欧州連合(EU)の基本権機関が、EU諸国に住むユダヤ人を対象とした過去6年の調査結果を発表。各国で反ユダヤ主義が広まっており、身の安全のために移住を検討するものも多いという。憎悪犯罪やネット上でのハラスメントも増えているという。
12月10日付英国
『ガーディアン』は「英国政治で反ユダヤ主義がEU内最悪との調査結果」との見出しで以下のように報道している。
基本的権利に関するEUの調査によると、英国の5人に4人のユダヤ人が、反ユダヤ主義が英国の政治で大きな問題だと回答。EU国ではもっとも悲観的な回答となった。また、3分の1が安全への懸念から移住を検討していると回答している。
ヨーロッパに住むユダヤ人16,300人を対象とした当調査では、フランス、ドイツ、ベルギー、ポーランドを中心として、ヨーロッパではユダヤ人への憎悪、差別が増加している。...
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12月10日付英国
『ガーディアン』は「英国政治で反ユダヤ主義がEU内最悪との調査結果」との見出しで以下のように報道している。
基本的権利に関するEUの調査によると、英国の5人に4人のユダヤ人が、反ユダヤ主義が英国の政治で大きな問題だと回答。EU国ではもっとも悲観的な回答となった。また、3分の1が安全への懸念から移住を検討していると回答している。
ヨーロッパに住むユダヤ人16,300人を対象とした当調査では、フランス、ドイツ、ベルギー、ポーランドを中心として、ヨーロッパではユダヤ人への憎悪、差別が増加している。ほぼ3分の1が安全に配慮し、ユダヤ関連行事や施設を避けていると回答。 フランスでは95%のユダヤ人が反ユダヤ主義を大なり小なり問題と捉えていると回答、同調査を開始した6年前の85%から増加した。10人に9人が、町で反ユダヤ感情を持った言葉や表現に遭遇したという。
ユダヤ人人口の96%を占める12か国で、平均41%が安全上の理由で他国への移住を検討した事があると回答。
一方で、英国では状況は少し違っており、政治面での懸念が顕著にみられる結果となった。英国ではユダヤ人の75%が反ユダヤ主義を認識(2012年の48%から上昇)、29%が移住を検討したことがあると回答。ユダヤ人の84%は、反ユダヤ主義を政治生活で認識している(他国では70%に留まる)。反ユダヤ主義を助長したとしてコービン党首の労働党が批判を浴びた英国では、ユダヤ人89%が、過去6年間で反ユダヤ主義が増加したと回答。
ポーランドでも10人中9人がネット上で標的になっており、ベルギーでは84%が国営メディアで反ユダヤ主義があったという。12か国全体で、89%がネット上やSNS上で憎悪対象となっているとしている。
同日付英国『BBC』は「ヨーロッパで反ユダヤ主義広がる、EU報告書」との見出しで以下のように報道している。
EUの欧州基本権機関が12か国のユダヤ人数百人を対象とした調査によると、反ユダヤ主義の広がりで、ハラスメントへの懸念が高まっているという。ここ1年で物理的・精神的被害を受けた事があり、28%がハラスメントを受けたと回答。件数はフランスで最高となっている。ドイツ、英国、ベルギー、スウェーデン、オランダでも発生している。調査実施日もイタリア警察は、20件のホロコーストの記念物盗難を捜査していた。報告書公表の前週にも、米国ピッツバーグのユダヤ教礼拝堂で11人が射殺された。ユダヤ人のハラスメント被害件数が多く、報道も追いつかない状態であるという。
また、ネット上の反ユダヤ主義があると、89%が回答。過去1年の間でユダヤ人だという理由でのハラスメントを受けたと28%が回答。(内2%は物理的な被害を受けた)47%は言葉での侮辱、40%は物理的攻撃。
34%が安全のためユダヤ関連の行事を避けた。38%が過去5年以内に他国への移住を検討したという。
欧州一のユダヤ人居住国として約50万人が住むフランスでは、ユダヤ人の95%が多少の反ユダヤ主義を感じており、パリのユダヤ系スーパーで人質を巻き込む自爆テロが多発。今年だけでも、ホロコーストの生存者がパリのアパートで殺害されたり、8歳の男児が十代の若者らに襲撃されるなど、憎悪犯罪は69%増加としている。フランスでは全国捜査網の整備や、学校での差別問題解決のための部会も設置。
また、ドイツではユダヤ関連施設への警護派遣は必須の状態である。スウェーデンでも、過去6年で憎悪が急増。
昨年、新ナチ派が北部の都市ウメオで、ユダヤコミュニティ協会の活動禁止を強制したり、中東出身者らが礼拝堂に火炎瓶を投げつける事件が起きている。トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都だと宣言した後だった。同国ではユダヤ人口は2万人ほどで公にユダヤ人とは分からないように目立たぬように暮らしている。
EUの対応として、加盟国に啓蒙活動を呼びかけている。
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