最新の研究によると、宇宙産業が発展すると、ロケットから排出される有害なガスや微粒子により、これまで順調に回復してきたオゾンホール修復が損なわれる恐れがあるという。宇宙開発が盛り上がりをみせる影で、このような危険についての議論が阻害されているのが現状である。
2月7日付仏
『フランス24』:「宇宙観光の発展やロケット打ち上げ増加でオゾン層への危険再び」:
最新の研究によると、宇宙旅行が活発化すると、オゾンホール修復が損なわれる恐れがあるという。有害なフロンガスの禁止などにより、気候変動対策の中では成功していた分野に新たな問題が生じる可能性が指摘されている。
ニュージランドの専門家は包括的な対策が取られなければ、オゾン層に損害が生じる可能性を指摘。「ニュージーランド王立協会ジャーナル」に掲載された論文によると、ロケット打ち上げの際の排気はCO2などと比べると少量だが、今後数十年で、航空産業からの排出量に匹敵するという。
オゾン層は地表から15~50キロの大気圏にあり、人間や野生生物にとり有害な太陽からの紫外線をほぼ全て吸収する。フロンガスなどの有害化学物質は、北極や南極上空のオゾン層を破壊してきたが、1979年から毎年オゾンホールが確認されるなど、南半球でのダメージがより顕著にみられた。
ロケット発射により、有害なガスや微粒子がオゾン層がある中層大気に放出される。また、地球へ帰還する際に燃焼する部位からの宇宙ゴミも、大気圏に有害な粒子を拡散させる原因となる。打ち上げで排出されるブラックカーボンは、雨に流されることもなく、2年ほど大気圏上空に留まる。ロケットや燃料の技術革新がなければ、これらの排出物は、世界的に宇宙開発がすすむにつれ増加するとみらている。
現在約70カ国で、宇宙機関や民間宇宙企業があり、より身近なものとなっている。リチャード・ブランソンの「ヴァージン・ギャラクティック」、ジェフ・ベゾス氏の「ブルー・オリジン」、イーロン・マスク氏の「スペースX」による「ビリオネア宇宙開発競争」により、衛星や宇宙観光開発が進められており、商業宇宙産業を3年で倍増、1日に3回の打ち上げ目標を掲げる等、世界的規模で打ち上げ回数が上昇傾向にある。その一方汚染問題や宇宙ゴミ処理の制度が整っていないことが問題となっている。
世界的に、中小企業からの参入も盛んで、インドだけでも国内の商業宇宙産業投資により、2021年、宇宙関連企業が368社にのぼっている。世界の宇宙産業市場は、2022年で約145万ドル産業となり、2030年までに3倍に成長すると予測される。
1987年オゾン層の損傷を減らすことを目的とした、「国際モントリオール議定書」が採択された。今年1月の国連報告書では、オゾン層を破壊する禁止物質の99%が削減されたことが確認された。オゾンホールは縮小し、今後40年ほどで回復するとみられている。議定書がなければ、2065年までにはオゾン層の3分の2が破壊され、地上に届く紫外線は2倍以上になると試算されている。
モントリオール議定書の場合は、代替物質があり、途上国への支援も潤沢だった一方、宇宙開発問題については、現在使用されているロケット燃料にクリーンな代替品はなく、その影響力の小ささから、規制への機運も小さいものとなっている。
専門家は解決策として、ロケットによる環境リスクを把握するため、排出量の測定やデータの共有や、ロケットの開発段階からの排出対策を求めている。
同日付『Yahooニュース』(Euronews):「宇宙開発競争:ロケット打ち上げがオゾン層を破壊する可能性」:
ロケット打ち上げ増加により、オゾン層の穴が再び開いてしまう危険があるという。
オゾン層は地球を太陽の紫外線から守る役割があるが、毎年、南極上空ではオゾンの穴が確認されている。有害物質の拡散によるものだが、厳しい規制により、オゾンの穴は縮小傾向にある。
ところが、ニュージーランドの科学者は、宇宙産業により、これが逆戻りしてしまうと警告している。現時点では、ロケットによるオゾン層への影響は大きいものではないが、宇宙開発が活発になるにつれ影響が拡大するとみられている。
成層圏を通り抜けるロケットが懸念されるのは、打ち上げにともない、反応性塩素、ブラックカーボン、窒素酸化物などのガスや微粒子が大気圏に排出されるためで、地球帰還時にも大量の窒素酸化物が形成されるという。これらが大気圏に長期間滞留し、オゾン破壊につながるという。宇宙開発が盛り上がりをみせる影で、このような危険についての議論が阻害されているのが現状である。
排出物には他の危険もあり、ロケットから排出されるブラックカーボン微粒子は、他の物質をあわせた合計よりも500倍熱を閉じ込める性質があるという。
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ナチスドイツ軍が設けていた、悪名高いアウシュビッツ強制収容所は1945年1月27日、赤軍(当時のソ連地上軍、注1後記)によって解放された。しかし、今年の解放78周年記念式典にはロシア代表が招待されないことになっている。
1月26日付米
『Foxニュース』は、「今年のアウシュビッツ強制収容所解放記念式典にロシアは招待されず」と題して、78年前に当時のソ連地上軍が解放に尽力したにも拘らず、今年の記念式典にはロシア代表は一切招待されていないと報じている。
1月27日は、赤軍によってナチスドイツが営む悪名高いアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所(注2後記)が解放された記念日である。
