既報どおり、北朝鮮に1年半余り拘束された後、昏睡状態のまま解放された米国人学生オットー・ワームビア氏(22歳)が6月19日に死亡した。そして、北朝鮮は国営メディアを通じて、同氏の死亡に北朝鮮は全く責任はなく、かつ、人道的理由による被疑者の解放に対して、米韓などが虐待・拷問をしたためとする誹謗中傷を非難するとの声明を発表した。過去の日本人拉致や、韓国向け砲撃等、自国の犯罪・暴挙について、いつも自分勝手な正当性を訴えてきていることから、今回の北朝鮮の声明は大方の予想どおりではある。
6月24日付米
『AP通信』:「北朝鮮、米国人学生は“最大の犠牲者”と声明」
北朝鮮は6月23日、国営メディア
『朝鮮中央通信』を通じて、長い間拘束されて過日昏睡状態のまま解放された後に死亡した米国人学生について、“最大の犠牲者”だとの声明を発表した。そして、その死亡原因が虐待や拷問によるとする米韓の中傷について、“人道的理由”による解放決定を侮辱するものと非難した。
北朝鮮外交部(外務省に相当)報道担当官は、北朝鮮に敵対行為をはたらいた犯罪者であるが、同学生解放まで懸命に医療措置を講じたとした上で、解放時に訪朝した米医者の診断でも、同学生の脈拍・体温・呼吸、更に心臓・肺の機能は正常であった、と主張した。...
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6月24日付米
『AP通信』:「北朝鮮、米国人学生は“最大の犠牲者”と声明」
北朝鮮は6月23日、国営メディア
『朝鮮中央通信』を通じて、長い間拘束されて過日昏睡状態のまま解放された後に死亡した米国人学生について、“最大の犠牲者”だとの声明を発表した。そして、その死亡原因が虐待や拷問によるとする米韓の中傷について、“人道的理由”による解放決定を侮辱するものと非難した。
北朝鮮外交部(外務省に相当)報道担当官は、北朝鮮に敵対行為をはたらいた犯罪者であるが、同学生解放まで懸命に医療措置を講じたとした上で、解放時に訪朝した米医者の診断でも、同学生の脈拍・体温・呼吸、更に心臓・肺の機能は正常であった、と主張した。従って、解放後間もなく急逝するとは、全く“不可思議”だとも強調した。
一方、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が今週初め、米国人学生の死亡は北朝鮮の責任であるとし、この機会を捉えて、韓国市民6人を含めた北朝鮮が拉致した人々の即時解放を求めたことに対して、北朝鮮側は、この文氏コメントを非難した上で、韓国こそ、昨年拉致した北朝鮮レストランの従業員12人の解放を求めた。なお、韓国側は、北朝鮮従業員が自ら韓国に亡命してきたと反論している。
6月23日付フランス
『フランス24』オンラインニュース(
『ロイター通信』配信):「北朝鮮、米国人学生の死亡は“不可思議”とコメント」
北朝鮮外交部報道官は6月23日、米国人学生の死亡について、オバマ前政権が全く解放を要求してきておらず、“前政権の政治的戦略の犠牲者”だと語った。また、同報道官は、同学生の解放時の健康状態は問題がなかったのに、解放後1週間内に死亡するとは、北朝鮮にとっても不可思議な事態だともコメントした。
なお、解放後の同学生の治療に当っていた、シンシナティ大学医療センター関係者は、目下のところ死亡原因についての説明を控えており、一方、同学生の遺族は6月20日、オハイオ州ハミルトン郡検死官に対して、遺体の解剖をしないよう要請している。
同日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「北朝鮮、ワームビア氏死亡に責任はないとして、米国側非難を一蹴」
米医師団は、ワームビア氏遺体からは、北朝鮮が主張しているようなボツリヌス菌(嫌気性細菌で、低酸素で増殖)は発見されず、むしろ、酸素欠乏による重大な脳細胞の神経性損傷が認められるとしている。
一方、北朝鮮外交部は声明で、同学生については国内法及び国際基準に則って扱ってきていたとした上で、(北朝鮮を責める前に)米国は“軽挙妄動に端を発した事態の成り行きについて熟考すべき”だとして、北朝鮮が目下敵対行為の容疑で拘束している米国人3人のことを匂わせた。
6月24日付韓国
『朝鮮日報』:「北朝鮮、ワームビア氏への拷問を否定し、同氏は“最大の犠牲者”だと声明」
ワームビア氏死去後、北朝鮮が初めて
『朝鮮中央通信』を通じて声明を発表し、北朝鮮は同氏を国内法及び国際基準に則ってきちんと扱ってきており、同氏の死亡について何ら責任はなく、むしろ“最大の犠牲者”だとコメントした。
一方、同氏の遺族や多くの人が北朝鮮の行為について非難している。なお、遺族によれば、同氏は2016年3月に北朝鮮当局に拘束され、敵対行為の容疑で15年の強制労働を言い渡されてすぐ、昏睡状態に陥っていたと診断されたという。
一方、同日付英
『ミラー・オンライン』:「北朝鮮が米国人学生の死去を“不可思議”だと発表したことに対して、デニス・ロッドマンは同学生の解放自体は良い成果だったと主張」
元全米バスケットボール・リーグのスターだったデニス・ロッドマン氏は、これまで北朝鮮を訪問する度に、愚かな行い等と非難されてきた。ワームビア氏の死亡に当って、北朝鮮当局が“不可思議”な事態であり、かつ、当局側に一切責任はないと発表したことに対して、同氏はこれを支持するとコメントした上で、今回の同氏の訪朝によって、同学生がともかく解放されたことは悪いことではないとも強調した。
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