<一票の格差>
政府の衆院議員選挙区画定審議会は4月19日、衆院小選挙区の新しい区割り案をまとめ、安倍晋三首相に勧告した。
一票の格差をめぐり、最高裁が直近3回の衆院選に対して、いずれも「違憲状態」と判断したことに伴い、国会が2016年5月、小選挙区を“0増6減”、比例区を“0増4減”(定数は475人から465人に削減)する衆院選挙制度改革法を成立させたことから、今回の区割り改定措置が講じられようとしている。...
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<一票の格差>
政府の衆院議員選挙区画定審議会は4月19日、衆院小選挙区の新しい区割り案をまとめ、安倍晋三首相に勧告した。
一票の格差をめぐり、最高裁が直近3回の衆院選に対して、いずれも「違憲状態」と判断したことに伴い、国会が2016年5月、小選挙区を“0増6減”、比例区を“0増4減”(定数は475人から465人に削減)する衆院選挙制度改革法を成立させたことから、今回の区割り改定措置が講じられようとしている。
今回の区割り改定案が法制化されれば、従来の1票の格差“2.18倍”が“1.999倍”と、最高裁が問題視した“2倍以上”が是正されることとなる。
一方、参院選挙制度改革については衆院のそれより早い対策が講じられていて、2015年7月に“10増10減”(定数は242人のまま)とする公職選挙法改正案が法制化され、2016年7月の参院選挙で実際に適用され、一票の格差は、これまでの“4.75倍”から“2.97倍”に是正されている。
最高裁の判断に従えば、参院選挙制度の改革も、引き続き改善検討されることになろうが、海外の例(参院に当る上院の現状)をみてみると、地域代表とみるか、国民全体の代表とみるかによって、一票の格差に格段の違いがある。
“地域代表とみる国”
●スペイン 約144倍:1978年の新憲法施行に伴い、各地域の声をしっかりと国政に届ける制度が必要との世論の声が強い。
●米国 約70倍:地域間の発言権を公平にするため、各州2名選出する制度となっている。1787年上院制定当時、格差は約12倍であった。なお、人口が最大のカリフォルニア州(約3,800万人)と最少のワイオミング州(約57万人)間では、割当て予算の絶対額では当然前者と後者間では大差があるが、一人当り予算配分では後者が優遇されており、人口格差によって地域間の不平等を防ぐ結果になっている。
●スイス 約42倍
●メキシコ 約27倍
●豪州 約14倍
“国民全体の代表とみる国”
●イタリア 2.41倍
●ポーランド 1.71倍:人口に応じて各選挙区の定数を決定。
●チェコ 1.39倍:過去の民族対立の影響から、地域の代表として議員を選ぶことにより、民族対立が再燃することを懸念。従って、選挙に合せて選挙区ごとに人口点検し、基準を超えた場合は区割りを見直してきており、現在では、行政上の区分と区割りは必ずしも一致しなくなっている。
なお、誠に極端な例であるが、国連における加盟国間の一票の格差は1万倍以上となっている。
すなわち、人口10万人以下の国も、10億人以上の国も1票しか与えられていない訳だが、当然のことながら、人口格差によって各国間の公平性が損なわれないようにするためである。
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