ケニア中部のオル・ペジェタ自然保護区は20日、世界に1頭だけ生存していたキタシロサイのオスが19日に死亡したと発表した。これで保護区のメス2頭だけが残り、ほぼ絶滅に近い状況となった。
オル・ペジェタ保護区の声明によれば、死んだオスの名前は「スーダン」で、年齢はサイとしては高齢の45歳だった。1973年に南スーダンで生まれた元々は野生のサイで、生まれた時にはまだ約700頭のキタシロサイが生息していたという。
密猟により殺されないよう、24時間体制で警備員が見守っていたが、高齢に伴う合併症のため、皮膚が広範に傷つき、筋肉や骨が衰えていた。死ぬ前の24時間で状況が悪化し、立つこともできなくなってかなり苦しんでいたため、獣医師のチームが安楽死させる決断をした。...
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オル・ペジェタ保護区の声明によれば、死んだオスの名前は「スーダン」で、年齢はサイとしては高齢の45歳だった。1973年に南スーダンで生まれた元々は野生のサイで、生まれた時にはまだ約700頭のキタシロサイが生息していたという。
密猟により殺されないよう、24時間体制で警備員が見守っていたが、高齢に伴う合併症のため、皮膚が広範に傷つき、筋肉や骨が衰えていた。死ぬ前の24時間で状況が悪化し、立つこともできなくなってかなり苦しんでいたため、獣医師のチームが安楽死させる決断をした。
キタシロサイは、ウガンダ、中央アフリカ、スーダン、チャドなどのアフリカ中部に広く生息していたが、角が中国やベトナムなどのアジア諸国では漢方薬などの薬品として、イエメンでは短刀の柄などの工芸品として使われる需要があり、1970~80年代に密猟による乱獲で激減してしまった。
コンゴで最後に生き残っていた野生のキタシロサイ20~30頭も、1990~2000年代の紛争により死に絶え、2008年までに野生のキタシロサイは絶滅したと見なされた。その後、チェコのドブール・クラーロベ動物園にいたスーダンなどオス2頭、メス2頭の計4頭が、ケニアのオル・ペジェタ自然保護区に移され、野生の生息地に似た環境で繁殖の試みがなされたが、妊娠に至らなかった。もう1頭のオス「スニ」は2014年10月に自然死した。
残ったのはスーダンの子で28歳の「ナジン」と孫の17歳の「ファトゥ」のメス2頭だけとなった。スーダンの死は、理論的にはキタシロサイの絶滅を意味するが、スーダンの精子とナジン、ファトゥの卵子が冷凍保存されており、今後体外受精を試みて種の保護を図ろうとしている。
また遺伝子的には種が異なるが、オスのミナミシロサイとメスとの交配や対外受精により、キタシロサイの種を保存する試みもなされている。これまでのところ目途は立っていないが、科学的研究の進展が期待される。
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