同収容所では、主にユダヤ人ら100万人以上が虐殺されており、毎年犠牲者を悼み記念式典が開催されてきた。
しかし、78周年となる今年の式典には、ロシア代表は一切招待されていない。
何故なら、欧州諸国にとって、ロシアが仕掛けたウクライナ戦争の惨状を鑑みるに、ロシアを招待しない程度では済まされないからである。
アウシュビッツ=ビルケナウ記念博物館のパウェル・サビッキ広報担当は『Yahooニュース』のインタビューに答えて、“ロシアが一方的に独立国のウクライナを攻撃している現状より、今年の式典には(解放に尽くしたソ連軍の後継とは言え)ロシア連邦代表を招待することはできない”と明言した。
ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領(50歳、2015年就任)が同記念式典を仕切っているが、ポーランドは特に隣国のウクライナを強く支援していて、これまで数十万人のウクライナ難民を受け入れているばかりか、西側諸国が提供する武器等の搬送に手を貸している。
同記念博物館には、ナチスドイツ軍が設けたガス室や粗末な木造収容施設が残されており、毎年約230万人が訪れている。
同館のピオトル・シウィンスキー館長(50歳、2006年就任)は、“人類にとって忘れてはならない遺物を示すために同館が存在していることを考えた場合、目下ロシアがウクライナで犯している戦争犯罪を決して許すことはできない”と記念式典冒頭に表明した。
これに対してロシア側が直ぐに反発し、外務省のマリア・ザハロア報道官(47歳、2015年就任)はSNS上に、“欧州の「パートナーでも何でもない」国々が歴史を塗り替えようとしても、ソ連軍のはたらきによってナチスドイツ軍の収容所が解放されたという事実は消えない”と投稿している。
赤軍による絶え間ない攻撃によって、ポーランドを含む東欧からナチスヒットラー軍を後退させ、その結果アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所が解放されるに至っている。
赤軍は更に、その余勢を駆って2ヵ月後にベルリンに進軍し、最終的にナチスドイツ軍を打ち破った。
第二次大戦を通じて、ソ連では戦闘員・民間人併せて2,600万人余りが犠牲になっている。
そこでザハロア報道官は、“ファシズムから世界を救ったのはソ連軍兵士”だということを忘れてはならないと強調している。
当時のソ連側の主張は、米国や英国の統治者は、アウシュビッツで何が行われていたか承知していたにも拘らず、収容所から駆り出されたユダヤ人が鉄道工事に従事している場所に空爆を繰り返し、毎日数千人ものユダヤ人を殺害したとしている。
一方、ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)はウクライナ軍事侵攻の理由について、ウクライナ政権の“ナチ化を防ぐ”ためだと主張しているものの、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領(45歳、2019年就任)がユダヤ人であることを見落としている。
1月27日付英国『ジ・インディペンデント』オンラインニュースは、「欧州の平和が脅かされる中、アウシュビッツ解放記念式典開催」と詳報している。
1945年1月27日にソ連軍によって解放されるまで、アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所に収容されていたユダヤ人ら約110万人が犠牲になっていた。
大半がユダヤ人であったが、その他ポーランド人、ロマ族、更にはソ連軍捕虜も含まれている。
そしてこの程、解放から78周年を記念すべく、同収容所の生存者が再び同式典に参席した。
同収容所跡に設立された記念博物館には、ガス室や粗末な木造収容所のみならず、犠牲者の服・靴等の遺物も展示されていて、“(ナチスドイツ軍がもたらした悲惨な事態は)二度と繰り返さない”と訴えている。
しかし、アウシュビッツから僅か300キロメートル(185マイル)東方のウクライナでは、ロシアによる一方的な軍事侵攻に端を発した戦争が繰り広げられていて、約80年前と同様多くの戦争犠牲者が出ている。
2005年に開催された60周年記念式典には、プーチン大統領が招待されて演説していたが、今年の式典には招待されていない。
同記念博物館の公式発表では、ロシア側代表は誰も招待していないという。
(注1)赤軍:1918年1月から1946年2月までロシア帝国及びソ連に存在した軍隊。十月革命後に勃発したロシア内戦の最中である1918年1月に、労働者・農民赤軍(略称:労農赤軍)として設立。1937年12月にソ連海軍が赤軍から独立した後は、ソ連地上軍(陸軍)を指す呼称となった。
(注2)アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所:1940~1945年の間に、ナチスドイツ軍占領下にあったポーランド南部クラクフ近郊に造られた強制収容所。収容されていた110万人余り(9割がユダヤ人、他にポーランド人、ロマ族(ジプシー)、ソ連軍捕虜)の9割以上が虐殺(ホロコースト)されている。
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