ウクライナ東部の親ロシア派反政府勢力は18日、中央政府からの独立を主張し、これまでに一方的に設立した2つの共和国を統合し、ウクライナに代わる新しい「国家」を樹立すると宣言した。憲法に関する住民投票後に建国し、国名は帝政ロシア時代に現在のウクライナ地域の大半を指した「マロロシア」(小ロシア)とするという。首都はドネツクに定める。AP通信等多くのメディアが伝えている。
ウクライナ東部の親ロシア自称共和国「ドネツク人民共和国」の指導者であるザハルチェンコ氏は、「ウクライナは、かつてのような国家として修復できない。」として、現在のウクライナ中央政府の正当性を否定し、一方的に「新国家」を樹立すると宣言した。新国家には、ロシアが併合したクリミア半島は含まれていない。憲法に関する住民投票を行い、首都は支配下のドネツクに置き、現在の首都であるキエフは「歴史的および文化的中心地」の地位に格下げするとしている。
しかしながら、もう一つの自称共和国「ルガンスク人民共和国」を支配する反政府勢力は、この提案の妥当性に疑念を抱き拒否しており、実現の可能性は非常に低そうだ。ロシア政府関係者も、単にそうした提案の議論に招かれた段階に過ぎず、「宣言に法的効果はない。」と述べて、現実的ではないと指摘した。プーチン大統領周辺は正式なコメントを出していない。
ロシアはこれまで、ウクライナで自称共和国を設立した反政府勢力を、公式には独立国家として承認していない。彼らに対し武器を供給したり、応援軍を派遣したりしていると批判されてきたが、これらを全て否定している。反政府勢力をできるだけ活用してウクライナ情勢を不安定化し、親欧州派の中央政府に対する圧力を維持しようとしていると見られている。
ウクライナ東部は、2014年にロシアがクリミア半島を併合し、親ロシア派の反政府軍が独立を宣言して以来、10,000人以上の市民が内戦の犠牲になっている。2015年にフランス、ドイツ、ロシア、ウクライナ4カ国が、ベラルーシの首都ミンスクでウクライナの停戦について合意したが、今回の「新国家」樹立の宣言は、この「ミンスク協定」に抵触する可能性もある。同協定は東部のドネツクやルガンスク等の工業地域に広範な自治を認める一方で、ウクライナ中央政府の統治下にあることを確認している。
今回の動きに対し、ウクライナ中央政府や欧州諸国は激しく抗議している。フランス外務省はロシアに対し、今回の宣言がミンスク協定違反であると認めるよう求めた。ウクライナのポロシェンコ大統領は18日、「ザハルチェンコ氏らはロシアの操り人形に過ぎず、宣言は実現させない。ロシアが背後で指示しており、ウクライナを分断させようとしている。」と強く非難している。ポロシェンコ大統領は、「ウクライナは停戦協定に従い、東部やクリミア半島の主権を回復するよう引き続き努めていく。」と述べた。
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