欧州連合(EU)は22日、ブリュッセル行われた首脳会議で、市場開放が進まない中国を競争相手と見なし、同国に対しては毅然とした対応を取るよう、戦略を見直すことで一致した。但し、具体的な対策の決定には至らなかった。
『ロイター通信』などが、EUの対中戦略の見直しを報じた。EUは数十億ドル規模となる米中貿易戦争では、いずれの側も支持しないとしているが、中国経済については、不当な補助金や国家の介入、市場開放のスピードが遅いことなどをめぐり、苛立ちを募らせている。中国は長年、ほぼ制限なくEU市場に参入を認められてきたが、中国市場は不公正な状況にあるとして、EUは4月9日のEU・中国首脳会議で問題を議論したい考えだ。
フランスのマクロン大統領は、EUで最も中国に批判的な首脳の1人であり、中国企業が港湾などのインフラを買い占めているのは、EUの「戦略的な過ち」だったと指摘した。同大統領は記者会見で、「欧州が中国に対し無警戒でいる時代は終わった。EUと中国との関係は、貿易が先にありきでなく、地政学的、戦略的であるべきだ。」と強調した。
ドイツのメルケル首相は、欧州委員会のユンケル委員長やオーストリアのクルツ首相と同様に、欧州は中国をパートナーとしてだけでなく、競争相手として見なすべきとの考えを示している。
EU首脳らは、21日に中国問題を議論する筈であったが、英国のEU離脱問題の議論が長引き、予定を翌22日に変更して長時間論議したが、具体策をまとめるには至らなかった。中国との経済的な関係を重視する加盟国も多く、結束の維持は困難なようだ。
欧州を歴訪中の中国の習近平国家主席は23日、ローマでイタリアのコンテ首相と会談している。両国は、中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」の推進に協力する覚書に署名した。今後、道路や港湾、情報通信などのインフラ整備について、協力関係を深めていく。米国やEUが機密情報の漏えいなどの安全保障上の懸念を強める中、イタリアは主要7カ国(G7)として初の同構想への参加国となる。
コンテ首相は、「一帯一路」への参加について、他のEU首脳は問題ないと考えているようだと述べており、イタリアの当局者は、公正な調達や環境などに関するEUのルールには従うとしている。メルケル独首相は、「差し当たって批判はしないが、強調して対応した方がさらに良いとの話は既にしてきた。」と不満を表明した。
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