香港の少子化対策(2023/10/27)
香港では、他のアジア諸国同様少子化が進んでおり、政府は出生率向上のため新生児への一時金として約38万4千円(2556米ドル)を支給すると発表している。
10月26日付米
『CNN』:「香港で新生児へ2500ドル支給へ、家賃に満たない額」:
香港では出生率を上げるため、新生児に2500万ドルを支給することが決定したが、物価の高い香港では、この額は一月の家賃にも満たないという。
香港のジョン・リー・カチウ(李家超)行政長官は25日の施政方針演説で、依然つづいている低出生率への対策として、2026年まで新生児に2万香港ドル(2556米ドル)を支給すると発表。...
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10月26日付米
『CNN』:「香港で新生児へ2500ドル支給へ、家賃に満たない額」:
香港では出生率を上げるため、新生児に2500万ドルを支給することが決定したが、物価の高い香港では、この額は一月の家賃にも満たないという。
香港のジョン・リー・カチウ(李家超)行政長官は25日の施政方針演説で、依然つづいている低出生率への対策として、2026年まで新生児に2万香港ドル(2556米ドル)を支給すると発表。香港では女性一人あたりの出生率が0.9人に急落した。
支給金は、少子化が進む他の東アジア諸国と比べ少ない。シンガポールでは育児休暇と合わせて、第一子と第二子へ8036ドルが、第三子へは9497ドルが支給される。韓国(出生率0.78)では、1歳まで月518ドルを支給、来年には740ドルまで拡大される予定。日本(出生率は1.3)では、新生児が2歳になるまで月107ドル、3歳から高校までは月66.7ドルが支給される。
香港政府は、子供のいる世帯向けの公共住宅の整備強化や公的育児サービス拡大も発表。香港の大手不動産会社「ミッドランド・リアルティ」によると、今年の500フィート平米2部屋のアパートの1ヶ月の平均家賃は2253ドルだった。これは政府の現金支給額の9割以上にのぼる。
世界でも住宅価格の高い香港では、若い世代にとり、子どもを持つことは非常に重い負担となる。香港では幼稚園からの教育支援はあるが、1,2歳時の保育園への支援は殆どない。香港や中国の都市では、出生後まもなくは、食事の支度や家事をするベビーシッターを雇うのが通例となっている。そこに政府の支援はない。
同日付『Yahooニュース』(FORTUNE):「少子化する香港、2500ドルの一時支援金」
アジア経済の中心地である香港では少子化が進んでおり問題となっている。
政情不安やコロナ禍からの回復途中にある香港では、生徒数減少から閉校する学校も多い。政府は、少子化を食い止めようと、新生児へ3年間にわたる2万香港ドルの支給を決定。減税拡大などの支給金以外の対策も検討中だという。
シンガポール、日本、台湾は長いこと少子化への対策を進めてきた。中国でも人口抑制を撤回し、現在では出産を奨励している。
この中でも香港の出生率は低い。最新となる2021年の政府統計によると、2016年~2021年の出生率は女性一人あたり0.77人を記録した。これは非常に低い出生率が今年注目された韓国に匹敵する。韓国政府のデータでは、2022年の出生率が0.77人となっている。
香港の支給金は他のアジア諸国と比べ少額となっている。この「ベビーボーナス」は香港の中流層の一ヶ月の収入の半分をわずかに超える程度であり、市民からは、「少額であまり役に立たない」と不満の声もある。
日本は、来年10月から第一子と第二子が2歳になるまで、月100ドルを支給する。今年支援政策に力を入れているシンガポールでは、新生児へ香港を相当上回る支援金が発表されている。
しかしながら、一時支給金も一定の効果はあるが、生活費や養育費に追いつかない。人口統計学の専門家の間では、現金支給は子どもを持つかどうかには影響するが、何人持つかには影響しないというのが定説となっている。
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米メディア、「旧統一教会」の解散請求を受けて日本の若者には学校での宗教一般に関わる教科が必要と報道(2023/10/15)
日本政府はこの程、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令を東京地裁に請求した。これを受けて、米メディアが、欧米と違って日本では学校教育で宗教一般についての授業がないことで、カルト教団(注1後記)に無自覚で関わってしまう恐れがあると、専門家のコメントを引用して報じている。
10月14日付
『CNNニュース』は、日本政府による旧統一教会の解散請求を受けて、日本の若者にも学校での宗教一般に関わる教科が必要とする専門家のコメントを紹介している。
文部科学省は10月13日、「旧統一教会が、遅くとも1980年頃から、不安を煽り正常な判断ができない状態にして多額の献金等(いわゆる霊感商法)をさせ、多くの被害者に多大な財産上の損害・精神的な苦痛を与えた」と認定したことを理由に、東京地裁に解散命令を請求した。...
