<自殺死亡率>
安倍政権はこの程、5年に1度見直す新たな自殺総合対策大綱において、人口10万人当りの自殺者数を示す「自殺死亡率」を、2015年の18.5から今後10年間で3割以上減らし、13.0以下とする目標を打ち出すとしている。
自殺者が減らない若者対策では、学校へのカウンセラー配置の推進を、中高年には、仕事の斡旋・生き甲斐等身近に寄り添う政策を更に強化していく意向である。...
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<自殺死亡率>
安倍政権はこの程、5年に1度見直す新たな自殺総合対策大綱において、人口10万人当りの自殺者数を示す「自殺死亡率」を、2015年の18.5から今後10年間で3割以上減らし、13.0以下とする目標を打ち出すとしている。
自殺者が減らない若者対策では、学校へのカウンセラー配置の推進を、中高年には、仕事の斡旋・生き甲斐等身近に寄り添う政策を更に強化していく意向である。
ただ、昨年2月29日付当コラムNo.17「自殺と社会情勢」の中で述べたとおり、直近20年間で15~24歳若年層の自殺者は増加の一途である。いじめや過重労働の蔓延に加えて、大学生の就職挫折、雇用の非正規化による閉塞感などに伴い、うつ病・統合失調症・仕事疲れなどによって自殺に追い込まれたとみられる。
従って、2013年に施行された「いじめ防止対策等推進法」の現実的対応・強化はもとより、内閣府が推進している“社会的な取り組み”、“心の健康づくり”、“国民一人ひとりの気づきと見守り”等のプロジェクトの広範囲の徹底、更には、毎年9月10日の「世界自殺予防デー(注後記)」に合せた、自殺予防週間や自殺対策強化月間においての、職場におけるメンタルヘルス対策の推進・生活困窮者への支援の充実等を、益々きめ細かく実施していくことが望まれる。
なお、厚生労働省のデータによれば、直近では7年連続で減少してきているとするが、後述せるとおり、世界保健機関(WHO)の171ヵ国データによる世界平均(11.4)より遥かに高く、経済協力開発機構(OECD)先進34ヵ国においても、韓国(28.9)に続いて高いレベルで推移している。
「日本の自殺死亡率推移」
・1958年: 25.7(過去最高値)
・1960年代: 15.0以下
・1970~80年代初:15~18で推移
・1990年代: 16~19で推移
・1998年: 25.4(過去3番目の最高値)
・2003年: 25.5(過去2番目の最高値)
・2010年代: 19.5から漸減
・2015年: 18.5
「世界の自殺死亡率ランキング(WHO 2015年データ)」
(1)ガイアナ(南米北東部):44.2
(2)韓国: 28.9
(3)スリランカ: 28.8
(4)リトアニア(バルト海):28.0
(5)スリナム(南米北東部):27.8
(11)インド: 21.1
(14)ロシア: 19.5
(17)日本: 18.5
(47)フランス: 12.3
(50)米国: 12.1
……世界平均: 11.4
(70)カナダ: 9.8
(77)ドイツ: 9.2
(94)中国: 7.8
(105)英国: 6.2
(128)イタリア: 4.7
(170)シリア・サウジアラビア:0.4
*ラテン系の奔放性や中東諸国の戒律(イスラム教では自殺禁止)の厳しさから、自殺率は総じて低い。なお、アフリカや東南アジアではデータがない国が多く、含まれず。
(注)世界自殺予防デー:WHOが2003年の会議で導入を決定。毎年、自殺防止に関する報告書を発行して、自殺者削減のキャンペーンを展開。WHOでは、2020年までに世界171ヵ国平均11.4を10%削減することを目標に設定。
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