米政権は、タカ派のマイク・ポンペオ国務長官、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を中心に、ベネズエラ反米政権のニコラス・マドゥロ大統領打倒のために軍事行動も辞さない考えでいた。しかし、米国が推すフアン・グアイド国会議長(自称暫定大統領)が仕掛けたクーデターが失敗に終わったことから、“成功”や“成果”しか頭にないドナルド・トランプ大統領は突然、ベネズエラへの肩入れ過ぎに不満を漏らし始めた。この背景には、同大統領が、個人的には関係良好とするウラジーミル・プーチン大統領との電話によって、マドゥロ政権支援のロシア側の事情を忖度したことが考えられる。また、あくまでバラク・オバマ前大統領のレガシー潰しに思いを馳せるあまり、ベネズエラよりもイラン核合意を否定した上、対イラン政策に注力することが重要と考えたものとみられる。
5月8日付
『ワシントン・ポスト』紙:「トランプ大統領、ベネズエラへの肩入れ過ぎに不満」
ドナルド・トランプ大統領は5月8日、自身の部下らが推し進める、ベネズエラへの肩入れ過ぎに不満を漏らした。
同大統領は、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が推すフアン・グアイド国会議長による4月30日の蜂起が失敗に終わったことを受けて、反米主義者のニコラス・マドゥロ大統領追い落としが簡単に進められるとミスリードされたと表明した。...
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5月8日付
『ワシントン・ポスト』紙:「トランプ大統領、ベネズエラへの肩入れ過ぎに不満」
ドナルド・トランプ大統領は5月8日、自身の部下らが推し進める、ベネズエラへの肩入れ過ぎに不満を漏らした。
同大統領は、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が推すフアン・グアイド国会議長による4月30日の蜂起が失敗に終わったことを受けて、反米主義者のニコラス・マドゥロ大統領追い落としが簡単に進められるとミスリードされたと表明した。
米高官によれば、同大統領は就任以来、ベネズエラへの反米政権打倒は容易でないと考えていたと明かした上で、ボルトン補佐官らによるマドゥロ大統領の権力・統率力を過小評価していたことを非難したという。
また、同大統領は、マドゥロ大統領が、米国が後ろ盾となった“愚かな”クーデターは失敗に終わったし、自身は米国の差し金に乗ってベネズエラを去ることもしない、として米国を嘲笑したことも我慢がならなかったとみられる。
更に、トランプ大統領は5月3日、ウラジーミル・プーチン大統領と電話会談し、マドゥロ政権を後押しするロシアとしては、ベネズエラに深入りするつもりはなく、ただ同国の安定化を望むだけだとプーチン氏に言われて、ベネズエラ問題で米ロ代理戦争などというリスクを負うべきではないと考えたものとみられる。
ただ、同大統領のこの考えは、マイク・ポンペオ国務長官及びボルトン大統領補佐官がかねてから強く非難している、ロシアがマドゥロ政権に資金提供及び武器供給で後ろ盾となっているとのコメントと相対するものである。
なお、トランプ大統領としては、ベネズエラ問題よりも、1年前に離脱を表明したイラン核合意の無効化の方がずっと重要だと考えている。
何故なら、同大統領はこれまで何度も、バラク・オバマ前大統領が推進した同合意は愚かな決定だとこき下ろし、イランは目下米国にとっての最大の敵とばかりに、直近で空母打撃群の中東派遣及び対イラン追加制裁を立て続けに指示・承認しているからである。
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