ロシアと欧州との緊張関係が高まっている中、5月28日から6月3日にかけて、スウェーデン政府は、戦争を含む有事の対応方法が記された冊子を約470万の全世帯に配布する。
「危機または戦争が起きたら(If Crisis or War Comes)」と題した冊子は、サイバー攻撃やテロ、気候変動に加え、戦争中に一般市民が水や食料、暖房といった必需品をどうやって確保するかといったマニュアルが記されている。また、空襲などからの一時避難の行動マニュアルや持ち物(身分証明書、衣服、ガスマスク)も記載されている。
21日ストックホルムで、その冊子が公表された。スウェーデン市民緊急事態庁(MSB)のダン・エリアソン長官は「スウェーデンは他の多くの国よりも安全ですが(...)、脅威は存在します。...
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「危機または戦争が起きたら(If Crisis or War Comes)」と題した冊子は、サイバー攻撃やテロ、気候変動に加え、戦争中に一般市民が水や食料、暖房といった必需品をどうやって確保するかといったマニュアルが記されている。また、空襲などからの一時避難の行動マニュアルや持ち物(身分証明書、衣服、ガスマスク)も記載されている。
21日ストックホルムで、その冊子が公表された。スウェーデン市民緊急事態庁(MSB)のダン・エリアソン長官は「スウェーデンは他の多くの国よりも安全ですが(...)、脅威は存在します。どのような脅威があるのかをすべての人が知り、各自で準備できることが大切です。」と述べた。
冊子のデザイン責任者、クリスティーナ・アンダーソン(Christina Andersson)は、「周辺地域における軍事的紛争は、たとえそれが私たちの領土に及ばなかったとしても、食糧を含む物資の輸入に影響を及ぼすでしょう」と語った。
スウェーデンは1940年代から、こうした冊子を国民に配布していたが、1991年の冷戦終結を最後に、配布をやめていた。
今回の冊子に特定の国の名前は出されてはいないものの、国民への呼びかけの背景には、「ロシアの脅威」が再び高まったことに対する警戒感がある。
NATOのメンバーではないスウェーデンは、ロシアと国境を接していないものの、両国はバルト海を挟んで互いに面しており、ストックホルムの東側に位置するロシア・カリーニングラード州に海軍基地も存在する。
冷戦終結時に軍事費を大幅に削減したスウェーデンだったが、2014年のロシアによるクリミア併合で、状況が変わった。また、2014年の秋、ストックホルム群島近くのスウェーデンの領海に侵入したに正体不明の潜水艦が確認され、その後、ロシア航空機によるスウェーデン領空侵犯が続き、ロシアに対する警戒が高まった。スウェーデン軍は、2015年からバルト海に浮かぶゴトランド島に部隊を再配備するなど、軍備拡大を図っている。
2010年に廃止していた徴兵制も、この夏から復活する。NATO加盟国ではないものの、NATOとの関係も強めている。
月曜日、ゴトランド島で、第二次世界大戦以来の新しい連隊が創設された。スウェーデンのステファン・ロベーン(Stefan Löfven)首相は、「ウクライナでは、クリミアが併合され、その東部地域では紛争が継続的に起こっているのを見てきた。バルト海では、特にロシア側で活動が増えている。 それを考慮に入れて、スウェーデンは安全を感じなければならない」と述べた。
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