ドナルド・トランプ大統領は、昨年11月の中間選挙で民主党に敗れ去り、目下政権運営に苦慮している。しかし、2020年の大統領選での再選に向けて、メキシコ国境の壁建設、北朝鮮金正恩(キム・ジョンウン)委員長との再会談で非核化促進等々、実績作りに躍起になっている。民主党としては、ロバート・マラー特別検察官の2016年米大統領選ロシア介入疑惑等の捜査を踏まえて、同大統領の弾劾にまで持っていこうと考えており、2020年での同大統領再選阻止は問題ないとみている。しかし、ここへきて同党を混乱させ始めたのは、有力な大統領選候補者を絞れない状況下、民主党支持者ではあるものの政治経験のない富豪ハワード・シュルツ氏(世界的コーヒーチェーン店のスターバックス元会長兼社長兼最高経営責任者)が、俄かに大統領選候補に名乗りを上げたことである。民主党としては、同氏の登場で、反トランプ票が分かれてしまう等、皮肉にもトランプ氏にとって追い風となってしまうことを懸念している。
1月30日付
『NBCニュース』:「民主党にとって、次期大統領選に向けて目下の最大の敵はハワード・シュルツ氏」
スターバックスの元CEOのハワード・シュルツ氏にとって、無党派での次期大統領選立候補表明は多難の幕開けとなった。
同氏が立候補を表明してから僅か2日間であるが、元々支持していた民主党から最大の敵と位置付けられてしまったからである。
民主党から敵意を持たれた最大の理由は、同氏の立候補によって、民主党支持者及び無党派層の反トランプ票が分断されてしまう恐れがあることである。...
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1月30日付
『NBCニュース』:「民主党にとって、次期大統領選に向けて目下の最大の敵はハワード・シュルツ氏」
スターバックスの元CEOのハワード・シュルツ氏にとって、無党派での次期大統領選立候補表明は多難の幕開けとなった。
同氏が立候補を表明してから僅か2日間であるが、元々支持していた民主党から最大の敵と位置付けられてしまったからである。
民主党から敵意を持たれた最大の理由は、同氏の立候補によって、民主党支持者及び無党派層の反トランプ票が分断されてしまう恐れがあることである。
実際、ドナルド・トランプ大統領は、シュルツ氏の立候補表明は自身にとって追い風となるとみていると言われる。
民主党全国委員会(注後記)のショチトル・イノホサ報道官は、民主党はトランプ大統領打倒に全力を挙げており、それに賛同する全ての有権者には、2020年大統領選において民主党候補に投票することを強く望んでいる、とコメントした。
2016年大統領選時に、ヒラリー・クリントン元国務長官を支援する団体「レディ・フォー・ヒラリー」を立ち上げ、同氏の選挙運動にも参画したアダム・パークホメンコ氏は、シュルツ氏の出馬を阻止するためにネット上でキャンペーンを展開し始めた。
同氏はその理由として、シュルツ氏が民主党の大統領選候補と目されるエリザベス・ウォーレン氏とカマラ・ハリス氏の二人の女性候補に対して、“両氏が掲げる政策は愚か、かつ、米国に相応しくない”とし、あたかも“女性候補は米国政治にとって相応しくない”と取られかねない批判を繰り広げたことを挙げている。
ただ、シュルツ氏自身は、“終生民主党支持者”だとし、これまでに民主党候補に19万3千ドル(約2,100万円)献金してきており、また、トランプ氏の再選に手を貸すつもりは全くないとコメントしている。
同氏は1月29日付『USAトゥデイ』紙に寄稿して、自身が勝利できるとの確信がなくば大統領選に立候補するつもりはないとした上で、トランプ氏は米大統領として相応しいとは思えず、更に4年同職に留まることには反対すると述べている。
なお、シュルツ氏から名指しで批判されたウォーレン氏は、“最も愚かなことは、大富豪が米大統領職を金で買えると勘違いしていること”だと、ツイッターで強烈に非難した。
(注)民主党全国委員会:米民主党において全国の党組織を統率する委員会。1848年に設置され、党の政策綱領作成、広報活動、政治資金調達・配分、選挙戦略の調整などを行い、4年ごとに党の大統領候補を指名する民主党全国大会を主催する役割を果たす。ただし、通常時における政策の立案や決定に関与する立場ではなく、下部組織である地方委員会の活動に直接干渉することもあまり無い。通常の議会活動では、上下両院の院内総務が代表となる。
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