カナダのトルドー首相は14日、首都オタワでの記者会見で、中国で麻薬密輸罪に問われたカナダ人男性に死刑判決が言い渡されたことに対し、中国が恣意的に死刑を適用したことは憂慮すべき事態であるとして、同国の対応を非難した。
『AFP通信』『ロイター通信』など多くのメディアが報じた。中国・遼寧省の大連市中級人民法院(地裁)は14日、麻薬密輸罪に問われたカナダ人男性のロバート・ロイド・シェレンバーグ被告(36)に対し、国際的な麻薬密輸組織の主犯格として、約222キロの覚醒剤を中国からオーストラリアに密輸しようとした罪を認定し、死刑判決を下した。
同被告は2014年に逮捕され、昨年11月、地裁で懲役15年と罰金15万元(約240万円)の判決を受けていたが、12月に行われた控訴審で、一審の量刑は軽過ぎて不当との検察側の主張を高裁が認め、地裁で差し戻し審が行われていた。...
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『AFP通信』『ロイター通信』など多くのメディアが報じた。中国・遼寧省の大連市中級人民法院(地裁)は14日、麻薬密輸罪に問われたカナダ人男性のロバート・ロイド・シェレンバーグ被告(36)に対し、国際的な麻薬密輸組織の主犯格として、約222キロの覚醒剤を中国からオーストラリアに密輸しようとした罪を認定し、死刑判決を下した。
同被告は2014年に逮捕され、昨年11月、地裁で懲役15年と罰金15万元(約240万円)の判決を受けていたが、12月に行われた控訴審で、一審の量刑は軽過ぎて不当との検察側の主張を高裁が認め、地裁で差し戻し審が行われていた。シェレンバーグ氏は法廷で、自分は麻薬密売人ではなく、観光客として中国を訪問したと主張した。裁判は一部外国メディアにも公開され、カナダ大使館員も傍聴しており、判決に不服があれば、再度控訴できる。被告側弁護士によれば、シェレンバーグ氏は控訴の意向を示しているという。
カナダ当局は昨年12月、米国の要請に基づきバンクーバーで、中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)の孟晩舟最高財務責任者(CFO)を逮捕したが、中国当局はそれ以降、カナダ人を相次いで拘束しており、孟CFO逮捕への報復と考えられている。
今回の死刑判決を受けてカナダのトルドー首相は、記者団に対し、中国が「恣意的に」死刑を適用したことは、カナダ政府として「極めて遺憾」であると表明した。中国外務省は、本裁判が政治的に利用されたことはないと、孟CFO逮捕との関係を強く否定した。
中国はこれまで麻薬関連で、日本人を含む外国人に対し死刑を執行したことがあるが、量刑の厳罰化を求めて差し戻し審が行われるのは異例だ。しかし、人権団体は、中国の裁判所は独立性が保たれず、共産党の影響を受ける可能性があると指摘している。
両国の関係は悪化しており、今回の死刑判決で対立は一層激化するとみられる。カナダ政府は14日、判決を受けて、中国に渡航する同国国民に対し、「現地の法律の恣意的な執行のリスク」のため、高度の注意を払い警戒するよう呼び掛けた。中国政府は15日、トルドー首相の発言を無責任と批判し、自国民のカナダへの渡航について注意喚起した。
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