『ロイター通信』『BBC』『CNN』などが報じている。19日夜、フランス全土で反ユダヤ主義に抗議するデモなどが実施された。デモや集会は首都パリの他、マルセイユ、ボルドー、ナントなど他の約60都市でも行われたが、正式な参加者数の発表はないという。
パリのデモでは人々が「もう十分だ」とのスローガンを掲げ、共和国広場などを行進した。オランド氏やサルコジ氏などの歴代大統領に加え、各党の指導者ら政治家も参加した。マクロン大統領は、上下両院議長と共にパリのホロコースト記念館を訪問している。
デモの数時間前、東部アルザス地方のクアツェンハイムにあるユダヤ人墓地で、90基以上の墓が荒らされ、ナチス・ドイツを象徴する「かぎ十字」などが描かれているのが発見された。マクロン大統領は同墓地を訪れ、「誰がこれをやったにしても、フランス共和国に値しない行為であり、罰せられるだろう。我々は行動を起こす。法を適用して罰する。」と地元自治体の幹部らに対し宣言した。
イスラエルのネタニヤフ首相は、ビデオによる声明で「衝撃的な」攻撃を非難し、フランスなど欧州諸国の指導者に対し、反ユダヤ主義に対し厳しい態度で臨むよう要請した。同首相は反ユダヤ主義を、「我々だけでなく、全ての人を危険に陥れる疫病」と呼んだ。
フランスには欧州で最大のユダヤ人コミュニティーがあり、約55万人が暮らしているが、その数は第2次世界大戦後1.5倍に増加した。しかし、先週公表された統計によれば、同国内の反ユダヤ主義的な行為が減ることはなく、2018年に541件と、前年の311件から74%増加している。
フランスでは、この2週間に、ほぼ毎日のように新たな反ユダヤ主義的な事件が発生した。2006年に誘拐され、拷問の上殺害されたユダヤ人の若者イラン・ハリミ氏を追悼して植えられた木が切り倒され、パリのベーグル店では、黄色いスプレーで、ドイツ語でユダヤ人を表す言葉が落書きされた。また、ホロコーストの生還者で国務大臣や欧州議会議長などを務めた故シモーヌ・ヴェイユ氏の肖像画が汚損されている。16日には、政府への抗議活動「黄色いベスト運動」の参加者約30人が、ホロコースト生還者の息子で著名な作家・哲学者であるアラン・フィンケルクロート氏に対し、侮辱する言葉を浴びせた。
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