米ノースカロライナ大の研究者らは15日、米国では2004年以来1,800超の地方紙が廃刊に追い込まれ、公共問題などの地元情報が殆どあるいは全く得られない「ニュース砂漠」が拡大しているとの報告書を公表した。
同大のメディア・ジャーナリズム大学院による本研究は、2016年の調査結果をまとめた論文を改訂したものであるが、この15年で全体の20%以上の日刊または週刊の地方紙が廃刊あるいは他紙に統合され、地元報道に触れる機会が減ったと指摘した。その結果、「何千ものコミュニティーが、ニュース砂漠になる危険性がある。」と警告している。
今回の調査によると、全米の3,143郡の半数では、現在1紙しか新聞が発行されておらず、それも部数の少ない小規模な週刊紙である場合が多い。...
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同大のメディア・ジャーナリズム大学院による本研究は、2016年の調査結果をまとめた論文を改訂したものであるが、この15年で全体の20%以上の日刊または週刊の地方紙が廃刊あるいは他紙に統合され、地元報道に触れる機会が減ったと指摘した。その結果、「何千ものコミュニティーが、ニュース砂漠になる危険性がある。」と警告している。
今回の調査によると、全米の3,143郡の半数では、現在1紙しか新聞が発行されておらず、それも部数の少ない小規模な週刊紙である場合が多い。そして200近くの郡で全く新聞が発行されていないという。全米ではなお約7,100紙が発行されているが、現場や編集局の要員を大きく減らし、かろうじて生き残っているものも多い。
米国の新聞社ではまた、この10年で半数以上の経営者が交代しており、25の大新聞のネットワークが全ての新聞の3分の1を傘下に持つ状況となっている。研究者らは、「家族経営の新聞社が経営をあきらめて大新聞に身売りしたため、独立のオーナーの数が近年大きく減少した。」とその背景を説明している。
本研究により、かつて活況だった米新聞業界の苦境が改めて明らかになった。首都ワシントンのシンクタンク、ピュー研究所が今年発表した報告書でも、2008年以降ニュース関連の雇用が23%失われ、その殆どは新聞業界でのものとの調査結果が示されていた。
ノースカロライナ大の研究者らは、多くの地方紙が廃刊または統合されたのは、情報のデジタル化など新聞業界の改革によるところが大きいが、これによって自治体当局が、市民に情報を伝達し説明責任を果たすことが、より困難になったとしている。ニュースサイトやケーブルテレビなどが地元情報を伝えようと努力しているが、地方紙の穴を埋めるまでには至っていないのが現状だ。ネット上には全国や海外のニュースは豊富に流されているが、税金や教育、地方議会での政策の議論など、地域社会の重要問題の報道は減少した。
報告書はさらに、「地元ニュースに接する機会が最も少ないのは、しばしば最も立場の弱い人々であり、それは最も貧しく、最も教育水準が低く、最も孤立した層の人々だ。」との問題提起を行っている。
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