8月28日付Globali「南シナ海を取り巻く現況-シンガポールとマレーシア間の争い、フィリピンの中国海洋活動を甘受する動き等」の中で次のように報じた。すなわち、“8月21日に南シナ海で発生した、米海軍駆逐艦と民間タンカーの衝突事故の発生場所が、シンガポールとマレーシアが長く領有権争いを繰り広げている島嶼(ペドラ・ブランカ島)付近であったことから、改めて世界の注目を集める結果となっている。一方、フィリピンでは、中国が新たに、南シナ海のフィリピン寄りに位置する無人島の砂州に海軍や海警の船舶を送ってきているが、中比間の関係改善より問題とならないとしている。”そして、1ヵ月後の現在では、フィリピン海軍軍艦が同国排他的経済水域(EEZ)内で違法操業していたベトナム漁船に発砲して2人のベトナム人兵士が死亡する事件が発生し、両国間の新たな火種となっている。また、米国のマティス国防総省長官が訪印の上、中国牽制の目的でインド向けに最新兵器の輸出を提案している。一方、中国は長距離飛行可能な水陸両用無人輸送機を開発し、南シナ海人工島に駐留する兵士等への物資補給の増強を計画している。
9月25日付米
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』配信):「南シナ海を取り巻く現況」
先月に続いて、南シナ海を取り巻く現況につき報じる。
1.フィリピン海軍との衝突でベトナム人兵士2人が死亡
フィリピン海軍は9月23日早朝、同国のEEZ内で違法操業をしていた数隻のベトナム漁船と衝突し、その結果、漁船に同乗していた2人のベトナム兵が死亡した。
アラン・ピーター・ケイタノ外相は9月25日、1隻のベトナム漁船が軍艦に衝突してきたため、止むを得ず威嚇発砲したと発表した。...
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9月25日付米
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』配信):「南シナ海を取り巻く現況」
先月に続いて、南シナ海を取り巻く現況につき報じる。
1.フィリピン海軍との衝突でベトナム人兵士2人が死亡
フィリピン海軍は9月23日早朝、同国のEEZ内で違法操業をしていた数隻のベトナム漁船と衝突し、その結果、漁船に同乗していた2人のベトナム兵が死亡した。
アラン・ピーター・ケイタノ外相は9月25日、1隻のベトナム漁船が軍艦に衝突してきたため、止むを得ず威嚇発砲したと発表した。なお、同外相は、“公平かつ徹底的な”調査を行うとし、また、拿捕した5人のベトナム人漁師は手厚く扱うとしている。
2.中国とベトナム両国が国境安定化のため協議
中国とベトナムの軍代表が先週末、ベトナム北西端のレイ・チャウ省と中国南西部の雲南省(ユンナン)において、2日間にわたり国境安定化と両国間関係発展のための協議を持った。同地は、中国同盟国のカンボジアにベトナム軍が侵攻したことを理由に、1979年に中国軍がベトナムに進軍して以来、両軍の睨み合いが続く場所である。
3.中国、シンガポール首相の訪中契機に両国関係改善模索
習近平(シー・チンピン)国家主席は先週(9月21日)、シンガポールのリー・シェンロン首相の北京訪問を歓迎した。これを契機に、両国間の関係改善が模索される。
すなわち、シンガポールは南シナ海において領有権争いに関わっていないが、中国が全否定した昨年7月の常設仲裁裁判所の裁定を支持していた。また、シンガポールは長らく親米政策を取り、米軍の一時的受け入れ等を行ってきた。
そこで中国は、今年初めに北京で開催した、一帯一路新シルクロード政策関係国首脳会議にシンガポールを招待しなかった。
しかし、シンガポールでは中国移民(華僑)が多数を占め、また、両国間の投資・貿易高が急伸していることから、習指導部としては、同国との関係改善が重要と判断したものとみられる。
また、9月26日付英『デイリィ・メール・オンライン』(『ロイター通信』配信):「中国の覇権に対抗して、マティス国防相がインドとの連携強化」
インドを訪問中のジム・マティス国防総省長官は9月26日、ナレンドラ・モディ首相と会談し、アジアにおける中国の覇権主義に対抗していくため、インドとの国防上の連携強化を確認した。具体的には、インド向けに最新鋭の戦闘機・無人偵察機の輸出などが挙げられる。
米国政府は今年6月、北大西洋条約機構(NATO)外の国として初めて、インド向けに22機の無人偵察機“シー・ガーディアン”の輸出を許可している。インド海軍としては、インド洋に度々出没する中国の軍艦や潜水艦を偵察するのに有効としている。
また、インド空軍は、国境を越えて空爆が可能な無人爆撃機“アベンジャー・プレデター”90機の購入を求めている。特に、パキスタンが実効支配しているカシミール地区への配備を考えているものとみられる。
一方、同日付中国『チャイナ・デイリィ』:「中国、世界初の水陸両用無人輸送機を開発」
上海のUVSインテリジェンス・システムはこの程、世界に先駆けて、水陸両用の無人輸送機を開発し、事業化に漕ぎ着けた。
同社の劉建東(リゥ・チアントン)会長によれば、今年から中国内の宅急便会社及び東南アジアの顧客向けに、同機による輸送サービスを開始することになっているとする。
同機は、15時間余り水上で待機でき、巡航速度は毎時180キロメーター、飛行距離は2,000キロメーターにも及ぶ。また、一度に250キログラムの貨物が輸送可能であるので、南シナ海の人工島に駐留する中国兵などのために、物資の補給を頻繁に行うことができるとする。
更に、レーダー、水中音波探知機(ソナー)、ミサイルを搭載することができるので、同機を水上に待機させ、潜水艦などの探知も可能となるという。
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