2011年の民主党政権時、欧州連合(EU)側と経済連携協定(EPA)に向けて予備的交渉を開始することが合意されてから7年後、この程漸く日本EU間EPA(JEFTA、注後記)が成立した。東日本大震災発生や、民主党から自民党への政権交代等もあって、さほど進展しなかった交渉も、2016年に米国第一主義を標榜するドナルド・トランプ大統領が就任して以降、日本・EU間で保護主義貿易政策に対抗するべく、2017年になって交渉が俄かに進展している。更に、直近でも、米国による日本及びEUの鉄鋼製品・自動車等への関税賦課政策が具体化されたこともあり、米対抗のための経済連携が焦眉の急となったことも挙げられる。すなわち、JEFTA成立の最大の功労者はトランプ大統領と言えなくもない。
7月19日付
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「ドナルド・トランプ大統領がEUをアジア志向に仕向ける」
日本とEUは7月17日、歴史的協定と呼ぶべきJEFTAを成立させた。ただ、同協定の成立には、ドナルド・トランプ大統領の諸政策が背景にあるとみられる。
すなわち、同大統領は、日本やEUの主輸出商品である鉄鋼製品や自動車に高関税を賦課する政策を打ち出している。そして更に同大統領は、7月15日のテリーザ・メイ英首相との会談において、EUを“敵”とまで呼び、Brexit(英国のEU離脱)に伴う損失について、同首相に対して、英国以外のEU加盟国を提訴すべきだ、とまで言及している。...
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7月19日付
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「ドナルド・トランプ大統領がEUをアジア志向に仕向ける」
日本とEUは7月17日、歴史的協定と呼ぶべきJEFTAを成立させた。ただ、同協定の成立には、ドナルド・トランプ大統領の諸政策が背景にあるとみられる。
すなわち、同大統領は、日本やEUの主輸出商品である鉄鋼製品や自動車に高関税を賦課する政策を打ち出している。そして更に同大統領は、7月15日のテリーザ・メイ英首相との会談において、EUを“敵”とまで呼び、Brexit(英国のEU離脱)に伴う損失について、同首相に対して、英国以外のEU加盟国を提訴すべきだ、とまで言及している。
そこで対米貿易問題を抱える日本とEUが、経済連携を強化したいと考えるのは当然のことである。かくして、EU農産品は日本向けに、また、日本製自動車はEU向けに、それぞれ新たな市場が開拓されることになった訳である。
一方、EUは同じく中国との間で経済連携を構築すべく、2015年から本格的交渉に入っている。ただ、JEFTAと違って、両者間にはまだ大きな隔たりがある。
特に、中国が欧州の先端技術企業を盛んに買収していることや、中国国営企業が国からの多額の援助を受けて欧州市場に食い込んできていることについて、欧州側が大きな懸念を抱いている。
EUが、世界貿易機関(WTO)において中国を“市場経済国”と認定することに反対しているのは、上述どおり、中国が公正な貿易を推進していないと評価しているからである。
なお、米国の保護主義であるが、トランプ大統領が交代することになれば、以前の多国間貿易政策に戻る可能性はある。しかし、EUとしては、次の米大統領の政策に期待するよりも、JEFTA成立含めて、アジア志向とする方が、よりリスクの少ない安全な方策だと判断したものとみられる。
(注)JEFTA:日本とEU間における、貿易や投資など経済活動の自由化のための経済連携協定。人口6億人を超える巨大市場をカバーすることから、EUが交渉妥結した中では最大の通商協定となる。なお、政治、グローバル課題、その他の分野別協力を目的にする日本・EU戦略的パートナーシップ協定は別の協定。
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