ドナルド・トランプ大統領は5月初め、ウラジーミル・プーチン大統領と長時間の電話会談を行い、何とか米ロ関係修復を行いたい考えである。プーチン氏としても、クリミアやシリア問題に加えて、ベネズエラ内政でも米ロ間の対立が起こることは望んでおらない模様で、6月の主要20ヵ国首脳会談(G-20大阪サミット)の機会に、米ロ首脳会談を行って関係改善を図りたい意向である。しかし、米政府としては、国際犯罪に関わる事態について、かつて世界の警察機関を自負していたこともあってか、この程、ロシアにおける人権侵害を犯したとされる容疑者を制裁すると発表した。
5月17日付米
『ロイター通信』:「米政府、人権侵害の罪でチェチェン特殊部隊やロシア人に制裁」
米財務省は5月16日、人権侵害、超法規的殺人及び性的マイノリティ(LGBTI、注1後記)への拷問の罪で、ロシア連邦南西端のチェチェン共和国特殊部隊、及び少なくとも3人のロシア人を含む5人の容疑者に対して、新たに制裁を科すと発表した。
マグニツキー法(注2後記)に基づく制裁で、今回対象となったのは、チェチェン共和国の特殊部隊テレク・スペシャル・ラピッド・リスポンス・チーム(TSRRT、ロシア版SWAT特殊任務機動隊)及びTSRRTのアブザイード・ビスムラドフ司令官らで、2009年にロシア官僚による2億3千万ドル(約253億円)横領事件を告発したセルゲイ・マグニツキー監査官(37歳)が獄中死した事件に関わったとされている。...
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5月17日付米
『ロイター通信』:「米政府、人権侵害の罪でチェチェン特殊部隊やロシア人に制裁」
米財務省は5月16日、人権侵害、超法規的殺人及び性的マイノリティ(LGBTI、注1後記)への拷問の罪で、ロシア連邦南西端のチェチェン共和国特殊部隊、及び少なくとも3人のロシア人を含む5人の容疑者に対して、新たに制裁を科すと発表した。
マグニツキー法(注2後記)に基づく制裁で、今回対象となったのは、チェチェン共和国の特殊部隊テレク・スペシャル・ラピッド・リスポンス・チーム(TSRRT、ロシア版SWAT特殊任務機動隊)及びTSRRTのアブザイード・ビスムラドフ司令官らで、2009年にロシア官僚による2億3千万ドル(約253億円)横領事件を告発したセルゲイ・マグニツキー監査官(37歳)が獄中死した事件に関わったとされている。
同司令官は、これ以外にもLGBTIの人たちの不当拘束や拷問を指示したとされる。
また、同司令官の他、マグニツキー氏拘束・死亡事件に関わり、当該横領事件を隠ぺいしようとしたとしてロシア調査委員会のエレーナ・トリクリャ及びジェナディ・カルロフも制裁対象とされた。
その他、ロシア連邦北西端のカレリア共和国での超法規的殺人や拷問の罪でセルゲイ・コシエフ少佐が、また、チェチェン共和国北方大隊のルスラン・ジェレメイエフ中隊長が同様の罪で制裁対象とされている。
なお、ロシア調査委員会については、マグニツキー氏獄中死事件の他、2015年に起きた、ウラジーミル・プーチン大統領の対抗馬であったボリス・ネムツォフ氏(55歳)の暗殺事件の隠ぺいにも関わっている。
同日付ロシア『タス通信』:「米国、TSRRT及び5人のロシア人を新たに制裁対象に追加」
米財務省外国資産管理局は5月16日、マグニツキー法に基づいて、TSRRT及びTSRRTのビスムラドフ司令官を含むロシア人5人に対して、新たな制裁を科すこととしたと発表した。
同法は、2009年11月にモスクワで拘束中に獄中死したセルゲイ・マグニツキー事件の関係者を裁くためとして、米国が立法化したロシア対象の制裁法である。
それによると、米政府が人権侵害と認定した容疑者について、同政府によって資産凍結やビザ発給停止が行われる。
(注1)LGBTI:レズビアン、ゲイ、両性愛者、性転換者、間性の人たちを指し、性のあり方が多数派と異なる人の総称。
(注2)マグニツキー法:2012年12月に制定された法律で、米国政府が世界のあらゆる場所で人権を侵害していると認める者を制裁し、米国内にある可能性のある資産を凍結し、侵入を阻止することを認めるもの。2009年に、ロシアで発生した巨額横領事件告発者のセルゲイ・マグニツキー弁護士の獄中死を受けて、2012年、事件関係者のビザ発給禁止や資産凍結を行う法律として改訂された。
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