カタールは、中東で初めてサッカーワールドカップ(WC、1930年開始)を開催する栄誉に慕っている。しかし、2200億ドル(約30兆円)かけて造った競技場や関連インフラ建設に投入されたアジアからの移民労働者に対する人権侵害問題で、国際人権団体のみならず欧州諸国のサッカー協会からも厳しい非難の声が上がっている。
11月30日付
『ロイター通信』は、「カタールWC2022開催の裏で、どれ程の移民労働者が死亡しているか?」と題して、中東初のWC開催に沸くカタールで、諸インフラ設備建設に関わったアジアからの移民労働者に対する人権侵害問題について詳報している。
中東のカタールは、人口約290万人を抱えるが、その8割以上が移民労働者で占められる。
そのカタールは、中東初のWC開催の栄誉に慕っているが、それと同時に、深刻な人権侵害問題で国際人権団体から厳しい目を向けられている。...
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11月30日付
『ロイター通信』は、「カタールWC2022開催の裏で、どれ程の移民労働者が死亡しているか?」と題して、中東初のWC開催に沸くカタールで、諸インフラ設備建設に関わったアジアからの移民労働者に対する人権侵害問題について詳報している。
中東のカタールは、人口約290万人を抱えるが、その8割以上が移民労働者で占められる。
そのカタールは、中東初のWC開催の栄誉に慕っているが、それと同時に、深刻な人権侵害問題で国際人権団体から厳しい目を向けられている。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(AI、1961年設立、本拠ロンドン)がリリースした「実情調査2021」によると、カタールでは2014年に一部労働慣習が見直されたものの、雇用主が移民労働者の賃金を保留したり、転職する際に当該労働者に罰金を科す等の悪行が依然横行しているとする。
カタール政府は、労働環境改善の途上にあるとしながらも、数千人の移民労働者が騙されて搾取されているとの報告を否定した。
英国の『ガーディアン』紙は昨年、カタールがWC開催地として選ばれた2010年以降現在までに、WC関連施設等の建設に携わった移民労働者のうち少なくとも6500人が死亡していることが公式記録より判明したと報じている。
これに対して同政府は、死者数が多いのは人口比移民労働者数が非常に高いことがあるとした上で、当該数には肉体労働者ではない人(すなわち建設作業に携わっていない人)も含まれていると反論している。
国際労働機関(ILO、注後記)カタール支部のマックス・タノン代表は、カタールにおける移民労働者の死亡報告書はしばしば必要不可欠な情報が欠落したままであると警鐘を鳴らしている。
しかし、カタールWC運営委員会は、競技施設建設現場での作業員の死者数は3人だけで、建設作業に無関係な死亡者(例えば病死や交通事故死)は34人だったと主張している。
ただ、ハッサン・アル=サワディ委員長は11月30日、英国人ジャーナリストのピアーズ・モーガン氏(57歳)のインタビューに答えて、WC施設等の建設作業に関わった移民労働者の死者数は“400~500人”だと認める発言をしている。
カタールは、「カファラ」と呼ばれた、雇用主が保証人となり仕事やビザ発給を管理し、転職や本国への帰国等にも雇用主の許可が必要とする悪慣習を撤廃し、労働環境の改善に努めているとするが、国際人権団体によれば、改善は不十分で、移民労働者は依然不当な扱いを受けていると非難している。
一方、WC開催前に、英国やドイツ等欧州10ヵ国のサッカー協会がWC主催者の国際サッカー連盟(FIFA、1904年設立、本部スイス・チューリッヒ)に公開質問状を出し、カタール在住の移民労働者の人権問題改善のためにILOが積極的に動けるよう支援すべきだと訴えている。
また、AI他人権団体もFIFAに対して、WC賞金相当の4億4千万ドル(約616億円)を、人権侵害を被っているカタールの移民労働者への補償に投じるべきだと要求している。
なお、FIFAは、AIの調査報告等について、“労働者保護の一環で前例のない適正評価の作業”を進めているとしながらも、“関連委員会を立ち上げて、多くの労働者への補償を行っている”とコメントしている。
(注)ILO:国際労働基準の制定を通して世界の労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする、国際連合の専門機関。1919年に国際連盟に創設され、国際連合において最初で最古の専門機関である。本部はスイスのジュネーヴ。ILOはこれまで、結社の自由、団体交渉権の効果的承認、強制労働の撤廃、児童労働の廃止、差別の撤廃を擁護してきた。1969年には、国家間の友愛と平和に貢献し、労働者の働く意義と正義を追求し、途上国に技術支援を行ってきたことが称えられ、ノーベル平和賞を受賞している。
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