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10月14日付
『CNNニュース』は、日本政府による旧統一教会の解散請求を受けて、日本の若者にも学校での宗教一般に関わる教科が必要とする専門家のコメントを紹介している。
文部科学省は10月13日、「旧統一教会が、遅くとも1980年頃から、不安を煽り正常な判断ができない状態にして多額の献金等(いわゆる霊感商法)をさせ、多くの被害者に多大な財産上の損害・精神的な苦痛を与えた」と認定したことを理由に、東京地裁に解散命令を請求した。
宗教法人法(注2後記)に基づき、これまでに解散命令が下されたのは、オウム真理教(1987年設立、1995年解散命令)及び明覚寺(1984年設立、2002年解散命令)であり、旧統一教会に対しても裁判所の命令が下されれば3例目となる。
これに関し、國學院大學(1882年前身設立の私立大)宗教社会学専攻の井上順孝教授(75歳)は、旧統一教会の不誠実な勧誘や献金のやり方について厳しく批判しているが、信者の中には依然同教団に献金等することを幸福だと感じている人たちがいると指摘している。
すなわち、仮に同教団に解散命令が下されたとしても、非宗教法人として活動継続は可能であることから、公権力が法律に基づいて同教団を取り締まることができなくなり、果たしてこれら妄信する信者を救い出せるのかという問題が残るとしている。
そこで、多くの宗教問題研究専門家は、根本の問題として、欧米と違って、日本の若者が小・中・高校で宗教一般に関して教えられる機会がないため、大学生になっても怪しげな宗教の勧誘等に容易に乗ってしまう、と指摘している。
立正大学(1872年前身設立の私立大)社会心理学専攻教授であり、マインドコントロール研究の第一人者である日本脱カルト協会(JSCPR、1995年設立)会長の西田公昭氏(63歳)は、第二次大戦後に制定された日本国憲法で学校における宗教教育が禁止(注3後記)されたため、国民にとって宗教は“触れてはならない話題”と捉えられてしまっていると指摘している。
その結果として、大阪大学(1931年設立の国立大)カルト問題研究専攻教授でありJSCPR理事でもある太刀掛俊之氏(48歳)によると、大学生になっても宗教に対する耐性が脆弱で、大学キャンパス内で入信勧誘に容易に乗ってしまう恐れがあるとする。
従って、太刀掛氏は、“教育課程で宗教一般についての教科を設けることが重要で、これによって、学生らが様々な宗教の違いを明確に理解し、仮に入信勧誘のプレッシャーにさらされても、得られた知識に基づいて自身の判断で行動できるようになる”と強調している。
(注1)カルト教団:過激で異端な新興宗教であり、カリスマ的な教祖を中心にマインドコントロールにより反社会的な行動を取らせたりする集団。
(注2)宗教法人法:信教の自由を尊重する目的で、宗教団体に法人格を与えることに関する法律。1951年施行。
(注3)学校における宗教教育の禁止:憲法第20条3項で、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と規定。
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