米国の国土安全保障省は22日、2015年10月から2016年9月までの1年間に、約74万人の海外からの入国者が、与えられたビザの期限を超過して不法に滞在していたと発表した。
トランプ大統領は、メキシコとの国境に壁を築き、より多くの国境警備員を雇うために何十億ドルもの金を費やすことを提案したが、合法的に入国し、ビザの有効期限が切れた後にも滞在する人々を対象とするものではない。海外から米国に入国、滞在するおよそ1,100万人の内、40%がビザの有効期限を超えて不法滞在しているものと推定されている。同国の不法滞在者としては相当の数であるが、入国が不法な場合と比較すると、その数字の重みが見逃されがちだ。...
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トランプ大統領は、メキシコとの国境に壁を築き、より多くの国境警備員を雇うために何十億ドルもの金を費やすことを提案したが、合法的に入国し、ビザの有効期限が切れた後にも滞在する人々を対象とするものではない。海外から米国に入国、滞在するおよそ1,100万人の内、40%がビザの有効期限を超えて不法滞在しているものと推定されている。同国の不法滞在者としては相当の数であるが、入国が不法な場合と比較すると、その数字の重みが見逃されがちだ。
2015年10月から2016年9月まで、飛行機または船舶で到着した訪問者5,000万人強のうち、アラスカ州の人口を上回る739,478人がビザの有効期限を超えてそのまま滞在していた。陸路での出入国も含めれば、超過滞在者の全体数が大幅に増加する筈だが、それはこの統計では把握されていない。739,478人の内、628,799人については出国記録がないため、引き続き国内に留まっている可能性がある。
国境で陸路での出入国者を把握するシステムを開発するための技術的なハードルは高く、コストも膨大となることが予想される。昨年、国土安全保障省はサンディエゴのメキシコ国境で顔認証システムを実験的に導入したが、技術的に使用可能か、全米に展開できるか等については、明らかにされていない。なお、空港では2016年にアトランタで顔認証を使うシステムを先行して導入し、今後他の7空港で使用を開始する計画がある。
トランプ大統領は、昨年の選挙運動中に、顔や虹彩スキャンなどの生体認証を使ったシステムの構築を約束したが、今では前述のとおり、壁の構築や国境警備員を多く雇用することにより力点を置いている。入国管理局のシステムは非常に旧式で、27の別々のデータベースに当たる必要があり、これらにログインやログアウトを繰り返す等、時間を無駄にしている。ビザの滞在期限を超過して滞在することが疑われる外国人を追跡して取り締まろうとしているのに、既に多くの人が出国してしまっているという。
国土安全保障省は、昨年この20年で初めて超過滞在者の数を公開した。2014年10月から2015年9月までの期間では、航空機または船舶で入国した527,127人がビザの期限を超過して滞在していた。
昨年の報告書では、ビジネス客や観光客のみの数字を扱っていたが、今回は学生や交流訪問者、一時的な労働者のための多くのビザを与えられた訪問者の数字が追加された。同省は、問題となっている陸路で国境を渡る人々に関するデータを加えるなど、今後報告書のさらなる改善を行っていくと述べている。
今回の報告書によると、2015年10月から2016年9月に飛行機または船舶で入国した5,040万人の訪問者のうち、ビザ有効期限の超過滞在者は1.5%を占めている。カナダがビジネス客や観光客の違反が多くトップで、メキシコ、ブラジル、ベネズエラ、英国、ドイツ、コロンビア、中国、インド、イタリアがトップ10であった。カナダとメキシコの2か国では合計182,000人の違反者がおり、これは全体の23%に上るが、米国内になお留まっている人の率は比較的低く、それぞれ1.33%、1.52%だった。
超過滞在率は、学生や交流訪問者が非常に高かった。約150万人の内79,818人(5.5%)が違反し、約41,000人がそのまま国内に留まっている。国内に留まっている違反者の率は、その他のビザ所持者の2倍にもなる。中国は学生の違反が最も多く、続いてサウジアラビア、韓国、インド、ブラジルが続いた。超過滞在率は国により大きく異なるが、ビザ免除プログラムで滞在している人が多い国が高かった。
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