その結果、プーチン政権によって管理されるメディアやネット上に誹謗中傷をばらまく者たちは仏大統領選挙で、プーチン政権とその外交政策を批判した唯一の候補者である中道系マクロン候補に攻撃を集中させた。今年の初め、プーチン政権の運営するメディアによる偽のスキャンダルニュースでマクロン候補の信用を失墜させようとしたとしてマクロン候補はロシアを非難した。それはジュリアン・アサンジがまもなく 仏大統領選挙にウィキリークスで火をつけると報じられた直後であったのでマクロン候補が対象となったと世間では解釈された。仏当局はその決定的な証拠を見つけられなかった。これとは対照的にフランスのプーチン露大統領を支持するソシャルメディアは、ル・ペン候補、フィヨン候補、そして最近ではメランション候補への賞賛であふれている。
ル・ペン候補は、3月にロシアを訪問しプーチン露大統領と会談したことで国際的に知名度を向上させ、両者の考えが反EU、反急進派イスラムの点で近いことを示した。報道によれば2014年にロシアの銀行から選挙資金として900万ドル以上の融資を受けているとされる。
オランド仏政権はシリアのアサド政権の残虐行為にプーチン露政権が共謀したことを長年非難してきたが、フィヨン候補はプーチン露大統領の責任を一貫して否定し、仏露がイスラム国に対する同盟国となるべきだとしている。またロシアのクリミア併合を肯定している。フィヨン候補は2015年にプーチン露大統領とレバノン人の実業家の会合を取り持ち5万ユーロ受け取ったと報じられている。
メランション候補もシリアでのロシアやアサド政権の戦争犯罪を非難せず、ウクライナ問題についてプーチン政権の対応に同意している。欧州の国境を議論する国際会議をロシアも含めて開くべきだと提案している。
フランスとロシアの関係は他の西洋諸国と歴史的、文化的に異なり、共産主義は第二次大戦後フランスで強力な政治力を持ち、反米感情が続いた。最近のフランスはプーチン露大統領にイデオロギー的に近づく一方で抑圧的なプーチン政権はフランス国民の間で非常に不評である。
フランス当局者は仏大統領選挙でロシアの干渉を警戒しており、サイバーセキュリティを高める対策が講じられている。2月に仏外相はロシアによるサイバー攻撃と国民の生活に干渉することを容認できないと非難した。フランスの諜報機関の高官は、ロシアは長い間、積極的な諜報活動を行っており、現在冷戦時よりもスパイ活動、秘密工作が多いとしている。ロシアの選挙への干渉は米国では重要な政治問題となっており、英国のEU離脱やオランダやドイツの反EUを掲げる政党に対するロシアの動きに関心が高まっている。現在ロシアが反自由主義を鼓舞し、西側民主主義諸国間に楔を打とうと戦略的関心を持ち、その重要な対象国としてEUやNATOの重要な加盟国であるフランスは見られている。しかしこの重要な国際問題が仏大統領選挙戦ではほとんど注目されておらず、国家財政、政治家の道徳のみが注目されている。
ロシアのこういった活動の成功の理由は、対象国に応じて使用する戦術と技術を開発する能力であり、その戦術や技術には微妙な違いがあり、西側諸国には理解できないものだとロシアの専門家は述べている。
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