4月19日公表のCevipofの第1回投票の世論調査によれば、ル・ペン候補は22.5%(4月上旬比-2.5%)、マクロン候補は23%(4月上旬比-2%)、メランション候補は19%、フィヨン候補は19.5%だった。また第2回投票ではマクロン候補はル・ペン候補に勝つとしている。投票結果を左右する棄権予定者の割合は28%と1/3に近く、記録的な高水準に近い。Opinionwayによる世論調査でもマクロン候補は第2回投票でル・ペン候補に対し65%対35%で勝つとしている。BVAの世論調査では第1回投票ではマクロン候補が24%、ル・ペン候補が23%、フィヨン候補とメランション候補は19%で並んだ。また棄権予定者の割合は20%~24%だった。
今回の大統領選挙の候補者数は11名。最新の各種世論調査による上位4候補のプロフィールと近況は以下の通り。
(1)マリーヌ・ル・ペン:極右政党の国民戦線党首。反EU、反ユーロ、反移民、フランス第一主義、保護貿易、同性結婚の廃止を掲げ、党の伝統的な反福祉姿勢からの脱却を訴え右派に加え左派の労働者階級にも支持を広げる。欧州議会議員でもあるが雇用する職員の給与を巡りEUから調査を受けている。4月に第二次世界大戦中にフランスが独ナチス収容所へユダヤ人を移送した責任がフランス政府に無いと発言したことで批判された。
(2)エマニュエル・マクロン:中道系の政治運動「前進」設立者。前経済・産業・デジタル相。国による保護と企業寄りの規制緩和策を組み合わせた以下の政策を掲げる。特殊財産税の撤廃、起業家精神の奨励、法人税の削減、労働法の緩和や、またインフラ整備、職業訓練、再生可能エネルギー等への公的投資計画に500億ドルを投ずるとしている。アルジェリアのフランス植民地時代、独立戦争で150万人のアルジェリア人が亡くなったことについて人道に対する罪と呼んだことを、右翼の攻撃を受け一転謝罪した。
(3)フランソワ・フィヨン:共和党。元首相。5年ぶりに主流の中道右派の政権復帰を目指す。公共支出・公務員数の削減を提唱。週35時間労働制の廃止、公務員の50万人削減、公共支出の大幅削減(1000億ドル超)を公約。中絶、代理出産、同性結婚に反対。移民の抑制を求める。イスラム全体主義に対するロシアとの同盟を求める。しかし家族を議員秘書として雇用するも勤務実態がほとんど無かったとのスキャンダルが暴露される。
(4)ジャン・リュック・メランション:急進左翼の共同党党首。1060億ドルの税金と歳出に関する経済プログラム、大統領制から議会制への変更、NATOからの脱退、ウクライナとシリアでのロシアの軍事行動の支援し、EUからの離脱か条件の再交渉を公約。テレビ討論会でル・ペン候補と衝突した際に見せた激しい演説と強いパフォーマンスで世論調査で支持率が3月後半以降急上昇している。
フランスは現在以下の問題を抱える。
雇用:失業率(約10%)はユーロ圏平均の9.5%より高く、英独の2倍以上。硬直した労働市場とフルタイム従業員の雇用に関する高率な税制のため青少年の失業率は25%と更に高い。
経済:低迷する経済の中で起業家と6万人の富裕層は規制と高税率を嫌い、フランスを去った。
安全保障:2015年にイスラム過激派のテロにより350人以上の人々が犠牲になり、2015年5月現在、約1,800人のフランス人がISIS等の他の過激派グループに加わっておりテロへの懸念はフランスで深刻な問題となっている。
移民:欧州最大の少数派イスラム系住民のいる国家で、大都市の郊外のスラムにこれらの住民がおり国民の不安が高まっている。2016年に85,000件以上の移民の申請が行われた。国民の47%がイスラム系住民のコミュニティを脅威と感じている。
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