米国際開発庁(USAID)は20日、ベトナム戦争時に枯れ葉剤を貯蔵していた施設跡で、汚染された土壌の浄化作業を開始した。浄化にかかる費用は1億8300万ドル(約205億円)に上り、作業の完了までに10年を要する大規模なものとなる。
『AFP通信』や
『BBC』などのメディアが報じた浄化作業が開始したのは、ベトナム南部のホーチミン市郊外にあるビエンホア空軍基地である。昨年まで行われた同国中部のダナン空港での作業以来の大規模なもので、米越両国政府が協力して取り組む事業だ。
米軍は1962~71年に、8000万リットルもの枯れ葉剤を当時の南ベトナムに散布した。「南ベトナム解放民族戦線」(通称ベトコン)の武装共産ゲリラを追い払おうとして、彼らが身を隠していたジャングルの樹木を消失させ、食料を奪うためだった。...
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『AFP通信』や
『BBC』などのメディアが報じた浄化作業が開始したのは、ベトナム南部のホーチミン市郊外にあるビエンホア空軍基地である。昨年まで行われた同国中部のダナン空港での作業以来の大規模なもので、米越両国政府が協力して取り組む事業だ。
米軍は1962~71年に、8000万リットルもの枯れ葉剤を当時の南ベトナムに散布した。「南ベトナム解放民族戦線」(通称ベトコン)の武装共産ゲリラを追い払おうとして、彼らが身を隠していたジャングルの樹木を消失させ、食料を奪うためだった。
ベトナム戦争時に米軍が使用した枯れ葉剤は「エージェント・オレンジ」と呼ばれ、猛毒のダイオキシンを含んでいたため、1960年代以降、その影響とみられる先天性欠損やガン、深刻な障害に苦しむ人々がみられるようになり、40年以上経過した現在でも多数存在する。ベトナム政府は、最大300万人の国民が枯れ葉剤に晒され、少なくとも15万人の子どもが先天性欠損を患うなど、100万人が深刻な健康被害を受けているとしている。
ビエンホア空軍基地は、枯れ葉剤の主要貯蔵施設の1つだったが、ベトナム戦争の終戦直前に米兵らによる撤収作業が行われた際、ダイオキシンが基地から地下水や川へと漏れ出し、ベトナム人が数世代にわたり患う深刻な精神的・身体的障害をもたらしたとされる。
USAIDは声明で、ビエンホア空軍基地は、50万立方メートル超のダイオキシンが土壌や堆積物を汚染し、「残存する最大規模のホットスポット」になっていると説明した。昨年11月に完了したダナン空港での浄化作業は6年にわたり、1億1000万ドル(約123億円)の費用がかかったが、ビエンホアのダイオキシン量はダナン空港の4倍に上り、作業の完了まで10年を要するとみられている。
米国は米兵には枯れ葉剤の被害を補償してきたが、ベトナム人に対してはしていない。ベトナムの被害者らは、米国から補償を得る活動を続けてきたが、米政府も枯れ葉剤製造会社も責任を認めず、米連邦最高裁は2009年に被害者らの訴訟を却下した。米当局は以降も枯れ葉剤と先天性欠損との直接の因果関係を決して認めなかったが、USAIDは20日、ベトナム7省で障害者の生活を改善するため、政府機関と協力するとの文書を発表した。
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