シリアのアサド政権軍は5月21日、首都ダマスカス南郊で抵抗を続けていた過激派組織イスラミックステート(IS)の残存勢力を完全に掃討したと宣言した。同政権軍は、2011年の内戦勃発以来7年振りに首都全体を掌握したことになるが、これにはロシア・イラン・トルコの後ろ盾が大きく貢献したと言える。そこでこれを面白く思わない米国は、イラン核合意離脱発表を契機に益々敵対するイランを懲らしめようと、シリア政府に対して、イラン軍をシリア領内から撤退させるよう要求してきた。シリア政府は当然のことながら、政権軍と敵対する反体制派を支援する米国など歯牙にもかけず、同要求を一蹴している。
5月23日付米
『AP通信』:「シリア政府高官、米国から出されたイラン軍のシリア撤退要求を一蹴」
シリア政府高官は5月23日、米国が伝えてきた、シリア領内からイラン軍及びレバノンのヒズボラ(注後記)を撤退させるようにとの要求を拒絶した。
シリア外務省のファイサル・メクダド副大臣が、ロシアメディアの『スプートニク・ニュース』に語ったもので、同政府の最大の関心事はシリア主権の回復であって、米国の要求など一切話題にはならないと明言している。...
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5月23日付米
『AP通信』:「シリア政府高官、米国から出されたイラン軍のシリア撤退要求を一蹴」
シリア政府高官は5月23日、米国が伝えてきた、シリア領内からイラン軍及びレバノンのヒズボラ(注後記)を撤退させるようにとの要求を拒絶した。
シリア外務省のファイサル・メクダド副大臣が、ロシアメディアの『スプートニク・ニュース』に語ったもので、同政府の最大の関心事はシリア主権の回復であって、米国の要求など一切話題にはならないと明言している。
マイク・ポンペオ国務長官は今週、イラン核合意に復帰するための諸条件を提示しているが、その中でイラン軍のシリアからの撤退を求めていた。
しかし、メクダド副大臣は、ロシア軍の助けはもとより、イランやヒズボラからの支援も“大変感謝”しているとして、それらの人たちにシリアから出ていくよう話すことなど決してできる訳はないと強調した。
一方、ロシアのアレクサンドル・ラブレンチェフ特命全権公使は、ロシア軍のシリア派遣は同政府から要請があったためであるが、勝手にシリア入りしている米軍等は法に反していると非難している。
ただ、同公使は、ロシアとしてはイラン及びイスラエルそれぞれと良好な関係を維持したいと考えているが、イスラエルがイランのシリア駐留を激しく非難し、両国間でミサイル攻撃の応酬となっていることに憂慮していると述べている。
同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「シリアからのイラン軍及びヒズボラの撤退要求など全く問題外の話」
メクダド副大臣は5月23日の当ニュースのインタビューに答えて、シリアの支援国であるロシアと敵対している国の要求など、決して呑める話ではないし、第一に米国は、シリア内のテロ組織(反体制派)を支援して、シリアへの介入を企んでいると非難した。
更に同副大臣は、米国は、イラン軍を撤退させて代わりにアラブ軍を駐留させようとしており、正にシリアと他アラブ諸国との対立を煽っているとしか考えられないともコメントした。
なお、これに先立つ5月21日、ポンペオ米国務長官は、イラン核合意に米国が復帰するための条件として、イラン軍のシリアからの撤退を含めて12の要求を発表している。
これに対して、イランのハッサン・ロウハニ大統領は、かかる要求など国際社会が認めるはずがないと強調し、また、イラン革命防衛隊司令官もこれを一蹴している。
(注)ヒズボラ:1982年に結成されたレバノンのシーア派イスラム主義の政治組織、武装組織。アラビア語で「神の党」を意味する。イランとシリアの政治支援を受け、その軍事部門はアラブ・イスラム世界の大半で抵抗運動の組織と見なされている。日本、欧州連合、米国等は、ヒズボラの全体または一部をテロ組織に指定している。
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