長国であるPNGを味方につけたとみられる。...
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5月22日付米
『CNNニュース』、欧米
『ロイター通信』は、米国がPNGと新たに「防衛協力協定」を締結し、中国による南太平洋地域での影響力拡大を阻もうとしていると報じている。
米国とPNGは5月22日、経済・安全保障分野での協力を強化すべく、新たに「防衛協力協定」を締結した。
ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)の名代として派遣されたアントニー・ブリンケン国務長官(59歳、2021年就任)と、PNGのジェームズ・マラペ首相(52歳、2019年就任)が署名したもので、米国としては、南太平洋地域で影響力を拡大しようとしている中国を牽制するために、太平洋諸国フォーラム(PIF、注2後記)の今年の議長国であるPNGを味方につけたとみられる。
南太平洋地域は長らく米国の影響下にあったが、欧州や中東等はもとより国内問題で掛かりきりになっている隙を突いたようにして、中国が資金援助や貿易拡大を梃に影響力を徐々に拡大してきている。
そして中国は昨年4月、ソロモン諸島(1978年英国より独立)との間で安全保障協定を締結していて、その勢いで同年5月にPIF加盟国との包括協定締結を目指したが、一部の国の懸念表明でこれは失敗に終わっていた。
豪州シンクタンクのロウィ・インスティテュート(2003年設立)のマホロパ・ラベイル研究員は、“太平洋島嶼国の中で最大のPNGが米国と防衛協力協定を締結したことで、米国の思惑通り、他の島嶼国へ西側諸国との連携をアピールとなる”とコメントした。
また同研究員は、“PNGに続いて経済規模の大きいフィジー(1970年英国より独立)の新政権が今年初め、昨年中国と締結した警察活動協力協定を停止すると決定したことと相俟って、米国にとって南太平洋地域での中国の影響力拡大阻止戦略の追い風になる”とした上で、“但し、PNGとしては、中国からの脅威を盾に、米国から更なる開発援助を求めることになろう”と付言している。
一方、PNG大(1965年設立の公立大)国際関係専門のパトリック・カイク講師は、“米国・PNG間協定締結によって、南太平洋島嶼国の中で分断が極まる恐れがある”とし、“これら島嶼国としてはこれまで、米国ともまた中国とも等距離外交を切望しているとみられていたことから、それらの国の主権問題にも発展しかねない事態もはらむ”と懸念を表明している。
(注1)防衛協力協定:米国がPNGと5月22日に締結した協定で、米軍がPNG国内の施設を使用可能とする他、軍の防護装備、気候変動の緩和、国際犯罪やエイズウィルスへの対処等まで幅広い分野での協力につき合意。なお、米国の海洋巡視艇にPNG当局者が同乗できる乗船協定の締結も目指す意向。
(注2)PIF:米・英国・フランス等の旧宗主国主導の南太平洋委員会(1947年設立された地域協力機構)に対抗して、島嶼国の主体性を堅持し、結束を図ることを目的として1971年創設。加盟国は、今年議長国のPNGの他、フィジー・ソロモン諸島・バヌアツ・サモア等16ヵ国に援助供与国の豪州・NZを加えた18ヵ国。
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米メディア、中国軍艦隊がG-7サミット主導の日本を牽制して日本列島を周回監視航行と報道(2023/05/12)
中国の海警局の艦船2隻が5月11日未明、一方的に領有権を主張する尖閣諸島沖合の領海に侵入した。これで今年13件目となるが、この示威行動とは別に、中国軍艦隊が4月末から1週間、主要7ヵ国首脳会議(G-7サミット)を主導する日本を牽制すべく、日本列島を周回監視航行している。
5月11日付
『CNNニュース』は、台湾問題に余計な口出しをする日本を威圧するためか、中国軍艦隊が1週間もの間、日本列島を周回する監視航行を行ったと報じた。
防衛省は5月11日、中国軍艦隊が4月30日から1週間、対馬海峡を皮切りに、津軽海峡を経由して、5月5~6日にかけて伊豆諸島近海まで航行したと発表した。
中国軍のミサイル駆逐艦“拉薩”(ラサ、2021年就役)が、小型駆逐艦・フリゲート艦・補給船3隻を率いて航行したものである。...
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5月11日付
『CNNニュース』は、台湾問題に余計な口出しをする日本を威圧するためか、中国軍艦隊が1週間もの間、日本列島を周回する監視航行を行ったと報じた。
防衛省は5月11日、中国軍艦隊が4月30日から1週間、対馬海峡を皮切りに、津軽海峡を経由して、5月5~6日にかけて伊豆諸島近海まで航行したと発表した。
中国軍のミサイル駆逐艦“拉薩”(ラサ、2021年就役)が、小型駆逐艦・フリゲート艦・補給船3隻を率いて航行したものである。
中国国営メディア『環球時報』(1993年創刊)は防衛省の発表を受けて、“中国艦隊の航行は、中国主権の及ぶ台湾について、日本が挑発的な見解を繰り返していることに関係している”と報じた。
同メディアは、軍事専門家のコメントを引用して、“同艦隊の航行は国際法に違反せず、また特定の第三国を標的にしたものではないが、日本に対する強いメッセージとみなすことができる”と言及している。
この直前の5月10日、岸田文雄首相(65歳、2021年就任)が『日経アジア』(2011年創刊の英字紙)のインタビューに答えて、“台湾海峡の平和と安定は、日本だけでなく国際社会全体にとって極めて重要である”と述べていた。
また、林芳正外相(62歳、2021年就任)は同日、『CNN』の独占インタビューに応じて、先に駐日中国大使の呉江浩氏(ウー・ジャンハオ、59歳、2023年就任)が、“日本が台湾を自国の安全保障問題に関連付けた場合、大火に巻き込まれることになる”と発言したことに対し、中国側に厳重に抗議したと表明した。
更に同外相は、“ロシアによるウクライナ軍事侵攻は、欧州の問題に止まらず、遠くアジアにも影響を及ぼしており、日本としても地域の安全保障について再考することを余儀なくされている”とした上で、“アジア地域として最初となる北大西洋条約機構(NATO、1949年設立)の連絡事務所の開設について協議を開始した”とも言及している。
シンガポールのS.ラジャラットマン国際学院(1996年設立)のジョン・ブラッドフォード上級研究員は、“中国国営メディアが、中国軍艦隊の周回航行と岸田首相の台湾関連コメントを結び付けることで、日本に対する示威行動と報じていることが最もやっかいなことだ”とコメントした。
また、テンプル大学日本校(1982年設立)政治学専門のジェームズ・ブラウン教授は、“今月下旬に広島で開催されるG-7サミットにおいて、議長国の日本がウクライナ問題を東アジアの安全保障問題と関連付けようとしていることから、その牽制のために中国軍艦隊が日本列島を周回航行したものと考えられる”と表明した。
同教授は、“岸田首相が、今日のウクライナ問題は明日の東アジアだと、G-7サミット席上でも繰り返すとみられることから、中国としても看過できず、日本が米国や他主要国と安全保障問題で連携を強化しようとすることを妨げようとしたと考えられるが、(艦隊周回航行という)効果は全く逆となっている”とも言及している。
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