米トランプ政権と対峙する中国習政権にとって、日本を少しでも引っ張り込んで、日中対米国という縮図を構築することが優先課題と考えている模様である。東シナ海尖閣諸島領有権や自衛隊軍備増強・憲法改正気運等々で散々安倍政権を叩いてきたにも拘らず、見事に手のひらを反して、7年振りの日本国首相訪中を熱烈歓迎し、強力な経済連携体制を築き上げるとぶち上げている。一方、中印国境問題や、中国の“一帯一路経済圏構想(OBOR)”によるインド洋進出等、中国動向に人一倍神経を使うインドにとって、味方としたい日本が中国と親密になることは心穏やかでないとみられる。そんな折、13度目の日印首脳会談のため、モディ首相が10月28日より来日した。
10月28日付
『ザ・ディプロマット』オンラインニュース:「モディ首相と安倍首相の両首脳会談で日印関係はどう展開するか」
ナレンドラ・モディ首相は10月28日、安倍晋三首相との第13回日印首脳会談出席のために来日した。
両首脳は就任以来、直近5年間で新密度を高めてきている。昨年、インドで開催された首脳会談では、モディ首相がインド西部のグジャラート州(ボンベイを含む工業化が進んだ州)に安倍首相を招待し、歓待した。...
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10月28日付
『ザ・ディプロマット』オンラインニュース:「モディ首相と安倍首相の両首脳会談で日印関係はどう展開するか」
ナレンドラ・モディ首相は10月28日、安倍晋三首相との第13回日印首脳会談出席のために来日した。
両首脳は就任以来、直近5年間で新密度を高めてきている。昨年、インドで開催された首脳会談では、モディ首相がインド西部のグジャラート州(ボンベイを含む工業化が進んだ州)に安倍首相を招待し、歓待した。
これへの返礼とばかりに、今年安倍首相は、モディ首相を山梨県にある自身の別荘に招待し、更に親愛の情を示している。
また、今回の両首脳会談が契機となって、日印間で「物品・役務相互提供協定(ACSA、注1後記)」締結に向けての協議が本格化することが見込まれる。
両国間でACSAが合意されれば、海上自衛隊の戦艦等はインド東部のベンガル湾内諸島にあるアンダマン軍港やその南のニコバル軍港に寄港し、物資や燃料の提供が受けられることになる。一方、インド軍は軍艦の補修等で、日本の施設を利用することができるようになる。
なお、インドはこれまで、米国やフランスとACSAを締結しているが、日本ともACSAを締結することで、インド太平洋海域における日印関係の強化が一層図られることになる。
更に、今回の首脳会談を通じて、両国の経済連携強化も図られることになろう。
すなわち、中国が推し進めるOBOR政策によって、日本、インド各々にとって、中国によるインド太平洋~ユーラシア~アフリカへの進出が無視できない程大きなものになってきている。
そこで両国としては、「アジア・アフリカ拡大回廊協定(AAGC、注2後記)」締結に向けて、更に主導的役割を演じていく考えである。
なお、安倍首相は今週(10月25~27日)、日本の首相として7年振りに訪中し、習近平(シー・チンピン)国家主席らと会談して、“競争から協調へ”と新たな日中関係構築をアピールしている。
モディ首相としては、国境を接する中国と軍事的緊張問題を抱えているばかりか、OBORに伴う中国・パキスタン連合によるインド包囲網が大いに懸念されることから、日中関係の新たな展開は無視できない事態であろう。
ただ、在インド平松賢司日本大使は、インドが強国となることは日本にとって最善なことであることから、“そのために更に支援していく”と述べている。
従って、日印関係は長期的にみて、対米、対中関係にさほど影響されず、発展していくものとみられる。
(注1)ACSA:元々、米国が北大西洋条約機構(NATO)加盟国と1980年代に締結したもので、駐留軍の物品などの物流、食料・燃料補給などの支援等々を相互に協力すること。軍隊派遣までは含まないが、戦艦の寄港受け入れ、兵員の宿舎などの手配等で支援することを目的としたもの。
(注2)AAGC:日本とインドが主導して2017年5月に協議を始めたもので、東南アジア諸国連合(ASEAN)及びアフリカ諸国を含めて、大規模・広範囲の経済協力を推し進めようとする構想。
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