【Globali】
ハリウッド映画の中国市場への拡大は米中間の貿易不均衡問題で中断か(2018/05/20)
昨日、5月19日、カンヌ映画祭で日本の是枝監督の「万引き家族」が映画祭の最高の栄誉であるパームドール賞を獲得したが、今回はハリウッド映画がアメリカのトランプ政権の米中間の貿易不均衡是正の動きの下でこれまでの中国市場拡大戦略に与える影響を調べてみた。
昨年からハリウッド映画観客数の中国での増加は鈍っている。これには米中間での貿易不均衡の問題が影を落としている。現在のところ、中国側へ輸入できるアメリカ製の新作映画本数について米中間の貿易均衡を達成する枠組みの一環として両国間で交渉中である。これからの交渉結果から中国の86億アメリカドル(=約9500億円)映画市場がハリウッド映画に開放されるかどうかは予断を許さない。北京映画アカデミーの副委員長のユー・ジャンホング氏によれば、外国映画の新作映画本数の多少は、中国映画産業にほとんど影響しないので、米中が妥協できるハリウッド映画上映数はたやすく決着できるとのことである。...
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昨年からハリウッド映画観客数の中国での増加は鈍っている。これには米中間での貿易不均衡の問題が影を落としている。現在のところ、中国側へ輸入できるアメリカ製の新作映画本数について米中間の貿易均衡を達成する枠組みの一環として両国間で交渉中である。これからの交渉結果から中国の86億アメリカドル(=約9500億円)映画市場がハリウッド映画に開放されるかどうかは予断を許さない。北京映画アカデミーの副委員長のユー・ジャンホング氏によれば、外国映画の新作映画本数の多少は、中国映画産業にほとんど影響しないので、米中が妥協できるハリウッド映画上映数はたやすく決着できるとのことである。
中国の映画館における年間のアメリカ映画の新作本数は現在のところ34本とされており、アメリカの映画配給会社の収益は興行収入の25%と定められていた。
この収入率25%は、他の国に比べて少なかったが、2016年から米中の文化交流の名のもとに収益が若干引き上げられた。2週間前、中国政府からアメリカの貿易不均衡の交渉代表団に渡された文書によると、アメリカ映画に対するさらなる市場開放は、今後の総括的な貿易交渉でのアメリカの譲歩しだいで充分可能であるとのことである。中国側は先週金曜日、5月18日にアメリカの中国へのトウモロコシ輸出に対するダンピング疑惑を取り下げるとともに、2000億アメリカドル(=約2.2兆円)に及ぶアメリカ側の貿易赤字に対する是正案を提出している。なお、関係筋によると、アメリカ映画の中国への輸入本数については昨年トランプ大統領によって米中の貿易不均衡取り沙汰されて以来、休止状態になっている。とはいうものの、アメリカの映画製作会社のウォルト・ディズニーやユニバーサル映画にとっては中国市場がこれからの重要な市場であることは変わりない。ちなみに、ユニバーサル映画の「ワイルド・スピード」は昨年の中国で第2番目の観客動員数を記録し、「アベンジャーズ・インフィニテイウォー」は2.51億アメリカドル(=276億円)の興行収益を収めている。
アメリカ映画製作者としては、年間の新作映画数34本を増やすこともさることながら、中国における映画興行収益率を25%近くから他の国での収益率と同様、45%に引き上げることを貿易交渉の最優先課題とするように関係当局に要求している。
いずれにせよ、アメリカ映画の中国市場への今後の進展に着目したい。
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