今回の臨床試験は米シカゴのノースウェスタン大学によって主導され、欧州血液骨髄移植学会で中間報告が発表された。試験は過去にMSを再発したことのある100名以上を対象に行われ、52名の幹細胞移植を受けたグループと、50名の薬物治療を受けたグループに分けられた。それによると、1年後の再発が、幹細胞移植のグループは1名だったのに対し、薬物治療は39名だった。さらに3年後の再発は幹細胞移植グループが3名なのに対し、薬物治療は30名が再発した。さらに移植を受けた人々は症状の改善が見られたが、薬物治療は悪化が見られたという。
MSは免疫系が脳や脊髄の神経組織を攻撃して起こるものであり、視覚やバランス感覚、四肢の動きに影響が出る。英ロイヤル・ハラムシャー病院のジョン・スノーデン教授は「結果に興奮している。薬物治療に頼っていた患者の様相に変革を起こす。」と話した。また、これまで車いすで生活し、読むこともままならなかった患者も普段通りの生活を取り戻したと今回の結果を「奇跡」と評した。
MS学会のスーザン・コールハース博士は「今回の結果は重要であり、さらなる研究が必要であることを示している。」とし、「幹細胞移植が一部の人にとって効果を表したが、依然として、全患者向きではないリスクの高い治療である。」と今後について話した。その上で「幹細胞移植はすぐにイングランドで確立された治療法として認識されるだろうが、その時にその治療が有効的な人が確実に受けられるようにするのが優先事項だ。」と述べた。
幹細胞移植にかかる費用は約3万ポンド(約447万円)で、一部の薬物治療を1年間続けた場合にかかる費用とほぼ同じであるという。
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