国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は19日、世界各地で戦争や迫害などにより国外に逃れた難民や難民申請者、国内避難民が昨年末で7000万人を超え、約70年前に統計を取り始めて以来、最多記録を更新したことを明らかにした。
UNHCRは20日の「世界難民の日」を迎えるに当たり、年次報告書「グローバル・トレンド(Global Trends)」で世界の難民などの現状について公表し、
『AFP通信』や
『BBC』『CNN』『ユーロニュース』など多くのメディアがその内容を報じた。
同報告書によると、内戦や紛争、迫害などで住む場所を追われた難民や、国内避難民の数は、2018年に前年から230万人増の約7080万人となり、過去最多となった。この20年間でほぼ2倍に増えたことになる。内訳は、難民が約2590万人、国内避難民が約4130万人、難民申請者が約350万人で、世界人口の108人に1人が母国を追われ、毎日平均3万7000人ずつ増加している。また、2018年現在の難民の半数は子どもであるという。
難民については、3分の2以上がシリア、アフガニスタン、南スーダン、ミャンマー、ソマリアの5カ国の出身者で占められている。シリアの難民数は670万人で圧倒的に多く、アフガニスタンが270万人でこれに続いている。
国を追われた難民・避難民の総数は2009年には4330万人だった。これが昨年末に7080万人にまで増加した最も大きな原因がシリアの内戦であり、2012~15年までの間に多くの国民が国外に逃れた。また、人道的・経済的危機が深刻化するベネズエラでは、これまでに400万人超が国外に脱出したと見積もられるが、今回の数字にはその一部しか反映されておらず、実際の人数はさらに多いと国連は説明している。
米国はトランプ政権が難民・移民受け入れの抑制策を取っているが、25万4300件の難民申請を受け付け、申請先としては最も多かった。但し、難民の受け入れ数が最も多いのはトルコの370万人で他を大きく引き離し、5年連続のトップだった。以下、パキスタン(140万人)、ウガンダ(120万人)、スーダンとドイツ(各110万人)が続いた。
UNHCRのグランディ難民高等弁務官は、報告書の発表にあたり、難民らの長期的な増加傾向は明らかであり、現代における最大の課題の1つであるとして、国際社会に連帯と支援を訴えた。また、難民受け入れに積極的な国々を称賛するとともに、壁の建設や国境閉鎖による拒絶などは問題を解決しないと、受け入れに消極的な先進諸国を批判した。
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