就任後半年を迎えるドナルド・トランプ大統領は、公約どおり、環太平洋経済連携協定(TPP)からも、また、パリ協定(地球温暖化対策協定)からも離脱を決定している。しかし、目下史上最低の支持率(7月時点で僅か36%)を更新し続けている大統領方針に敢然と立ち向かうべく、この程カリフォルニア州が、脱連邦政府の急先鋒として、独自の「温暖化対策法(注後記)」を可決、成立させた。
7月18日付米
『ザ・ヒル』政治専門紙:「カリフォルニア州、排出権取引制度適用法の延長を可決」
カリフォルニア州議会は7月17日、排出権取引制度を定めた“温暖化対策法”を2030年まで延長する改正案を可決、成立させた。同州議会は民主党が多数を占めるが、共和党議員の一部も、同改正案を強く主導するジェリー・ブラウン知事(民主党)を支持する賛成票を投じた。下院での採決結果は、55対21、上院でも28対22であった。...
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7月18日付米
『ザ・ヒル』政治専門紙:「カリフォルニア州、排出権取引制度適用法の延長を可決」
カリフォルニア州議会は7月17日、排出権取引制度を定めた“温暖化対策法”を2030年まで延長する改正案を可決、成立させた。同州議会は民主党が多数を占めるが、共和党議員の一部も、同改正案を強く主導するジェリー・ブラウン知事(民主党)を支持する賛成票を投じた。下院での採決結果は、55対21、上院でも28対22であった。
同州は、国内総生産(GDP)が世界で6番目と高く、トランプ政権率いる連邦政府による、オバマ前政権時代の“気候変動対策規定”を廃案とする方針に真っ向から対立しようとしている。
同日付英『ザ・ガーディアン』紙:「カリフォルニア州、民主・共和党共同で温室効果ガス削減関連法案の延長を可決」
カリフォルニア州が採択した“温暖化対策法”は、元々2006年にアーノルド・シュワルツェネッガー知事(当時、共和党)の時代に導入されたもので、企業等に温室効果ガス排出量制限を課し、これを超えた場合、罰金を払うか、あるいは、排出量に余裕がある他社から有償で権利を買い取るという、“キャップ&トレード”方式の排出権取引を定めた法律である。
今回の同法改定案を主導したブラウン州知事は、トランプ大統領のパリ協定離脱宣言に真っ向から対立していて、先月も中国を訪問して習指導部と会談し、パリ協定の発効に向けて協働していくことで合意している。
なお、同州の地方自治体の一部は、シェル・エクソンモービル・シェブロン・BPを相手取って、合計37拠点の石油・天然ガス・石炭生産拠点から発生した温室効果ガスによって、環境汚染が加速されているとして、同州最高裁に提訴している。訴状によれば、これら企業合計で、1960年代以降、二酸化炭素及びメタンガス全発生量の20%を占めているが、何ら対策を取ってきていないとしている。
一方、同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「米カリフォルニア州採択の法案は大気汚染防止に制限」
米カリフォルニア州の環境保護団体である食糧・飲料水監視団のアダム・スコウ理事は7月18日、同州が可決した“温暖化対策法”延長法案は、同法が定める“キャップ&トレード”方式によって、反って大気汚染削減を制限するものだと非難した。
同理事によれば、同法延長法案は、化石燃料排出企業のロビーイスト(背後の圧力団体から報酬を受けて、議員側に陳情していく専門家)によって作成されたもので、50以上の環境保護グループが反対していたものだという。
(注)温暖化対策法:排出権取引制度(*)を2020年から2030年まで延長し、企業への監視を強化し、かつ、環境汚染にはより厳しい罰則を科す法律。
(*)排出権取引制度:各国家や各企業に温室効果ガスの排出枠(キャップ)を定め、排出枠が余った国や企業と、排出枠を超えて排出してしまった国や企業との間で取引(トレード)する制度。
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