フィリピンは世界最大のニッケル鉱石生産・輸出国である。そして、世界最大のニッケル鉱石需要国の中国は、その輸入量の8割以上をフィリピンに頼っている。しかし、親米から親中路線に舵を切ったロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、麻薬犯罪撲滅のために超法規的殺人をも許容しているにも拘らず、中国を袖にしてでも環境には優しい政策を進めようとしている。すなわち、今年4月に前環境天然資源相が打ち出した、大規模露天掘り非鉄鉱山開発差し止め措置を改めて支持・継続する旨表明した。
11月22日付米
『ロイター通信米国版』:「フィリピン、ドゥテルテ大統領が差し止め措置見直しの答申を拒否したため、露天掘り鉱山開発禁止措置が継続」
フィリピンのロイ・シマツ環境天然資源相は11月22日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の意向に基づき、新規露天掘り鉱山開発は引き続き禁止されると発表した。
新規露天掘り鉱山開発禁止措置については今年4月、レジーナ・ロペス前環境天然資源相が、新規露天掘り鉱山が環境破壊を引き起こす恐れがあるとして、大臣令(DAO)を発令していた。...
全部読む
11月22日付米
『ロイター通信米国版』:「フィリピン、ドゥテルテ大統領が差し止め措置見直しの答申を拒否したため、露天掘り鉱山開発禁止措置が継続」
フィリピンのロイ・シマツ環境天然資源相は11月22日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の意向に基づき、新規露天掘り鉱山開発は引き続き禁止されると発表した。
新規露天掘り鉱山開発禁止措置については今年4月、レジーナ・ロペス前環境天然資源相が、新規露天掘り鉱山が環境破壊を引き起こす恐れがあるとして、大臣令(DAO)を発令していた。このため、開発されればフィリピン最大規模となるフィリピン南部ミンダナオ島のタンパカン金銅鉱石露天掘り鉱山(総事業費59億ドル、6,610億円相当)も、開発が差し止められた。
ドゥテルテ大統領は11月21日晩、フィリピン鉱業審議会(MICC)の答申を拒否して、同DAOを継続するとコメントしていた。同大統領は、鉱山業からの収入より環境保全の方が重要だと語っている。
なお、シマツ大臣は、カルロス・ドミンゲス財務相とともに、MICCを仕切っていて、先月には同DAOの撤回を示唆していた。
同日付フィリピン『マニラ・タイムズ』紙:「ドゥテルテ大統領、露天掘り鉱山開発禁止措置は撤回しないと表明」
ドゥテルテ大統領は11月21日晩、鉱業からの700億ペソ(約1,560億円)の税収入よりも環境破壊リスク回避の方が重要だと述べた。
2012に設立されたMICCは今年10月、環境天然資源省のDAO撤回について理事の過半数が賛同していると表明していた。
なお、フィリピンにおける露天掘り鉱山開発は、1995年の新鉱業法が制定されて増産が図られた。露天掘り鉱山開発は国際的にも認められたものである。
しかし、ドゥテルテ大統領は今年9月にも、同DAOを発令したロペス前環境天然資源相の決定を支持するとして、後任のシマツ大臣にも露天掘り鉱山の閉山の見極めを指示したと語っていた。
(編注)ニッケル鉱石(ステンレス鋼・硬貨・充電式電池等の原料)の世界生産量は、①フィリピン、②カナダ、③ロシア、④豪州、⑤ニューカレドニア、⑥インドネシア(2014年1月からの非鉄鉱石禁輸政策により大幅落ち込み)。世界輸入量は、①中国(全体の過半数を占める大量輸入国)、②日本(中国の6分の1以下)、以降は極少量。
閉じる