大気汚染と言えば、中国やインド等新興国の大都市興業地帯が悪名高く、冬の風物詩にもなっている。しかし、欧州においても大気汚染は深刻で、人口が集中している大都市はもとより、避寒客が殺到する春から夏にかけての地中海沿岸地域も危険地帯として挙げられている。
5月19日付
『AFP通信』:「欧州における大気汚染危険地帯」
欧州の大都市では、交通渋滞、石炭の生産・燃焼、及び山に囲まれて換気が妨げられることから、大気汚染に悩まされている。
世界保健機関(WHO)は健康被害を防ぐため、微小粒子状物質PM2.5(注後記)の大気中濃度は1立方メーター当り年平均10マイクログラム以下を推奨しているが、欧州における平均値は25マイクログラムを超えている。...
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5月19日付
『AFP通信』:「欧州における大気汚染危険地帯」
欧州の大都市では、交通渋滞、石炭の生産・燃焼、及び山に囲まれて換気が妨げられることから、大気汚染に悩まされている。
世界保健機関(WHO)は健康被害を防ぐため、微小粒子状物質PM2.5(注後記)の大気中濃度は1立方メーター当り年平均10マイクログラム以下を推奨しているが、欧州における平均値は25マイクログラムを超えている。
大気汚染を原因として、欧州では2016年に39万1千人が死亡しており、その中でもイタリアは6万人とすこぶる多い。
イタリアの大都市、トリノ(北西端)及びミラノ(北端)では特に自動車の排気ガスによる大気汚染が深刻である。
一方、ポーランド南部のクラクフでは、石炭火力発電所や薪ストーブの煤煙によって、2016年ではPM2.5濃度が平均38マイクログラムと、欧州最大値を記録している。
ポーランド南西部のカトビツェが欧州2位となっており、欧州環境機関(EEA)の2016年データによると、両都市では二酸化窒素(種々の物質の燃焼過程等で発生する不快臭を有する気体)やオゾン(O3、腐食性の高い有毒な気体)の濃度も許容値を上回っている。
ただ、ポーランド両市の汚染レベルは、世界最悪と言われるインド北部や中国の大都市圏に比べれば、3分の1程度である。
しかし、環境保護団体グリーンピースが取得した2018年データによると、欧州のPM2.5濃度は更に悪化して、これまでの最高値を記録しているという。
また、同団体の大気汚染度ランキングでは、ワルシャワ(ポーランド)、ブカレスト(ルーマニア)、ニコシア(キプロス)、プラハ(チェコ)、ブラティスラバ(スロバキア)、ブダペスト(ハンガリー)、パリ、ウィーンが深刻となっており、これはEEAも確認している。
専門家の話では、中欧の都市の大気汚染は、依然石炭火力発電所が稼働していることが原因となっているとする。
なお、風によって汚染大気が雲散しやすい南欧、特に地中海沿岸地域においても、数十万人の避寒客が訪れることから、春から夏にかけての大気汚染、特に太陽光によって窒素化合物から生成されるオゾンの影響が深刻となっている。
(注)PM2.5:粒径2.5マイクロメーター(2.5ミリの千分の1)以下の粒子状物質。2.5マイクロメーターは髪の毛の太さの1/30程度、花粉より小さい大きさ。単一の化学物質ではなく、炭素、硝酸塩、硫酸塩、金属を主な成分とする様々な物質の混合物。発生源としては、ボイラー等の煤煙を発生する施設、自動車、船舶等の移動発生源、塗装や印刷等の揮発性有機化合物を発生させるものなど、多種多様な人為起源があり、自然起源としては、火山や黄砂の他に、植物から蒸発する揮発性有機化合物もある。
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